21.食堂
あらかた午前中の仕事は終了。
「ん-、疲れた!」
しっかりストレッチをして浮腫み防止。
葬暗局という音だけ聞くと、バンバン悪を成敗するかっこいい職業のように聞こえるが、実際は7割が事務作業。特に制裁をするためには、入念に準備をしなければいけない。そう、普通の会社員と何も変わらない……と思ってる。
「じゃ、俺外回りだから」
「宗さん行っちゃうんですか?」
「椿、真心斗と仲良くするんだぞ」
「……はーい」
「真心斗もだ」
「……はーい」
えー……真心斗と2人っきりか。仕方ない。
「食堂行こ」
「何、お前の奢り?」
「ううん、真心斗の奢り」
「は、なんでだよ」
「復帰祝い?」
「……今日だけだからな」
「いえーい!」
ここは文部科学省や外務省の人もいる普通の食堂。よって均衡委員会の職務内容について話してはいけない。そう、つまり自由時間である。
「親子丼いえーい!ありがとうございまーす!」
「……はーい」
奢ってもらったご飯は特にうまい!それに、食堂ご飯には食堂ごはんのおいしさがある。
「あ、チャーハン1口ちょうだい」
「やだよ。こうなるなら半チャーハンにするんじゃなかった」
「1口だけだから」
「はいはい、わかったよ」
午前中仕事頑張ってよかった。ご飯がうまい!
「なあ」
「ん?親子丼いる?」
「ちげえよ。その……例の本屋まだ通ってんの?」
「通ってるなんてレベルじゃない、もう聞いてよ!今度デートなの、ヤバくない?」
まんまるな目。開いたままの口。滑り落ちたラーメン。浮いたままのお箸。
「あ、ちゃんと段階は踏んだよ?強引にやったわけじゃないし、捕まるようなことはしてないから安心して、ね?」
「おいおい、待て待て。え、そいつ大丈夫なのかよ」
「引かれてる感じはないんだけど。むしろ順調というか?へへっ」
「へへって笑ってる場合かよ。そいつは安全なのかって聞いてんの!」
安心安全なジェントルマン。あんなに素敵な人が他にいるわけないじゃない。
「お前一応女の子なんだぞ?何考えてんだよ……見てるだけにしときなさい!」
「女の子だけど、少なくとも真心斗よりは強いもんねー」
「……だとしても!お前に好意を寄せるやつなんてろくなやつじゃないだろ」
「うわ、最低ー」
確かに学校に通ってる時も、男の子とは勉強の話しかしたことない。私の周りはリア充ばっかだったし、私も恋愛に興味なかったし。
「え、まさか連絡したりしてる感じ?」
「ちょこちょこね。でもすごい進歩じゃない?」
「は、え?な、何話してんの?」
「読んでる本とか、おすすめの本とか」
「なんだ、本の話かよ」
「悪い?」
「いや、安心した」
「なんかムカつくな」
本日の恋バナは不発で終了。真心斗にしたのが間違いだった。せっかく仕事手伝ってやってんのに。あとで他の人にしようっと!
「おい、休憩終わり!戻るぞ」
「じゃあコーヒー買って行かない?」
「珍しくまともなこと言うな。いいな、買ってこうぜ」
「ムカついたから奢ってね」
私たち国家均衡委員会の建物にコンビニがない。国家機密すぎて、建物に一般人を入れられないからと言われているが、納得はしていない。しかし逆らえるはずもなく、こうして隣の隣の建物まで歩いていくのだ。
「ごちそうさまでーす!」
「お前、覚えとけよ」
さ、午後も頑張るぞ!あーあ、誰か綿貫さんの素晴らしさを共感してくれる人いないかなー。




