約束
「う、う、う~ん」
皆の目が、集まる。
美しい高貴な女性の瞼が開く。
「気づかれましたか?聖王女殿下」優しく語り掛ける。
王女は頭がはっきりしてきて、自分に声を掛ける人物に気付く「リスティアード皇太子様!」
「大丈夫ですか?」優しく微笑み声を掛けるリスティアード皇太子
大陸街道から少し離れた、山岳地帯の木々の中、少し開けた場所にルビリア聖王女は寝かされていた。
パヴロ聖王国ルリビア・セーニャシ・パヴロ聖王女はすっと上半身を起こし、リスティアードの手を握り必死の形相で話し出した。
パヴロ聖王国王宮に突然、何の勧告も声明もなく、黒尽くめの兵士が空中より多数出現し王宮を攻撃してきたと、ルビリア王女は真剣にリスティアード皇太子に訴えた。
「父上も、母上も私の目の前で殺されました。」
「父上が殺される寸前、私だけを王家の人間だけが知る秘密通路から数人の兵士と共に逃がして下さいました、、、」
「脱出には成功しましたが、敵の追手の攻撃を受けて、、、」
ルビリア聖王女は頬に涙を流しながら、真摯に話し続ける。
「リスティアード皇太子様、どうかどうかパヴロ聖王国の民をお守り下さいませ」
「どうか、お願いいたします、、、」泣き崩れる聖王女
リスティアードは優しく王女の手を握り返し
「お任せください。私が必ず父君と母君の仇を取り、パブロの民をお守りすると約束いたします。」
聖王女の濡れた瞳が輝き「本当ですか!!あ、ありがとうございます。本当にありがとうございます。」皇太子の両手を必死に握り懇願する高貴なる聖王女
レィリア・アストネージュ武神将が、「ここでは、まだ危険でございます。場所を移動いたしましょう」と進言する。
皇太子は優しくルビリア聖王女を立たせた。
ルビリアが立ち上がった刹那、ルビリアの影の中から黒いフードを被った、黒魔術師が【ぬぅ~】っと浮き出てきて、ルビリア聖王女を後ろから羽交い絞めにする。
アルセイスが「ちっ!」と舌打ちする。
黒い魔術師がアルセイスに向かって、しわがれた声で忠告する「剣聖にして黒鉄の騎士殿、私の爪には猛毒が塗っております。」「少しでも動けば、王女の命はないですぞ」
その瞬間
業火と輝かしい閃光が同時に、聖王女をを羽交い絞めにしている黒魔術師に襲いかかる。
俺とリアードが問答無用の速攻攻撃をぶちかます。
勿論、聖王女に危害が加わらない様、手加減して
一瞬だが、黒魔術師が怯む
その一瞬で充分だった。
レィリアが上級精霊の力を用いて、神業の速度で黒魔術師の右腕を切り落とす。
俺にも見えなかった、、、
アルセイスが続けざま、雷光の超神速で黒魔術師の首を撥ねる。
リスティアード皇太子が、首を撥ねられた黒魔術師と共に倒れそうになる、ルビリア聖王女を救おうとした時!
一同が驚愕の顔をする。
首を撥ねられた黒魔術師の肩から新しい首が生えて来たのだ。
レィリアに切り落とされた、右腕もはえてきた。
しかし一番異様なのは、その双方の目である。
黒く深く輝いているのだ。
黒魔術を使い、仲間の体と己の体を入れ替えたのだ。
「ぐっ、ぐっ、さすがはアースウェイグ帝国軍最強の帝国騎士よなぁ」
「これ以上は、この上級黒魔術師【ルカ】が出て来たからには、、、」
シュン!!
ルカと名乗る、上級黒魔術師の黒く輝く双方の異様な目を狙い短剣が誰にも見えない速度でレィリアが放つ!
ルカはギリギリの所で、顔を右にずらし短剣を避けるが、頬に一筋の切傷痕が付く。
アルセイスが再び、電光石火でルカの生えてきた右腕を再度切り飛ばす。
ドン!!
「ぐわぁっ!!」たまらず、ルカはくぐもった悲鳴を発する。
続けざま、俺が爆炎を王女に当たらない様に噴き出す。
ルカは右腕を失い、顔に切り傷を残し、俺の炎を避けるように忽然とルビリア聖王女と共に消えた!
っと思った瞬時に
「逃がさん!」アルセイスが三度雷光を神速で打ち放つ!!
ズガガガーン!!
ルカと名乗る、上級黒魔術師はルビリア聖王女と共に消えていなくなった、、、ルカの右腕を残して。
「ちっ、逃がしたか」アルセイスが二度目の舌打ちを打つ。
リスティアード皇太子がレィリアに「何処に飛んだかわかる?」と尋ねる。
レィリアは目を閉じ、精神を集中する。しばらくして目を開ける。
「パヴロ聖王国王宮です。」
リアードが渋い顔をして「聖王国王宮が敵の前線基地だね」
「こうなったからには一度、アーセサスに戻り、皇帝陛下に帝国軍を出してもらおう」
一同は超神速で黒曜天宮に帰還した。
こうして、ヴァルゴ太古兵器興業国、ゼレイヤ黒魔術王国連合との火ぶたは切って落とされたのである。
ー黒曜天宮ー
大きく広い黒曜石で出来た回廊をリスティアード皇太子を先頭に俺とアルセイス、リューイが大股に歩み続く。
俺はリューイに顎を横に振り合図する。
刹那、消えるリューイ准将。
アルセイスの隣にはいつの間にか副団首のガウス・ヴォーフェミア准将が付き従い、アルセイスと小声で話している。
ガウス准将は駆け足で、直ぐにその場を離れる。
ー玉座の間ー
アースウェイグ帝国の高官が一堂に揃い、玉座には皇帝陛下が座す。
左には文官の長、行政執政官アグシス国務長官が立つ。
右にいつも立つ、リスティアード皇太子殿下はアルセイス武神将と俺を後ろに控え、皇帝陛下に騎士の礼を取り玉座の下にいた。
皇帝陛下が声を発する
「皇太子の言い分は、わかった」
リスティアード皇太子が感情を込めない声で
「では、帝国軍の出撃を御許可いただけますか?」
皇帝陛下が威厳のある低い声で
「それは、できぬ」
「此度の件については我アースウェイグ帝国は専守防衛に徹すると議会で決まったではないか」
皇太子は変わらず感情を込めない声で
「現状は極めて危険で、友邦国パヴロ聖王国の民を救援なさらないのでございますか?」
皇帝陛下は厳しい顔をして更に低い声で
「何度も同じことを言わせる出ないぞ、皇太子。」
リスティアードはスクッと立ち上がる。
それに合わせて、アルセイスと俺も御前にも拘わらず黙って立ち上がる。
リスティアード皇太子を先頭に玉座に背を向け、黙って俺達は歩き出す。
ざわつく、周囲の高官たち、、、
皇帝陛下が慌てて命令を下す「衛兵、皇太子たちを留めよ」
リスティアード皇太子が立ち止まり首だけ後ろを向き毅然と言い放つ。皇帝に父親に向かって
「私はルビリア聖王女に約束しました」
「パブロ聖王国を救い、国王と王妃の仇を打つと!」
「私の約束は、それほど軽い物ではありませぬ」
再び、歩き始める。
皇帝陛下がかなり慌てて叫ぶ「衛兵!皇太子達をこの部屋から出してはならぬ!!」
俺達の前で扉を守る衛兵4人が長い槍を交差させて
「リ、リスティアード皇太子殿下、どうか陛下のご命令にお従い下さい。」
っと、言うが槍先は震えていた。
俺が皇太子の前に出て槍を素手で掴み獰猛に睨みつける。
「役目はわかるが、無理すんじゃねぇよ。」
衛兵は気圧され道を開ける。
堂々と歩き去る3人。




