49.やりますやります
リュックは奪われ、手ぶらで駐車場まで来た私。
全然元気なのに助手席はリクライニングされていて、なぜか常備されてるタオルケットを膝にかけられた。これはもう病人扱いじゃん。
「ねえ、ちょっとやりすぎじゃない?」
「今回ばかりは絶対にお兄ちゃんが正しいから諦めなさい。40分ぐらいかかるし寝てていいから」
ここで寝たら完全に病人になっちゃうし、というか7時間は寝たし?
ふんっとそっぽを向き、窓の外を意味もなく見つめてみる。
「どうせ吸入もまだもらってなかったんだろ?」
「あ、な、何で……いや、今日の午後もらいにいく予定だったよ?」
「普段は頭良くて周りよく見えてるのに、なんで自分のことは見えてないのかね」
「見えてる見えてる」
「見えてない見えてない」
そんなことないって言おうとした時にはゆっくりと車が発進し、BGMにラジオなんか流されて。
こういう時だけ静かになるなんてずるい!眠くなっちゃうじゃん。右手で太ももをつねってみたりしても、大輝さんが左手で邪魔してくるし、運転中のくせに。あーあー、眠い……眠くないもんね……。
「着いたぞ」
「ん……もぉ、大輝さんのせいで」
「せいで?」
「……寝ちゃったじゃん」
「うん、おはよう。現金あるの?」
「あるある、しかもここクレジット使えるし。ふぁーあ」
「了解。帰りは悪いがタクシー拾って、ちゃんと帰れよ?」
「はいはいー」
「何かあったら絶対連絡しろよ?絶対だぞ?」
「はいはい」
寝て起きたら直った気がしてきた!
まだ病院に足入れてないし、帰っちゃう?え、バレなくない?さすが私、頭いいなあ。
ピコンッ
『ちゃんと行けよ?by佑樹』
はいはい、行きます行きます。なんでこんなに筒抜けなわけ?誰か私を監視してる?まさかスパイを疑われてるとか?今日はGPSピアスつけてないんだけどな。
「あちゃー、佐藤さんお久しぶりです。そんで問題ありですよ」
「留学終わりなので優しくしてください」
「肺炎手前と言っても過言じゃないですよ?優しくできないです。しかもこれ何回目ですか」
「過言ですよ。優しくしてください」
ここの先生私に厳しいんだよな。発達の検査とかカウンセリングの時は優しいのに。入院だって2回しかしたことないじゃん。大袈裟な。
「そこでしっかり吸って帰ってくださいね。処方は少し長めに出しておくから」
「先生ありがとー!」
「悪化したら必ず来てくださいよ?」
「はいはい、約束します約束します」
誰か優しくしてくれないかな。頭が重いから、先生の言葉がガンガン響くんですけど。
しかも病院到着から1時間半。お会計までも長いし疲れちゃっ……てない!とはいえ、こんなに待たされると眠くなるな。
「やっぱり職場の体温計も隠しておけばよかったなぁ」
やっとの思いでお会計を終え、病院からいざ出発。
院内処方なのは助かるんだけど、ここタクシー乗り場ないんだよな。
「なんで総合病院なのにタクシーいないの?」
仕方ない、駅まで行ってタクシー拾わなきゃ。あー、なんでこんなに遠いの!もうやだー!
「ん……頭痛いかもしれないこともないかもしれない」
壁に手をついて大きく息を吐けば、ちょっとずつ崩れていく体。しかし奇跡的に公園発見。1回あそこのベンチで休憩しよう、そうしよう!我ながらいいアイデア!
あー、でも歩道で座ったら、立つのだるいかもしれないかもなっちゃったよ。
「さ、佐藤さん!?」
「……ん?わぁ、夢?」
「夢じゃないですよ!どうしたんですか、こんなところで。立てます!?」
「あ、大丈夫です……休憩中です」
「休憩?絶対に違いますよね」
私、幻覚見るタイプだったんだ。こんなに慌てる綿貫さん、なんか可愛いなぁ。連れて帰りたいかも。




