51.風邪と夢
頭が痛い。そんで寒い。
しかもここはどこ?綿貫さんどこ行っちゃったの?
喉が絞まるような咳が止まらない。
「椿、大丈夫か?」
「私、夢見てた?」
「ん、起きたな。ちょっと背中さするぞ」
「佑樹さん?あ、聞いて。私さっき夢見てね」
「うんうん、とりあえず薬飲もうか」
そうそう、薬薬。医者が飲めって言ってた言ってた。
肺炎手前なんて脅し言葉使ってまで、言ってた言ってた。私相手に脅すとか失礼じゃない?真心斗だったら回し蹴りだよ?
イライラするぐらい咳が止まらない!
「1回座れ。ほら」
「ッング、大丈夫大丈夫。ふぅ……ゲボッ。あのね……ッンヒュ」
「美英ー、吸入そっちある?」
「あるある。椿ちゃんほら、綿貫さん?に心配かけちゃうよ」
「み、美英それは「綿貫さん!?」
驚いたらむせこんじゃうよ。
「ほらー、美英。椿にそれは禁句だって言ったのに」
「椿ちゃんごめん」
「椿、1回夢のことは忘れよ、な?」
「ゴホッゴボッ、いい夢、だったな、ゲホッ」
「うんうん、薬飲んで夢でも見とけ」
「薬……?やだいらない、えい!」
「こら、投げません」
1回捨てた薬を、無理やり飲まされ、ムカつくけど佑樹さんに抱きつく形で座る。
そうそう、喘息の時は横になれなくて、昔はいつもこうだったな。なんかムカつくな。
そういえばいい夢だったな……私、綿貫さんと同棲開始したんだっけ?
でも家はどこだろうか?最寄駅どこ?次会った時に帰り方、今度聞かなきゃな。あ、その前に指輪か。
「あっつ!熱測ろう。寝ろって言ったけど、お前熱すぎ」
「んー」
「聞いてんのか?」
「んー」
「あー、ダメだこりゃ」
佑樹さんの冷たい手が気持ちいい。このまま寝れそう。
もう寝ちゃおっか。せっかく仕事休みなんだし。綿貫さんと会う時に、クマなんて見せられないもん。このまま佑樹さんにくっつき虫になっちゃえ!
「美英ー、ちょっともう1回きてー」
「何ー?」
「熱測るの手伝って」
「はいはーい。椿ちゃん、ちょっと失礼」
「んー……やだ!」
「大丈夫大丈夫、熱測るだけだよ」
やばい、咳が止まらないの。
「わかったわかった。じゃあこのまま熱測ろ、な?」
「ん……やだ、ヒグッ。綿貫さんに会いたい!」
「あー、それは熱は測ってから、な?」
涙でびちゃびちゃの顔を、佑樹さんの洋服でこすり落とす。何回も押し返しても渡される体温計を、渋々挟むんだけど美英さんに直されちゃうし、なんかうまくいかないなー。もうやだ。
ピピピッ
「39.0……今週はもう休みだな」
「休み?じゃぁデートしたい。ダメなら本屋さん行く、ね」
「うん、寝ろ」
「今日は良い夢だなぁ。ねえねえ、綿貫さんの夢の続きは?」
休みなら綿貫さんと出かけたいな。でもこんな高頻度で会えたりしないか。普通は次いつ会えるの?夏休み?私夏休みあるのかな。
赤ちゃんのように座ったまま抱っこされ、背中をさすられたのもあって、もう眠気が限界に近い。
ダメだ、眠い。でも寝ちゃダメ、寝ちゃダメ……。
「その眠くなったら足つねる癖直そうな」
「んー」
だって寝ちゃうんだもん。
でも今寝たら、また夢に綿貫さん出てきてくれたりしないかなー。




