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BU・SI・N・SYO  作者: イ-401号
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皇太子軍出撃

リスティアード皇太子殿下は珍しく、怒っていた。

黒曜天宮の正門に向かう回廊をリスティアード皇太子を先頭にアルセイス武神将と俺、ランガード武神将が続く。


大股(おおまた)に足早で無言で歩く。


女官や宮廷官僚、行きかう人々が慌てて、道を開ける。


身長2メートルの皇太子が堂々と回廊の真ん中を歩き、黒髪黒装束の剣聖アルセイス黒龍騎士団団長と赤髪の不死鳥気団団長の俺達3人が険しい顔して、ズカズカ歩いていく。


警備の兵士も帝国騎士も皆、行く手を(さえぎ)る者はいない。


俺の横にリューイが突然現れる。

「準備整いました。」


俺は目をぎらつかせながら、「わかった」と短く答える。


黒曜天宮を出る所で、黒龍騎士団副団長ガウス・ヴォーフェミア准将が走ってくる。

アルセイス団長に報告する「万全です。」アルセイスは(うなず)いただけで何も言わない。


黒曜天宮正門中央広場、帝国騎士団が出陣する時に集まる為の広場なので、物凄くだだっ広い。


3万人は余裕で収容できる。


そこに、今1万3千人の帝国騎士が完全武装で竜騎馬を連れ待機していた。


そうだ、アースウェイグ帝国軍最強を誇る黒龍騎士団5千人と不死鳥騎士団8千人だ。


メラの村出身のメイラ治癒部隊も全員揃っていた。


俺達、3人が黒曜天宮を出て正門中央広場に顔を表す。


1万3千人の帝国騎士は一人として、無駄口をたたく者はいなかった。


リスティアード皇太子が前に進み出て静かにしかしよく通る声で話し始める。

「これより、パヴロ聖王国聖王宮奪還とルビリア聖王女救出の為出陣する。」


「この戦いに人類の存亡がかかっている。皆の奮戦に期待する!」


「「「「はっ!!」」」」


「「「「焼き払え!!」」」」


広場を揺るがすほどの気合のこもった返答をそれぞれの騎士団はそれぞれの答え方で決意を表現した。


皇帝陛下の出陣許可は取っていない、、、逆賊としてでも出陣を決意する3人であった、、、人類の存亡をかけて、、、


黒龍騎士団と不死鳥騎士団のみの構成である。

今更、汚名になるかもしれないから立ち去りたい者は立ち去れなどとは、皇太子は勿論(もちろん)、アルセイスも俺も言わなかった。


黄金の鎧を着たリスティアード皇太子が同じく黄金の装飾された自分の竜騎馬に騎乗して先頭を行く。


レィリアが白装束に白に装飾された、竜騎馬に騎乗して皇太子の隣に自然に並ぶ。


黒い地に銀色に竜を型どった黒龍騎士団の団旗が翻り、続いて赤い地に不死鳥を型どった不死鳥騎士団の団旗が風になびき(ひるがえ)る。


先頭をリスティアード皇太子と俺達3人が決然と決意を込めた顔で続く。


ドドドドドー


ー黒曜天宮 玉座の間ー


衛兵が駆け込んできて、長い槍を脇に置き騎士の礼を取る。


「陛下、黒曜天宮正門中央広場に黒龍騎士団と不死鳥騎士団総勢1万3千名余りが、武装して集結しております。」


アグシス国務長官が珍しく、自分から陛下に静かに低い声音で話掛ける

「いかが、いたしますか陛下?」


皇帝陛下は渋く、威厳(いげん)を持ち返答する。


「余と卿の息子にランガード武神将の3人にこの黒曜天宮で武力で(かな)う者がいると思うか」


アグシス国務長官は無言で答える。


皇帝陛下がキッと目を開き

「子の不始末は親が(ぬぐ)うものと、昔より決まっておる。」


玉座の間にいる全員に聞こえるように皇帝は叫ぶ


勅令(ちょくれい)である。」


「第87代ルグナス・ハルスト・アルヴェス・アースウェイグ皇帝の名において皆に命じる!!」


玉座の間にいる全員が、皇帝の言葉を一言も聞き漏らすまいと直立不動になる。


「パヴロ聖王国救援の為、ヴァルゴ太古兵器興業国及びゼレイヤ黒魔術王国に対し宣戦を布告する」


「全帝国軍に攻撃を準備させよ!」


「銀鷲騎士団、牙狼騎士団に直ちに出撃準備し、整い次第皇太子軍の援護に向かえ!!」


銀鷲騎士団団長オーガス・ビスマルク武神将と顔に傷跡が残る牙狼騎士団団長タカツ・ブルワルク武神将がその場で「はっ!」と気合込めて返答し、「ごめん」と言い玉座の間を走って出て行く。


付き従う、各騎士団の幕僚達、、、


急に騒がしくなる玉座の間


アグシス国務長官がこんな時も静かに低くよく通る声で

「各国大使並びに国境警備隊に緊急連絡し、国境を固めよ」


「各部署の責任者を至急、ここに集合させよ」


「全帝国騎士団に出動準備、全兵士団並びに全砦城兵に第一級警備体制」


「西北方面の領主には、領主軍の出動要請と領民の避難準備を命じよ」


「黒曜天宮はこれより、戦闘中央指揮所として一般人の出入りを禁ずる。大門を銀鷲、牙狼騎士団が出陣後は閉じよ」


「金獅子近衛騎士団は副団長が指揮を取り、皇族の護衛と黒曜天宮の警護に付け、敵は黒魔術を使う、結界を張り不審人物を発見した場合は直ちに切り捨てろ」


皇帝陛下に許可を取り、続けて静かに宣言する。

「帝国軍総司令長官代理として、私が指揮を取る。」

「高級武官並びに参謀幕僚は直ちに総指揮所をここに設置し、集結せよ」


次々と指示を出していく。


行政執行官にして()黒龍騎士団団長は静寂(せいじゃく)にして孤高(ここう)に現役武神将とも思われる、無言の圧力を放っていた。


急激に騒がしく、緊迫感が誕生した黒曜天宮の風情(ふうじょう)は瞬く間に帝都アーセサスに感染し、帝都臣民に伝染した。


アースウェイグ帝国全土に感染するのにさほど時間はかからなかった。


その頃、皇太子軍は大陸街道を西北に向け、凄まじい勢いで進軍していた。


先頭にはリスティアード皇太子が黄金の見事な鎧を(きらめ)かせて、竜騎馬を疾走させ両脇にレィリア金獅子近衛騎士団団長とアルセイス黒龍騎士団団長が並び後方に俺とリューイが続く。


俺がリューイに話しかける。

「自分の騎士団をほっぽといて、逆賊になる伯爵令嬢ってありなのか?」


「そういう話は本人に聞こえない所でしなさい。」

レィリアは後ろを振り返り俺を(にら)む。


「金獅子近衛騎士団は皇族を守るのが、任務なのよ」

「ここにもいるでしょ、皇族が」


リスティアード皇太子がにっこり微笑んで後ろを振り向く

「レィリアは小さな時から、僕を守るんだって自己鍛錬も男顔負けにしていたからね」


俺は小さな声で

「実際、男よりつえぇしな、、、」


「聞こえますよ、淑女(しゅくじょ)に対しての礼儀という物があなたには大きく欠落しているようですね」

レィリアはもうこちらを振り返らずに、前を向いたままツンと俺を無視するように竜騎馬を疾走させる。


アルセイスが静かに話す

「欠落しているのではない、もともとないのだ」


大戦前にひと時のこういうふざけあう時間は俺は好きだ。


逆に武神将だ族長だと持ち上げられ、偉そうにしている方が俺にはつらい。


命のやり取りの中で生まれる、他愛無い会話が好きだ。


ランガードの場合、打たれ強いというか悪口や罵詈雑言(ばりぞうごん)を言われても感情的にならない、(ふところ)の深さが先天的にあるのが彼の最大の良い点だ。


「大将、パヴロ聖王国王宮と聖王女の奪還作戦はどうすんだ?」


リスティアードは微笑みながら「早さと攻撃力が肝心だね」


「一気にパヴロ聖王都に在中する敵軍を殲滅(せんめつ)して、少数精鋭の部隊で王宮内のルビリア聖王女を奪還するよ」


「敵がパヴロ国民を人質に取ったりしたら、面倒だからね」


「それに、ヴァルゴ国軍の主力はまだルミニア王国からパブロ聖王国に移動中なんじゃないかな?」


「第一目標はルビリア聖王女奪還。奪還後は一度撤退して陣を敷きなおして決戦に備えよう。」


俺は真剣な目付きに変わり「わかった、速さと攻撃力だな」



少し後方、不死鳥騎士団の先頭を竜威丸(りゅういまる)(またが)り、竜騎馬に騎乗するには少し不釣り合いな可憐な少女。


リン千竜騎士長に隣を疾駆(しっく)する副官【火の民】火玄・暁(かげん・あかつき)百竜騎士長から声を掛けられる。

「疲れませぬか?隊長」


火玄・暁(かげん・あかつき)は年齢37歳、身長175センチの熟練(じゅくれん)の紅蓮戦士だ。

自分の子供のような年齢の上官に、気を使い補佐する。


リンは横を向いて微笑み「大丈夫です。」「隊長って言われるのは、まだ慣れないですけど」


火玄は微笑しながら「戦闘が始まれば、そんな事は気にならなくなりますよ」「それより初戦では我々【火の民】に戦闘はお任せください。隊長の【力】はきっと後で(・・)必要になります。真甦を温存ください。」


「わかりました。よろしくお願いします。」

リンはキリっと顔を引き締め答える。


もうじき陽が暮れる。夜間も行軍していく睡眠も食事も竜騎馬の上でとる。


強行軍だ。


通常ならパヴロ聖王国国境まで5日掛かる所を僅か2日で1万3千騎の皇太子軍は越境した。





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