表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
修理師リエイのほのぼのクラフト生活  作者: 弌黑流人
第一章 修理師

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

72/109

repair.72 『盾に刻まれた執念と朝のリゾット』

工房の静寂の中で、リエイの指先だけが精密な動きを続けていた。

極微魔力修復針が、盾の内部で煮え繰り返る聖魔法の奔流を、一本ずつ丁寧に「出口」へと誘導していく。


(……やはり、ただの魔力暴走じゃない。これを作った職人の、意地にも似た呪縛が回路を塞いでる)


多機能ゴーグルの解析深度を一時的に禁忌領域まで引き上げると、金属の奥底に刻まれた、製作者の最期のメッセージが文字として浮かび上がった。

『不滅であれ、決して砕けることなかれ』。

その祈りに近い執念が、盾を修復不可能なほどに硬化させ、逆に衝撃の逃げ場を奪っていたのだ。


「悪いが、カイルはもっとしなやかな強さを求めてる。……あんたの執念、ここで昇華させてもらうよ」


リエイは超伝導の籠手を介し、特定の周波数の魔力を回路に流し込んだ。

構造破壊の技術を転用した精密な振動が、頑なだった術式を優しく解きほぐしていく。不協和音を上げていた盾の震動が、次第に穏やかな、脈動のような音へと変わっていった。


数時間後。

工房の重い扉を開けると、そこには作業を終えたニーリルとノエル、そしてアルス・マグナが、湯気を立てる大きな鍋を囲んでいた。


「あ、リエイさん! お疲れ様です! ちょうど星滴麦のリゾットが、最高の炊き上がりですよ!」


ノエルが弾むような声で皿を差し出す。

隣ではニーリルが、既に琥珀酒を片手にリゾットを口に運び、目を輝かせていた。


「これこれ! このプチプチした食感がたまんないんだよね! ノエル、天才すぎ!」


『ふむ……。我も解析を終えたぞ。この星滴麦に含まれるマナの定着率は、古代の薬草にも匹敵する。リエイ、主も早く食せ。主の因果が、空腹で揺らいでおるわい』


アルス・マグナが、まるで自分の手柄のように誇らしげに浮遊している。

リエイは、ピカピカに磨き直され、深みのある白銀の輝きを取り戻した伝説の盾を壁に立てかけ、ようやく椅子に腰を下ろした。


「……ああ、いただくよ」


ノエルが丹精込めて作ったリゾットを一口運ぶと、麦の旨味とチーズの濃厚な香りが、疲れた身体に染み渡っていく。

窓の外では、ニーリルたちが塞いだ地下空洞の上に、ガストンたちが再び活気よく基礎工事を再開していた。


「……旨いな。おっさん、養成所の最初の講義は、ノエルの料理教室にでもしたらどうだ?」


『カッカッカ! それも一理ある。魔道の極意は、案外こういう皿の上に転がっておるものよな』


だがリエイは、盾を受け取りに来るであろうカイルに、どの程度のメンテナンス費用を請求するか、あるいはどれだけ強烈な小言を叩き込むか。それを考えて、密かに口角を上げていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ