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26.模擬戦

 西日の眩しい多目的室。机と椅子を全て隅っこに寄せ、戦闘準備開始。

 宗さんはこのあと会議らしく残念ながら不参加。よってここには、ニヤニヤしている佑樹さんと、仁王立ちの大輝さん、そしてなんか変な真心斗と私の4人。


「これ椿のゴムナイフ」

「ありがとう」


 ピコンッ。


「ま、待って……待って!?綿貫さんから連絡来たんだけど!」

「知らんがな。お前相手頼んどいてそれはないだろ」

「うるさいな。はいはい、じゃあやりましょう」


 1、2、よいしょ!

 3、えい!

 4、5、ガッ、6……11、ピッ。

 

 イギリスでは主に潜入して中から組織を壊すのがメインだったから、体を張った戦いなんて久しぶり。

 ……でも全然大丈夫そうだね!


「お前手加減しろよ」

「久しぶりだからどうかなって。手加減したら意味ないじゃん?そもそも私のためだし」

「回し蹴りは反則だろ」

「いやいや、そもそも私になんて言ったか覚えてる?そして答えは、やっぱり私の方が強いじゃんです!」

 

「まさか15秒でかたがつくとはな」

「でもまあ、ナイフ蹴飛ばされて5秒持った真心斗は頑張った方だろ」


 佑樹さんと大輝さんは、腕を組んでふむふむしている。確かにナイフ飛ばして4手もかかると思うわなかった。最後は首かっ切ってやったけど。


「妹よ。次は俺と「さ、なんて連絡来てたかな」


 ゴムナイフを放り投げ、大事な携帯をスワイプ!


『映画のスケジュールが出ました13時40分の回はどうですか?』


 素敵すぎる!ジェントルマンってこういう人のことを言うんじゃない?


『ぜひそれでお願いします。ありがとうございます』


 よし!さ、次は大輝さんと……ん?


「なんでみんな固まってるの?」

「お前、今どんな顔をしてたかわかってる?」

「ん?楽しみって顔かな」

「佑樹さんと大輝さんの顔見てみろよ。2人とも泣きそうじゃねえか」


 うん、なんで?帰国してから佑樹さんの様子が変なんだけど、私生活で何があったのかな?新婚さんなのに。あとで話を聞いてあげよう。

 大輝さんはシスコンだから、理由はだいたい私。でも心当たりはないな。


「椿ちゃんよ。お兄ちゃん本気でいってもいいかな?」

「え、うん。なんで?」

「お前の顔を乙女にさせるやつへの……制裁?」

「綿貫さんは悪いことしてないよ!そんなこと言うだなんて、大輝さんには私も本気で行くもんね」

「俺本気じゃなかったのかよ……」


 落ち込む真心斗を無視して、モデルガンを持った大輝さんに向かって腕を振る。そしてびっくり、本当にお兄ちゃんが本気でやってきた。


 1、2、3、ガッ!

 4、5、えい!

 6、7、8、9、グッ、ガコン……16.17、ガンッ。

 

「妹よ、完敗だ」


 私が蹴り飛ばしたモデルガンは、たまたま佑樹さんがキャッチ。真心斗が落としたままのゴムナイフで応戦してきたから、ついうっかり足を掛けちゃった。

 ついでに綿貫さんを悪く言った罰として、ナイフので頭を叩いてあげた。


「佑樹さんもやる?」

「いや、やめとく……もうやられてる」


 よくわからないが、明日はなんとかなりそうだ!ペアの大輝さんもなんだかんだ、悪くなかったし。

 ただなんかちょっと苦しいのは、恋のせい?私の心はすっかり乙女となったようだ。


 だからどうということはない。乙女だろうがなんだろうが、神様は仕事を終わらせてはくれない。これを見越して、8時30出勤でいいところを8時に出勤したのに、現在すでに18時である。


 ナイフを振っても、銃を何発撃とうと当てようと、書類を終わらせないと帰れない。

 あーあ、20時半には帰りたいな……多分無理だけど。


 しかし今の私は今までとは違う。好きな人がいて、しかもその彼からのメッセージがある。ため息が漏れるたびに、トーク履歴を何度も見て元気を出した!

が、結局リュックを背負ったのは21時。


「さっそく社畜じゃん」


 まあいいや、無事1日目を乗り切ったわけだし。

 

 って、ん?……私会議室で即返事しすぎてた!?引かれた?暇人と思われたかも……え、キモいかな?

 そういえば返事もきてないし……あ、やばい、泣きそう。

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