43.緊急クエスト発生
はー、お腹いっぱい。美味しかった!
「ごちそうさまでした!……って、す、すみません!」
「だからなんで謝るんですか」
「わ、私……バクバク食べちゃって」
「美味しそうに食べるなって思ってました」
食べれないかもとか言いながら、全然普通に食べちゃった。というか、食べ終わるまで綿貫さんのこと忘れてたよ。恋する乙女失格だ!
「じゃあ映画観に行きましょうか」
「あ、はい!」
次こそ失敗しないように気をつけなきゃ。
「飲み物何にしますか?」
「オレンジジュースにしようかな。あ、いやします!」
「僕はコーラで。あ、ポップコーン買います?」
「え、あ、いやー?」
「食べたいなら買いましょうよ」
「えっと、じゃあチュ、チュロスを……あの、はい」
「チョコとシナモンどっちにします?」
「あ、シナモンで」
「じゃあシナモン2つください」
やばい、なんで綿貫さんはなんでもサラッとこなしてくれるの?生粋の王子様なの?せめてお金は払わせてください。
「なんで佐藤さんお金払っちゃうんですか。これ僕の分です」
「……へ?あ、へ!?」
手、手渡し!?今私の手と綿貫さんの手が触れましたか?いや、確実に触れました。だって左手で私の右手を支えてましたもん!もう映画どころじゃないよ。
「大人2名様ですね」
「あ、誕生日割引できますか?」
「では身分証確認いたしますね。はい、確認できました。お会計は……」
ん?誕生日割引?あ、誕生月は割引になるんだ。……え、誕生日!?
「わ、わ、わ綿貫さん!誕生日いつなんですか?」
「えーっと……実は今日なんです」
「え、きょ、今日!?てっきり3月かと……」
「名前に桜が入ってるからですよね。実は秋田では、5月頭まで咲いてること多いんですよ。だから5月生まれなのに桜なんです」
緊急クエスト発生!
友達の誕生日ってどうしたらいいの?いや、友達と言うにはおこがましいかもしれないけど、少なくとも当日を過ごす間柄なわけで……え、私たちそんな間柄なの!?
「佐藤さん奥座ってください」
「あ、ありがとうございます。あのー」
「なんですか?」
「いや、えっと、なんでもないです」
誕生日はプレゼントだよね?男の人って何もらったら嬉しいの?
佑樹さんにはいつもちょっといいボールペンか万年筆。他はみんなハンカチか靴下。
え、でも異性の友達から残るものなんてあげていいの?消え物の方がいいよね。
脳内パニックのまま映画スタート。
しかし映画は最高だった。原作に忠実な実写で、名台詞は全てカバー。俳優さんもイメージ通りだし、ボロボロ号泣。わかってても、どんでん返しにはスカッとするし。
「最高でしたね」
「ん、ん、はい……」
綿貫さんの前なのに、涙止まらない。可愛いハンカチを買っておいたのが、せめてもの救いだ。
「どうしましょうか。お茶する時間あります?」
「あります!あります!あ……もしよかったらその前に行きたいお店があるんですけど」
「もちろんいいですよ」
なんかめっちゃデートじゃん。普通のデートみたいじゃん。
「お花を買うんですか」
「はい、すみません。花束って時間かかるので、その……お茶の前にと思いまして」
そう、私が行きたかったのはお花屋さん。佑樹さんと住んでいる時も、イギリスに住んでいる時もお花を飾っていた。今の家でも極力飾っている。
「もちろんですよ。佐藤さん、お花似合いますもんね」
私にお花、似合いますか!?それは褒め言葉ですよね?でも私よりも綿貫さんの方が圧倒的に似合います。はい、花畑の中央にいるのは綿貫さんではないでしょうか?
「では1時間後以降に取りに来ます」
「お待ちしております」
「じゃあカフェに行きましょうか」
「あ、はい、あの、お願い、します……」
綿貫さんのことを忘れてれば普通なのに、なんで思い出すと口が回らなくなっちゃうんだろう。カッコ悪いところ見せたくないよー!




