12.恋は忙しい
彼から受け取ったというプレミアの本を自宅に置き、私はスーパーへと繰り出した。
結局なんだかんだ仕事はしているけど、彼の言う通りほぼほぼ在宅ワーク。つまり、いつでも好きなものを食べられるのだ。
大好きないちごと、バナナはマスト。
「カレイが安いな、煮付けにしよう。ほうれん草のナムルと、ポテトサラダも作るか」
エコバッグ2つ、パンパンにして帰宅。冷蔵庫にしまいながらも、あの本が気になって仕方ない。
「我慢我慢」
ドラマの続きを見ながら、料理開始。お湯を沸かして、魚の下処理をしていた私だか、すぐさまそれを放り出し、テレビの前に正座した。
「付き合うの?付き合うの?告白……ハグ!?」
とうとう主人公が、好きな人とくっついた。しかもあんなに愛おしそうにギュッとしている。
「えーーー!キ、キ、キ、キスも!?早くない!?」
主人公泣いちゃってるよ。現実の恋も、あんな感じになることあるのかな。さすがにこれはフィクション?
茹でたほうれん草を切りながら、エンディングに私も泣けてきた。次回が楽しみすぎる。
涙を拭い、昨日のご飯のあまりをよそって、夜ご飯の準備完了。最近ハマってるルイボスティーをコップに注ぎ、いただきます。
朝見たアニメの続きを流しながら、ポテトサラダを一口。しかし好きな人に好きな人がいたとわかった女の子が、雨の中走り出した。
「頑張れ!頑張れ!」
立ち上がって応援。煮付けを食べながら、ハラハラドキドキ。
「ンンン!ッハ」
最後の一口が変なところに入った。だって女の子の手を、あの人が掴んだんだよ?萌えすぎる。
「はあ、恋愛って心臓が疲れるな」
食器をシンクに下げ、しぶしぶパソコンを開く。溜まりに溜まったメールに目を通しながら、うちの部が抱えている仕事もチェック。
「うわー、有給明けこれになるのか……やだな」
真心斗から電話が来た理由がわかった。1ヶ月後に、いわゆる悪い殺し屋会社を制裁するようだ。現在その実態調査調査をしている最中っぽい。
「しかも久しぶりの銃か……やだな。私ナイフ派なんだけど」
制裁部の仕事では、当然人を殺すことがあるし、その点でいうと私は殺し屋。でも殺しだけが仕事じゃない。名前の通り制裁が目的なので、捕獲、尋問、資産凍結、組織になる前に懲らしめる……などなど。
「身体鈍ってるよ、私。回し蹴りしかできない」
休日に仕事を思い嘆く。
まあいいや、こんな時は本を読もう。
もらったお菓子は冷蔵庫に貼り、紙袋から本を出す。プレミアム本を、素手で触るなんて背徳感。
「綿貫さんの家から来たんだよね……やば!」
やばいけど、本は読む。もちろん今回の本も面白く、読み終わるまでソファーから動くことはなかった。彼も今頃読んでいるのかな?
頭の中から彼のことが離れない。眠れなくなったり、そわそわする。恋は大変だし心臓が忙しい。でもやめられない。だって好きなんだもん。




