進化する不死鳥騎士団
俺は早朝から不死鳥騎士団居城の練兵場で大声で叫びまくっていた。
不死鳥騎士団帝国騎士の訓練を指導しているのだ。
決戦を控えた今、一日も早く無敵に強く鍛えるためだ。
指導する熱の入りようから、指導される側もこれは近々何かあると気付く者達も多くいた。
元々は平民で戦った事も無く、ほとんどが自分の特殊能力を不気味に感じて来た者達が多い。
剣など握った事も無ければ、人を殺したことも仲間が死ぬところも当然の事だが経験のない連中だ。
ただ、真甦量とアースウェイグ帝国を引いては自分達の親や兄弟を守るんだという強く、猛々しい気持ちはある。
鍛え上げれば、現在の帝国騎士以上の戦力になりうる強者揃いだ。
俺は声を張り上げ叫ぶ。
「いいか、俺たちの戦いは剣に頼るな!」
「真甦を練り上げろ!真甦の発動時間を早くしろ!真甦の連携を頭の中に叩き込め」
怒鳴りながら、訓練場を回る俺は普段より厳しく、声も荒げ熱の入った指導をしていた。
「基本陣形は【地水火風】の4人一組で戦え。」
「陣形を崩されても、冷静に対処できるようにするんだ。」
「万一、仲間がやられた時は、近くの隊に合流しろ。一人では絶対戦うんじゃねぇぞ!!」
「どうしても、一人になった時は救援が来る迄、てめぇの命を守る事だけ考えろ!敵を一人でも倒そうなんて思うなよ!」
熱い指導をしている、俺の隣にリューイ准将が歩いてくる。
「団長、新しい組織構成できましたよ。」
「おお、どうなった?」
「【火の民】の門・夷塚と初瀬・燕が抜けるので新たに二人、千竜騎士長を選任しました。」
リューイが組織表の紙を持って、語る。
「一人は百竜騎士長のフーカ・セロを昇格させようと思います。」
「いいんじゃねぇか、あいつは冷静に物事を判断でき、行動が的確で素早い。」
リューイが続けて小声で言う。
「もう一人の千竜騎士長ですが、始めは【火の民】から選ぼうと思ったのですが、天の真甦を持つリンにしようかと思います。」
「最近の彼女の急激な能力向上は目を見張るものがあります。【火の民】を副官と百竜騎士長に据え支援させた方が、戦力として高い能力を発揮できると判断しました。」
ランガードは少し悩み
「あの年齢の少女を戦場最前線で、戦わさなくてはならないのは、能力は別にして俺としちゃ、心苦しい物があるがな、、、」
リューイは誇らしげに「彼女はこれまで幾度も、我々の期待に想像以上の成果で応えてきました。今回も大丈夫だと思います。」
「わかった、、、」
俺は生まれてくる自分の子の事を考えずにはいられなかった。
この戦い、必ず勝利し終わらせなければならぬと!
自分の命を懸けても、、、
俺は決意して、リューイに声を掛ける。
「全員集めろ。」
リューイは直ぐに全員に響く大きな声で
「訓練を中断して、全員集合して下さい。」
直ぐに命令に従い、駆け足で集まってくる。
リューイが胸を張り
「ランガード団長、不死鳥騎士団全騎士集合しました。」
俺は自然に世間話をするように話し始める。
「近々、大戦がある。」
「俺達、不死鳥騎士団は先鋒を任されるだろう」
「今からでも死にたくない奴は、抜けても俺は何も言わねぇぞ」
リューイがそこで大声で割って入る。
「死にたくないのは、人として当たり前の事です。怖いのも普通です。人を殺して喜ぶ人間はいません。」
「遠慮せず、申し出てかまいませんよ。」
カツン!
一歩前に出て敬礼する。フーカ・セロ
「その戦いは、アースウェイグ帝国を守る為に行われるのですか?」
俺が「そうだ!」と答えると
リューイが「アースウェイグ帝国のみならず、大陸中の人間を守る戦いです。」
フーカ・セロは胸を張り
「それでしたら、私はこの命を捧げます。」
リンも続く
「私も戦います!」
ラウミやシュス、ホセも同じく大声で答える。
抜ける者は一人もいなかった。
俺が最後に
「今、隣にいる仲間が殺される事もあるだろう、ここにいる全員が死ぬことだってあるかもしれねぇ」
「それでも、戦う事をお前たちは選ぶか?」
「「「「焼き払え!!」」」」
不死鳥騎士団団員8000人が声を揃え、ランガード団長を決意のこもった、熱い眼差しで見つめ叫ぶ。
(こいつらを死なせたくねぇ!必ず勝つぜ)
俺はしばらくして、「【火の民】以外の帝国騎士はこれより全員炎元郷に向かう!」「留守は界・爆弾に任せる、神速部隊は俺達に同行しろ。」
即座に団長の意図をくみ取り、リューイが指示を出す。
「1時間後に準備を済まし、ここに集合して下さい。糧食は忘れないように、早目に帰還する予定なので荷物は最小限にして下さい。」
「【火の民】神速部隊は輿を用意して、同じく一時間後に集合して下さい。」
「では、直ぐに行動に移って下さい。解散。」
走り解散する、不死鳥騎士団団員。
歴戦の【火の民】紅蓮の戦士は当然だが、2年ほど前までは戦いとは縁のない生活を送っていたが、新兵とはもう呼べぬほどに戦士として成長した騎士団員の顔は皆、国を民を家族を守るという高潔な志で引き締まった顔をしていた。
俺はリューイに断り、一人自室に戻る。
扉を開けるとそこには、俺の妻であるシュシィス・スセインが旅支度を終え、荷物を近習に持たせて優雅に俺に向かって微笑みかける。
俺は驚き話しかける「なぜ、、、」
シュスは決意のこもった声で「私はあなたの足手まといにはなりたくありません。炎元郷にお連れ下さいませ。」
俺はシュスには今回の事は何も喋っていない、、、
俺の帰宅が遅くなったことや、訓練に出る頻度が上がっている事や、リスティアード皇太子殿下やレィリア、アルセイスが俺の執務室に来ることが多くなった、、、
そんな些細なことから、戦が近い事を感じ、自ら俺の元を離れる決心をした、、、足手まといになりたくないという一念で、、、
頭が良く、美人で、先を読み行動する。俺には出来すぎた嫁さんだ、、、
しかも、避難先が炎元郷であることを俺のちょっとした仕草や会話から、感じ取っていたのだろう。
俺は思わず、優しく、優しく抱きしめる。
シュスが耳元で囁く「お約束ですよ」
俺は思わず涙が頬をつたう、、、
「ぜってぇ、この世界は守って見せる!!」
シュスは「ご武運をお祈りしております。」とだけ、言う。
もっと沢山沢山言いたい事はあるだろうに、今は戦いに集中出切る様、負担になる事は言わない。
シュシィス・スセインは誇り高き、戦士の妻なのだ。
一時間後不死鳥騎士団居城練兵場
全騎士が準備を済ませ、集合していた。
そこに俺とシュスとシュスの近習が現われる。
全員が、敬礼で俺達を迎える。
ザッ!!
「楽にしろ、これより炎元郷に向かい、竜騎馬を選びに行くぞ。」
ザワザワする。
帝国騎士たるもの竜騎馬に騎乗してこそ一人前。
みたいな、印象が強い。実際、帝国騎士の称号を持ち竜騎馬に乗っていないのは、不死鳥騎士団団員だけなのである。
「竜騎馬って、乗り手を選ぶんだろう、、、選ばれるかな~」
「馬にも乗った事ないけど、乗りこなせるのかな?」
ざわつく団員にかまわず、俺は大声で叫ぶ
「往路はそれぞれの真甦を下半身に集中して飛んで行く。土の真甦を持つ者は【火の民】神速部隊と共飛べ。」
【土の真甦】は地上に根付く真甦である。地面や壁を変形したり、壊す事は出来るが、その性格上空を飛ぶ事が出来ないのである。
【水の真甦】は水を下半身より勢いよく噴出して飛行する事が出来る。速度は【火の民】神速部隊には劣るが、地面を行くよりはかなり早く行ける。
【風の真甦】を持つ者は少なからず、飛行が得意な者が多い。熟練者や真甦量の多い者は神速部隊にも引けを取らない速度で飛行する事が出来る。
「復路は竜騎馬に騎乗して、帰還だ。」
「この炎元郷への旅も訓練の一環だと思え。」
「「「「はっ!!」」」」
リューイが指揮を取る。
「まずは【風の真甦】【水の真甦】を持つ人達は飛ぶことから練習しましょう。」
「初瀬・燕と門・夷塚は団長とシュス様と一緒に輿に護衛として同乗して下さい。」
「【火の民】神速部隊は【土の真甦】を持つ者とペアを組んで部隊を構成して下さい。」
「出発は30分後、第一陣に神速部隊と【土の真甦】ペア組。」
「第二陣に団長以下、本陣として第三陣に【水の真甦】組、第四陣に【風の真甦】組で、僕は一番後ろに付くので、飛行が上手くいかない人は僕が拾います。」
「それでは、各自準備に入って下さい。」
リューイはそっと、リンの所まで歩いていき、
「【天の真甦】も飛ぶことはできます。練習してみましょう」
リンは頬を赤らめ
「はいっ!」と元気よく答える。




