パヴロ聖王国聖王女
俺は、不死鳥騎士団練兵場にいた。
総力戦に備えた、全騎士戦闘陣形の練達を繰り返し繰り返し反復訓練を繰り返す。
陣形が崩れた時の対策、乱戦になった時の対処方法、百人単位での戦闘、千人単位での行動、全騎士団での攻撃防御方法、、、
戦闘部族【火の民】と俺が知りうる限りの戦術、戦闘方法を短期間で全団員に叩き込んでいた。
そこに、アルセイスとレィリアを伴って、リスティアード皇太子が現われる。
不死鳥騎士団全員が訓練を辞め、皇族に対し、右膝を地に付け騎士の礼を取る。
ザザッ!!
普段なら軽口でも叩いて、礼を受ける王子が何も言わず、俺の所まで歩いてくる。
王子は珍しく怒っているようだった、、、
「ランガード、リューイ准将と共にパヴロ聖王国国境まで僕達と一緒に来てくれないか?」
俺は相変わらず不機嫌に「どうした大将?」
リスティアード皇太子は御前会議で散々危機を訴えたが、直接アースウェイグ帝国に侵攻でもしてこない限り帝国軍は国境の警備を強化する事だけになったそうだ。
珍しく、口数が少ない皇太子に俺は「ああ、かまわねぇよ」と言いリューイを呼び、界・爆弾に訓練の指揮を任せた。
界・爆弾にはいつでも出撃できるよう、訓練と出陣準備を命じ、リューイを伴いリスティアード皇太子と共にアーセサスを後にする。
パヴロ聖王国は帝都アーセサスから西北の位置に在り、馬なら5日位の距離にある。
リューイの超神速なら3時間もあれば付く距離だ。
リスティアード皇太子、アルセイス武神将、レィリア武神将もリューイと変わらぬ超速の移動速度を持つ。
俺はリューイの肩に捕まり、皆無言で全速力で飛んだ。
パヴロ聖王国国境は大陸中央街道が交差する山岳地帯にあった。
パヴロ聖王国は国民の数はアースウェイグ帝国に匹敵する国民を抱え、国土も大陸中3番目の大きさを誇る。
1番大きい国土を持つのは、アースウェイグ帝国なのだが
パヴ聖王国は武力より文化芸術に秀でた、平和なお国柄だ。
豊かな国土と貿易が盛んな為、幾度となく、他国の侵略を受け、その度に友邦国アースウェイグ帝国に助力を求めてくる。
その都度、帝国軍が他国の侵略軍を打ち滅ぼす。
曽てはアースウェイグ帝国とパヴロ聖王国は同じ一つの国だったのだ。
当時の国の王には2人の王子がおり、兄弟とはいえ全く違う性格をしていたが、施政者としての資質は共に充分あり、武に秀でた兄がアースウェイグ王朝を独立開国した。
弟王子は芸術や本を愛していたが、父親の跡を継ぎパヴロ聖王国を継承した。
故に皇族同士も、血縁関係にありいわば兄弟国の様なものだ。
そのパヴロ聖王国が危機に瀕していると知り何も行動を起こさないアースウェイグ帝国議会に対する不満がリスティアード皇太子を珍しく無口にしていた。
山岳地帯の切り立つ崖の上に俺達は着陸した。
街道には旅をする者や隊商を組んで貿易に行く者達など様々な人間が行きかっていた。
今はまだヴァルゴ国軍による侵略戦争の話は伝わっていないらしい、、、
レィリアが周りを見回し「まだ、国境までヴァルゴ国の脅威は知れ渡っていない様ですね」目をつぶり精神を集中する。
精霊を呼び出し、周辺を探索しているのだろう、、、
レィリアが目を開けリアードに声を掛ける
「パヴロ聖王国側より、聖王家の紋章の入った馬車がこちらに向かってきます。」
「ちょっと、お待ちください、、、」再びレィリアは目を閉じ心を集中する。
「あれは何でしょうか?」
「乗り物の様な、、、早いです。聖王国の馬車後方2キロくらい離れた場所から馬車を追って狙ってます。」
「6機います。鉄でできた飛行する乗り物です。羽が勢い良く回って速度を出しているようです。」
「ヴァルゴ国軍の紋章が入ってます!」
リスティアード皇太子が「今、ここで戦闘になるのはまずい、一般人が多い。」
刹那アルセイスが雷光と共に掻き消える。
続いて、他の4人も飛ぶ。
ヴァルゴ国軍の乗り物は鉄でできた一人乗りで、馬の両側に羽が生えたような姿であった。
その羽が勢いよく周り、速度を出しているようだ、、、
とにかくうるさい、爆音を立ててパヴロ聖王国の馬車を追う。
操縦桿の横に突き出た、長い筒の様な物が火を吐き、馬車を襲う。
ガガガガガ!!
パヴロ聖王国の馬車の回りにいた護衛兵士が次々に血を流し倒れる。
火を吐きながら、鉄の塊を連続発射しているようだ。
聖王国の馬車の車輪も被弾して馬車が傾き、20メートルほど引きずられながらも停止する。
6機の鉄の空飛ぶ乗機は、空中に羽ばたきながら停止する。
格座した馬車に狙いを定め、更に攻撃を仕掛けようとした時。
突然、雷光と共にアルセイスが宙に出現し、鉄の乗機を操舵主もろとも真っ二つに切り裂く。
シャン!!
操舵主は自分に何が起こったか分からずに、鉄の乗機と共に体を縦に二つにされ爆散する。
ババーン!
残った5機が一斉に聖王国の馬車めがけ攻撃を開始する。
正に鉄の筒が火を吐こうとしていた次の瞬間に、ヴァルゴ太古兵器興業国軍の鉄の乗機は光と炎によって、消し飛んでいた。
リアードとランガードの同時攻撃だ。
6機の攻撃機は一瞬で鉄の塊と化し、消滅した。
リアードと俺は機嫌が悪い。
今の俺達は敵に容赦などしない。
レィリアが地上に行き、パヴロ聖王国の格座した馬車の扉を開ける。
血を吐き、頽れてくる護衛兵士。
レィリアは死体をどかし、中を確認した。
生存者がいないかどうかを、、、
馬車の中には5人の人間がいた、皆兵士だ。
折り重なり、絶命している。
あの火を噴く鉄の塊にやられたのだろう、、
レィリアは重なる死体をどかし確認した。
一番下にうずくまる様に生きている人間がいた。
女性だ。
恐らく護衛兵士はこの女性を庇うように折り重なったのだろう、、、
レィリアは急いで、女性を助け出し馬車の外へ連れ出し、地面に優しく寝かせる。
意識はないが、息はしている。
大きく開いた胸元が、上下を繰り返している。
服装から見て、高貴な女性の様だ。
リスティアード皇太子、アルセイス、俺とリューイが周りに降りる。
リスティアード皇太子が女性を確認して目を見張る。
「ルリビア聖王女殿下!」
俺が「王女?」
アルセイスが教えてくれる
「パヴロ聖王国聖王女殿下だ、王位継承権第一位のお方だ」
リスティアード皇太子が「ここでは、目立ちすぎる。レィリア一度山中に隠れよう、聖王女を頼めるかい?」
レィリアは直ぐに頷き、精霊の力を借りて聖王女を抱え、山中に飛ぶ。
リスティアード皇太子が、残った馬車やヴァルゴ国軍の兵器を全て手を振り、瞬時に消滅させる。
大陸街道の周りにいる、一般人に対して大声で
「これから、パヴロ聖王国側では戦争が始まります。アースウェイグ帝国側に引き返してください。」
俺とリューイも一緒に叫ぶ
「西北は危険だ!引き返すか、街道を外れろ」
「道中会う連中、皆に知らせるんだ!!」
「皆さん、大きな戦が起こるかもしれません、パヴロ聖王国には近づかないで下さい。」
「この話を、他の知らない人達に教えてあげて下さい。」
叫び続ける。
目の前で起きた、戦闘を見た者達は急いでアースウェイグ帝国側に引き返していく。
一人でも多く、犠牲にしたくない。
俺はそれだけを念じていた。




