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13/22

13.参考書


 忙しいのは恋だけじゃない。

 休みのはずなのに、今日は佑樹さんから電話。もう仕事から解放してほしい。


「あ、この漫画の最新刊今日発売なんだ」


 1番盛り上がってるところだし、今すぐ続きを読みたい。


「ついでに他の漫画も読んでみようか。オフィスラブは違うけど……まあ後で考えればいっか!」


 しかしここで問題発生。

 彼の前で大量に恋愛漫画を買うなんて、恥ずかしくてこれ以上できない。しかも彼のいない時間に本屋へ行って、あとでそれが彼に伝わったら恥ずか死ぬ。


「背に腹はかえられない」

 

 仕方ないので、3つ先の駅の本屋へ行くことにした。普段はエコバッグ派だけど、本屋は別。お金を払っても、絶対紙袋に入れて欲しい。斜めがけの小さなカバンを下げて電車に乗り込んだ。


「まだ開いてない…あと30分もあるじゃん」


 浮かれた私は、時計を見ずに家を出た。結果がこれである。とりあえずカフェに入り、ドラマの続きを見て時間を潰した。


「お願いします」


 カゴには再びパンパンの参考書。今回はクレジットカードを手に、準備万端。多分さっきのドラマで泣いたから、目が赤いけど。


「28,380円です」

「クレジットカードでお願いします」

「タッチか差し込みでお願いします」


 日本のシステムに戻ってきた体。というか、彼が絡まなければ私の普通はこれなのだ。重たい紙袋に満足し、マンションまで戻ってきた。が、ここで気持ちが萎えてしまった。


「……どうして2人がいるわけ?」


 私を待ち伏せしていたのは、真心斗と佑樹さん。これに仕事が絡んでいないわけがない。イラついた私は、2人に1つずつ紙袋を持たせてあげた。


「お前また本買ってきたのかよ」

「いいじゃん、自分のお金なんだし」

「っていうか、教習所は?」

「勝手に押しかけて来といて何?明日契約に行くんですけど」

「悪いな。ちょっと頼みたいことがあって」

 

 気づけば、あれよあれよと言う間に2人はパソコンと睨めっこ。私は見せつけるようにソファーで寝転び、買ってきた漫画を読んだ。


「つ、つ、椿さん?」

「何ー?」

「それは……なんの漫画かな?」

「今読んでるのはね、お菓子作りをしている男の子に恋してる女の子の話」


 突然パソコンを閉じ項垂れる佑樹さん。そしてそれを見てクスクスしている真心斗。


「お、このお菓子食べていい?」

「ダメダメダメ!絶対ダメ!」

「は、なんで?」

「お菓子なら別のやつ出すから!」

「何それ」

「椿……?その本はもしかしてだけど……あー、好きな人がいる本屋さんで買ったのかな?」

「これは違う本屋さん!綿貫さんにこれを買ってるのがバレたら恥ずかしいでしょ?向日葵ちゃんに、コソコソした方がいいって教えてもらったし」

「わ、わ、わ……え?もう名前教えあう仲になったのか!?」

「それはー!実は「椿?俺はとりあえず1回仕事に戻るな?」

「え?わかった」


 仕事すると言ったのに、パソコンを開き固まったままの佑樹さんと、堪えられず笑い声が漏れる真心斗。一体2人は何をしに来たのか。それから30分ほど経って、ようやく口を開いたかと思った佑樹さんからは、聞きたくない言葉。


「悪い。ここから先のハッキング頼むわ」

「……私今有給じゃん?これはお給料出るの?」

「わかった。ボーナスに加算しとく」

「じゃあいいよ」


 いつもの薄いノートパソコンと、やたら分厚いノートパソコンを持って来た理由が今わかった。そしてそれなら私のデスクトップでよかったのでは?とも思う。


「でもこの子のもうすぐ告白しそうだから、それまで待ってね」


 佑樹さんは顔を覆い、真心斗はゲラゲラ笑っている。

 どうせ2人にはわからない。この参考書の重要性を。

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