44.応援要請
映画と本の話については別の椿です。スイッチが入れば、なぜか盛り上がれちゃう。
「監督がいいですよね。実写するなら全部あの監督にやってもらいたいぐらい」
「わかります!綿貫さんは洋画観ますか?」
「ホラーというか、ゾンビ系?あとはアクション系ですね」
ブラックユーモアが好きなのは知っていたけど、アクションも好きなのか。綿貫さんは幅広く網羅してる感じなのね、ふむふむ。
「そうだ、☆☆って映画知ってます?」
「聞いたことはありますが見たことないです」
「佐藤さんは血とか大丈夫ですか?」
「あ、それは全然」
見慣れてるし今更特に感情はない。むしろ綿貫さん大丈夫なんだ。
「あの映画、殺し屋が気持ちよくバンバン人を殺すんですよ」
「え、あ、それはどういう!?」
待って待って、お願い待って!確かに殺し屋って普通ならフィクションの世界。え、何かバレて遠回しに言われてるわけじゃないよね?映画の話をしてるだけだよね、ね?
「僕はじわじわ殺すやつよりも、銃でバンバン殺すやつが好きなんですよ」
「あ、わかりますわかります!それはよくわかります!」
「悪いやつがボコボコやられていくのは、スカッとしますのね。勧善懲悪最高です!」
「綿貫さんはどんでん返しとか、綺麗に着地する話が好きなんですね」
いやー、ヒヤッとした。でも私たちの好きな作品の系統は同じなのは、めっちゃ嬉しい。やっぱり悪いやつはボコボコにされた方が気持ちいいよね。私も拷問よりは、銃とナイフでガツガツ行く方が好きだし!
「あ、そろそろお花屋さん行きます?多分できてますよね」
「あ、そ、そうですね!忘れてました……」
お花屋さんで番号札を渡し、黄色とオレンジの花束の入った紙袋を受け取る。
3000円でこんな素敵なの作ってもらえるなら、今度佑樹さんの家行く時はここで買って行こうかな。
「受け取れました?せっかくなのでバス停まで送っていきますね」
「はい!?え、い、いいんですか?」
「当たり前じゃないですか」
「あ、でも、あと10分で来ますし、全然!」
「佐藤さんって、時々自分が女の子だっていうこと忘れがちですよね。ふふっ」
真心斗や大輝さんと言っていることは変わりないのに、なんでこんなにも色々と違うのだろう。王子様に女の子なんて言われたら、私はもうお姫様じゃん!
「あのー……」
「ん?どうしました?」
「これ、お誕生日おめでとうございます」
「え……僕にだったんですか?」
「め、迷惑でしたか?す、すみません、あの、いや、あれなら、その」
「いえ、初めて花をもらいました。すごく嬉しいです。ありがとうございます」
綿貫の笑顔が眩しい。お花畑が似合うに違いない。
「あの、佐藤さん」
「はい?」
「バスが来るまで一緒に待っていてもいいですか?」
「……はい!?」
私の頭はショートした。
誰か、私の心に応援をよこしてください。
そこから先は、綿貫さんの言葉が全然頭に入って来なかった。もし私の記憶が確かなら、オレンジが似合うと言われたと思う。まあこれは都合のいい解釈かも。
「ああ」とか「まあ」とか「ええ」以外の言葉を発したのは、バスが来る1分前。
「僕はこの後、花瓶買って帰りますね」
「す、す、すみません!そこまで頭が回りませんでした!」
そうだよね、普通男の人の一人暮らしに花瓶なんてあるわけないよね。
え、じゃあお花屋さんで花瓶も買えばよかったじゃん。うわー、やらかした。
「あ、バス来ましたね」
「え、あ、はい、あ、はい……」
「また連絡しますね。今日はありがとうございました」
「こ、こ、こちらこそ!ありがとうございました!ほんとに、あの、ありがとうございました!」
「ふふっ、ではまた」
無事乗り切れたのか?
いやー、でも楽しかったなあ。……え?
ふと窓の外を見れば、胸元で小さく手を振っている彼の姿が目に入る。
え、え、えー!?
彼が見えなくなるギリギリになんとか振り返したけど、見えたかな?
ピコンッ
『応援要請/17時半までに駐車場集合』




