45.さようならデート服
応援要請に、渋々次のバス停で降りタクシーを拾う。
「虎ノ門駅までお願いします。駅付近ならどこでも大丈夫です」
やっぱり1日休みは無理か。まあ呼び出しくらうのは想定済み。むしろ完璧な別れまで待ってくれたことに感謝かな。
「大樹さんお待たせ!車乗せてー」
「はいはい、真心斗が待ってるぞ。お、そんで椿、今日可愛いな」
「本当に!?これで大丈夫そ?」
「いや、仕事には向いてなさそうだけど」
「デートなら?」
「…………いいと思うよ」
本当か?でもまあ悪くはないよね。お気に入りのコーディネートだし。この服着るたびに思い出しちゃうよ。キャー!恥ずかしい!
え、待って?
「ねえ、この後着替える服あると思う?」
「ないらしいよ。俺もこのまま行くし」
なんか今日の大輝さんはオシャレなセーターにデニムのパンツ。しかもダボっとしたやつ。
「その萌え袖って、男の人がやるの流行ってるの?」
「おいおい、一体どこでそんな言葉を仕入れてきたんだい?」
「漫画」
「……まあいいだろう。そして今はダボっとした服が流行ってるから、結果萌え袖になっただけだな」
そんな流行り知らないよ。次は私もそういう服買おうかな。リンクコーデになっちゃったりして。
「え、そのセーターで行くの?」
「仕方ないだろ、ないもんはないんだから」
「……え、ねぇ、これ絶対返り血ゼロは無理だよね」
「無理だと思う。諦めろ」
「どこでもいいから寄り道しない?お揃いの服でもいいから!」
「や、やめなさい!お兄ちゃんそんな誘惑する子に育てた覚えはありません」
あぁ、さようなら私のデート服。
2時間かけてやってきたのは、東京の端っこ西多摩郡。
殺し屋って歌舞伎町のビルとか、高層マンションの一室のイメージはありませんか?それはほんのごく一部です。
理由は簡単。銃撃戦をしたら警察が来ちゃうから。ここはばっちり大丈夫そう。問題は視界が開けていて、あんまり建物に近づけないことかな。
「真心斗ー、来たよー!」
「大輝さん、お休みのところすみません。お前は遅い!」
「大輝さんの運転できたんだけど。ねえ、お兄ちゃん、遅いってさ」
「すみませんでした」
どうやら蓋を開けてみたところ、2組織ではなく3組織が絡み合っていたらしい。しかも銃が大量にあることが判明。
そこで大輝さんと私で応援要請が入ったとのこと。
「椿ちゃん、お休みの日にごめんね」
「向日葵ちゃん!いいよいいよ。恋のアドバイスもらったお礼!ちなみに保全部ってなに保護するの?」
「研究所から盗まれたウイルス」
「OK!」
向日葵ちゃんは保全部で、色んなものを保護・維持するために働いている。盗まれたのは難病治療用ウイルスらしく、それを保全するらしい。
あと1時間半で突撃。
向日葵ちゃんと別れ、渡されたファイルを頭に叩き込む。
「あれ、私たちだけじゃないの?」
「措置部の応援組8人も突入するらしいよ」
「いやいやいや」
「え、何?あ、保全部も2人行くかもって」
「「邪魔」」
私たちに応援要請した時点でそれは諦めなよ。
「真心斗、俺ら3人で行くって伝えてこい」
「……あい」
こういう場は少数精鋭のが良いでしょう。
「全員抹殺、保護対象0」
「よしきた!大輝さん、私にも手袋ちょうだい」
白いブラウスにピスタチオパンツ、黒い皮の手袋の謎ガール誕生。
「え、2人とも1丁で行くの?」
「当たり前じゃん」
「お前はまだしも大輝さんまで?」
「「奪えばいいんだから」」
「……俺は2丁で」
あんまり弾を使うと、経理に申告する報告書が大変になるでしょうが。
そしてこのデート服はやっぱりさようならだな。
でもまあ仕方ない。私殺し屋だしね!




