50.幻覚
目の前の綿貫さんはあたふたしてるけど、そんな幻覚が見えるなんて私の欲望ダダ漏れの夢だな。
夢でも触ったら捕まるかな?さすがにやめておこうか。
「病院行きましょう」
「行かない行かない」
「何言ってるんですか!」
「こう見えても?病院帰りなんですよ」
「……タクシー呼びますか?」
「公園で休んだら駅まで行くので、はい、いつか、ええ、大丈夫です」
目の前にしゃがんでいるのは、綿貫さんですか?目があっちゃったりしてますか?ああ、可愛い。このまま頭わしゃわしゃしたらダメ?流石にセクハラ?
というか、側から見たらしゃがみ込んでる痛いカップルみたいじゃない?
「佐藤さん、それ大丈夫じゃないです」
「そうそう、ちょっと休憩したらね、帰りますから」
あー、体が重い。でもさすがにそろそろ立たないとこの幻覚が終わらない。このままだと、私ここに住み始めちゃいそう。もうそれでもいっか?
ブーブーブーブー
うるさいなあ。切っちゃえ!
ブーブーブーブー
「電話、会社からですか?」
「んー、知らないな」
「知らないって見てないじゃないですか!」
「何でわかるんですか?綿貫さんってすごいですね」
「佐藤さん、携帯を見てください」
「んー、叔父さんだ。無視無視」
「すいません、借りますね」
借りますね?貸します貸します。なんでも貸しますし、なんならあげます。
でも、なんか焦ってない?誰?綿貫さんにそんな顔させるのは。
私が制裁してあげましょう!任せてください!私なら誰だってなぎ倒せるし、回し蹴りできます。
「あ、はいちょっと待ってください。あ、佐藤さんおでこ失礼しますね。わ、あっつ!何度だったんですか!?」
「病院では38.5とか?38.8とか?でもインフルもコロナも陰性でした!」
「もう横になっててください。あ、すみませんダメです。高倉さん、住所教えてください」
「え?行けます行けます。ん?高倉さん?」
高倉さんって佑樹さんだよね?あリアルな幻覚に移ってきたのかも。えー、もっと甘いやつ見てたいよ。
んー、でも幻覚でも心配かけちゃダメだよね!って勢いよく立ち上がったら、世界がひっくり返った。好きな人の力は偉大だな。
「佐藤さん!?何やってるんですか!」
「え、ふ、触れてます?え、触れてます?私怒られるやつですか?」
「なんで急に動くんですか!でももう緊急事態なので」
幻覚なのに感覚ってあるんだな。抱きしめられた感覚まであるって、やっぱり私熱あるかも。でもなあ、これが現実だったりしないかな。まあ夢オチだろうけど。漫画で見た見た、履修済み!
「すみません僕のリュックで。でももうマジで寝ててください」
気づけば私は下町の小さな公園のベンチで、好きな人のリュックを枕に横になっている。視線の先には、何やら真剣な顔つきの綺麗な男の人。しかも時よりこちらを見てくる。え、ご褒美?
2、いや3回も目があったよ?目があったら付き合えるんだっけ?婚約はまだだよね!知ってる知ってる!
「もうすぐタクシー来ますからね」
タクシー?いらないかも。公園のベンチって意外と寝れるっぽいし。もうここに住んじゃおう
「起きれます?」
「へ?あ、いや、私ここに住むことにしたので」
「……すみません、手、引っ張りますね」
手、手、手を繋いじゃってる!?これはもう交際ですか!?何この夢!素晴らしい!もうこのまま寝てたい。
お願いです。仕事の連絡はなしでお願いします。私はこのままこの夢を見ることにしました。
「……までお願いします。どれくらいかかりますか?」
「10分ちょっとかな。お嬢ちゃん具合悪いのかい?」
「え、全然「具合悪いです、お願いします」
私はいつの間にタクシーに?しかも綿貫さんと?同棲開始したんだっけかな。新居に向かってるの?
「高倉さん、お待たせしました。佐藤さん、叔母さん来てますよ」
「わざわざありがとね。ほら、椿ちゃん、立って立って」
「立つの?いや、私帰るね。ん?美英さん?」
「あ、僕おぶってきます」
「本当?ありがとう」
え、私彼におぶられてるの?これは真心斗っていう夢オチでしょ。知ってる知ってる。




