新たな千竜騎士長誕生
炎元郷を後にした、俺はリューイ准将と【天の真甦】を持つリン百竜騎士長と不死鳥騎士団団員100名余りと共に、竜騎馬に騎乗して、黒曜天宮に向け帰還途中だった。
俺は横を見て、いつもの副官に声を掛けた
「リューイ、お前が竜騎馬に騎乗してるの初めて見たぜ」
リューイは堂々と竜騎馬を乗りこなしながら
「僕だって【火の民】ですよ」
俺は思った。飛んでる方が早くて、便利なのになぁ、、、
「その竜騎馬、名前は何と言うんだ?」
リューイはにこりと微笑みながら
「世話丸と言います。ピッタリですよね」
俺は苦虫を噛み潰したような顔をして
「まさか、俺の事を言ってるのか?」
リューイはしらっと「まさか、違うと思っているんじゃないでしょうね」
俺の逆側の隣を走るリン百竜騎士長が「ふふふ」と笑う。
リューイは俺を飛び越して、大きな声で
「リンは竜騎馬に名前つけたの?」
リンは頬を赤らめ「はいっ」と答える。
「なんて名前を付けたの?」リューイが竜騎馬に乗る姿勢を伸ばしてリンの顔を見る。
リンは何も言わなかった、、、
竜威丸と付けたとは本人の前では言えない、、、
俺が思い出したようにリンの方を向き真剣な表情で声を掛ける。
「アーセサスに戻ったら、正式に辞令が出るがリン。」
「千竜騎士長に昇進だ。」
リンは驚きの表情を顔いっぱいに広げ、口を手でふさいでいた。(開いた口が塞がらないとはこういう事か、、、)
俺は厳しい眼付きで「大戦の前で昇進は責任も死ぬ確率も上がる。どうする?」
リンは自分を取り戻し、キッと俺を見つめて
「私の命は不死鳥騎士団に奉げてあります。」
「至らない事も多いと思いますが、精一杯この命を懸け務めを果たします。」
リューイが横から顔を出し
「リンの配下に10人の百竜騎士長は【火の民】が付いて支援するから安心して頼るといいよ」
「副官は火玄・暁と言う、とても頼りになる【火の民】だから安心してね」
リンは元気よく「はいっ!よろしくお願いします。」と言い頬を朱に染める。
竜騎馬は、主の思いを乗せてそれぞれに疾走してゆく。
逞しく堂々と頭に聳え立つ角を誇らしげに、、、
帰還復路の旅は、無事に何事もなく不死鳥騎士団全員黒曜天宮に到着した。
っと、同時にリスティアード皇太子から真魂交神が繋がる。
(お帰り、ランガードそのまま僕の執務室に来てくれるかい?)
(大将、何かあったのか?)
(うん、敵が動いた。)
(わかった、直ぐに行く)
「リューイ、一緒に来い。」
「はい、後の指揮は界・爆弾に真魂交神で伝えておきます。」
直ぐにハキハキと打てば響くように返ってくる。
俺とリューイは竜騎馬を降り、共に炎元郷から帰還した【火の民】に預け、早足で皇太子宮へ向かう。
リューイが小走りになりながら聞いてくる
「何かあったのですか?」
「敵が動いたらしい」俺は獰猛な目付きで黒曜天宮の回廊を走っていく。
女官や文官が慌てて、道を開ける。
195センチの俺が赤髪を逆立て、ぎらついた目付きで走ってくるのだから、皆 驚いて回廊の端による。
直ぐに、皇太子の執務室の前に付き、リューイが扉をノックする。
コンコン
「不死鳥騎士団、リューイ准将とランガード武神将参りました。」と叫ぶ
直ぐに中から「開いてるから入っておいで」と声がかかる。
リューイが扉を開け、俺が目をぎらつかせながら大股で歩み寄る。
いつもの様に、リスティアード皇太子殿下の横にはレィリア・アストネージュ武神将とアルセイス・アスティア・アグシス黒龍騎士団団長が珍しく、正装ではなく軽装の黒と白の鎧を付け、それぞれ剣を剣帯に脇差しにしていた。
リスティアード皇太子は執務室の椅子に座り、両手で顎を支えながら話しかけてきた。
「ヴァルゴ太古兵器興業国から、飛翔体が、アースウェイグ帝国に向けて30発 発射された」
俺は考え込み「飛翔体ってなんだ?」と問いかける。
リアードは手を組みなおして「古代兵器の空飛ぶ爆弾兵器。」
「1発でも、落ちたらアーセサスは死都になるくらいの威力がある。」
「何だって、それでどうしたんだよ、その飛翔体はよ」俺は獰猛な目付きのままリアードを睨む
「勿論、全部撃墜したよ、アルセイスがね。ランガードの所にも何かあったんじゃない?」
「ああ、炎元郷にゼレイヤ黒魔術王国らしい暗殺者が結界を破って、空間転移して襲撃してきやがった、勿論速攻で灰にしてやったがな」
リスティアード皇太子はヴァルゴ太古兵器興業国がルミニア王国国境線に古代兵器を大量に使った軍隊を配備しているようだと、伝えている途中で、美しい顔を険しく眉尻を上げる、、、
「たった今、ヴァルゴ太古兵器興業国軍がルミニア王国の国境を越えたと報告が真魂交神で来たよ。」
珍しく全員が緊張の面持ちで、リアードの顔を見る。
リアードはゆっくりと話す。
「ルミニア王国には前もって、ヴァルゴ国軍の脅威を指摘しておいたけど正直持って3日かな、、、」
「ヴァルゴ国軍はルミニア王国の支配なんて考えないで、アースウェイグ帝国を目指してパヴロ聖王国に進軍するだろうね、、、」
「勿論パヴロ聖王国は友邦国でもあるから、国境線を固めるように言ってはあるけど、それほど持たないと思うな」
俺は目付きの悪く獰猛に睨みながら「それだけわかってりゃ、なんか打つ手はあんじゃねぇのか?」とリアードに吠える。
皇太子は目を伏せ、「国境が1本あるだけで、僕たちの出来る事は限られてしまう、これから御前会議があるから話し合ってくる。」
俺は目付き悪いまま叫ぶ「国王や兵隊が死ぬのは、責任上仕方ない事だと思うがよ、何の罪もない平民が巻き添えくらって死ぬのは勘弁ならねぇよ!!」
レィリアが割って入る
「ランガード、リアードも精一杯手は尽くしているのですよ、救済の為とは言え軍を他国に勝手に進軍させれば、侵略行為と取らわれかねません。」
「いや、ランガードの言ってる事は正しい、僕もできるだけの事はしてくるから、皆はいつでも騎士団を出せるように準備しておいて」リスティアード皇太子が席を立ち上がり執務室を出て行く。レィリアだけ共に付いていく。
俺はぎらついた目で副官を見て、「リューイ、全団員を不死鳥騎士団練兵場に集めろ」
「はいっ!!」その場から一瞬で消える准将。
アルセイス武神将が俺の方に振り向き、静かに俺に話しかける
「ランガード、熱くなるなとは言わんが感情で判断を間違えるなよ、俺達が人類の盾になるんだ」
俺は機嫌悪いままアルセイスに言う。
「わかったぜ、おめぇは俺が認める数少ないまともな貴族様だからよ、忠告感謝するぜ」
長身を翻し執務室を乱暴に出て行くランガード武神将。
不死鳥騎士団練兵場
留守役の【火の民】を含む、8000人の全団員が整列していた。
リューイが声を張り
「不死鳥騎士団全騎士、ランガード武神将閣下に敬礼!!」
ザッ!!
一斉に全員がランガードに向かって両踵を付け、背筋を伸ばし右手の肘を降り左胸に右拳を当て敬礼する。
俺は凄く機嫌が悪い、、、
恐らくリューイはそれを感じ取って、全団員に敬礼を命じたのだろう。
俺は狂暴そうな眼付きで、全員を見渡す。
緊張が走る。
BOON!!
ランガードの体から炎が噴き出し大爆発する。
練兵場を全て飲み込む大きさの火炎巨大玉をいきなり爆発させた。
焦げ臭い、煙が練兵場に一気に充満する。
徐々に爆炎が風で流れていく。
煙が晴れた後には、不死鳥騎士団全軍が、整列したまま身じろぎもせず佇んでいた。
皆、顔を煤で真っ黒にしているが、文句を言う団員は一人もいなかった。沈黙を持って上官の言葉を待つ
俺は鉄火の如き目つきで大声で怒鳴る。
「今の爆炎に耐えられりゃ、おめぇ等は立派な帝国騎士の一員だ!!」
「その命を投げ出せ、俺が拾ってやる!!」
不死鳥騎士団全員が真っ黒な顔をして、声を揃え叫ぶ
「「「「焼き払え!」」」」」
少し落ち着くのを待って、リューイ准将が大声で叫ぶ。
「新しい、人事を発表します。呼ばれた者は前に出て下さい。」
「フーカ・セロ百竜騎士長、リン百竜騎士長、ホセ百竜騎士長、シュカ百竜騎士長、ラウミ百竜騎士長。」
よばれた5人は最前列に出てくる。
リューイ准将は俺の方を見て促す。
俺は今日は機嫌が超悪い。
「おめぇら、5人は千竜騎士長に昇格だ!役職に恥じぬ戦いをしろ」吐き捨てるように言う。
リューイが事前に聞いていた、リン以外の驚く4人に説明する。
「みんな、戦闘経験はないけど持ってる真甦の量や、判断力、行動力、指揮能力を鑑みて決めました。」
「それぞれ、1000名ずつの騎士で構成します。」
「副官、百竜騎士長には経験のある【火の民】を付けますので、迷った時や助言には耳を貸してください。」
「何か、質問ありますか?」
新たな5人の千竜騎士長は一斉に
「謹んで、拝命いたします。」
と、声を張り煤で汚れた顔で、答える。
リューイがにっこり今日初めて笑い
「それでは、新しい不死鳥騎士団の陣形、配置など説明するので頭に叩き込んで下さい。」
「そして、全体の陣形を把握したら、今度は自分の隊がするべき事を百竜騎士長に伝え、全員で同じ行動をとる様にこれから実戦に向けた訓練を開始します。」
「いいですか、これは実戦です。人を助けるために人が死にます。」
「今まで以上に真剣に訓練に取り組んで下さい。」
「「「はいっ!!」」」
全員が決意のこもった、顔をしていた。
煤で真っ黒な顔をしながら、、、
ランガードは一人、腕組みをし仁王立ちしていた。
来たる決戦に向けて、、、




