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BU・SI・N・SYO  作者: イ-401号
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ムライ村大改革

黒曜天宮中央広場には不死鳥騎士団の面々が揃って(そろって)いたが、異様なのがその出で立ちである姿だ。


皆、鎧を付けず、ボロの作業服を着用していた。


ランガードも赤茶色のつなぎ(・・・)に長靴を履いていた。

その隣には、婚約者である氷結の女王シュシィス・スセインが同じくつなぎ(・・・)を着て、腰の辺りを作業用のベルトで結んで、長い真っすぐ伸びた見事なまでの銀髪は後ろでひとつに纏め(まとめ)、馬の尻尾のように高く結んでいた。


どんな、姿でも見目麗しい氷結の女王は小さな口で微笑みながら、楽しそうに皆とおしゃべりしている。


結局50人ほどが集まり、リューイと神速部隊が皆を運ぶことになった。ラウミとシュカも同行する事になった。


フーカ・セロは相変わらず申し訳なさそうに顔はうつむいたままだった。

(やっぱり、これまずいんじゃないかな?)


リューイが皆に声を掛ける。

「それでは、各自出発しますよ。ムライの村まで2時間もあれば到着できますから、糧食は欠かさないで下さいね。」


初瀬・燕(はつせ・つばめ)が神速部隊を代表して

「了解です。神速部隊いつでも行けます。」


ランガードが右手をシュスとつなぎ、左手をリューイの肩に乗せる。


「出発!!」


号令と共に焦げ臭い臭いを残し、消え去る。


【火の民】神速部隊と不死鳥騎士団の暇な騎士達、、、


ムライの村は緑豊かな山間に広がる結構広い村だった。


脇には幅20メートルはある、大きな川が流れておりこの水を引き込んで農業を営んでいるようだ。

村人は800人ばかりのこの辺りでは良くある農村だ。


静かな農村に突然現れる、不死鳥騎士団有志の50名。


フーカ・セロは急いで村長の所に駆けて行き、事情を説明する。


村長はムゲンと言う、50歳代の陽に焼けた健壮な男性だった。


ムゲン村長はフーカと共に走って、ランガードの元にやってきた。

「帝国騎士の皆様にお越しいただけるとは、感謝の限りでございます。」ムライの村、村長は驚きを顔中一杯に広げて汗をだらだらかきながら、ランガードに何度もお辞儀をする。


ランガードは普段の様に「村長、そういうのは良いからよ、どこから手を付けりゃいいんだ?」と気さくに聞く。


ムライ村長は「い、今収穫するのはあっちの畑から向こうまでの畑です。」と指を差し場所を示す。


リューイがまとめる

「風刃、水刃使いの人は稲穂を切り取って下さい。残りの者で稲穂を集めていきましょう」


不死鳥騎士団有志一同が

「了解しました。」

と言い、それぞれの役割作業に入る。


稲穂刈に風刃と水刃の能力者は非常に有効で効率的だった。

あっという間に全ての畑の稲穂を切り終えると、集めるのに参加した。


フーカ・セロが言っていたように、普通の人々がこれだけの面積の稲を刈るとなれば、2週間くらいはかかるものなのかもしれなかったが、真甦(まそ)の能力者と協力して人海戦術でやればものの3時間で全ての畑の稲穂の刈り取りを終えた。


シュシィス・スセイン氷結の女王も腰を折り曲げ、作業用の手袋をはめ汗をかきながら、稲穂を集めていた。


そこへいきなり声がかかってきた。

「よう、ねぇちゃん、この辺じゃみねぇ別嬪(べっぴん)だな」


40人余りの如何にもガラが悪く品の無い、集団がいやらしい笑いと共にやってきた。


シュシィス・スセインを取り囲むように畑に入って来る。


俺が始めに気づき、隣にいた村長に「なんだありゃ?」と尋ねた。


村長は最近、裏山に根城を作り、いろいろいちゃもんを付けては金銭や食料を巻き上げていく悪党だと説明した。


シュシィス・スセインを取り巻く悪党どもは汚い歯を見せながら下卑た(げびた)笑いと共に囲いを狭めて近づいて来た。


悪党の一人が大きく汚い口を開け、「可愛がってやるかこっちにきやがれ!!」と大声を出して飛び掛かってくる。


シュシィス・スセインの両肩に手で触れる。


シュシィス・スセインは「あなた方はバカ者ですね」と言い放つと同時に


ボウッ!!


40人余りの悪党どもは炎と共に吹き飛んだ。


ランガードがシュスの前に立ちはだかり、ドスの利いた声で言い放つ。


「俺の女に気安く振れんじゃねぇぞ!」


シュスが頬を赤らめて、俺の背中に寄り添う。


吹き飛ばされた悪党の回りに神速の【火の民】が次々と現れる。


悪党の頭目らしい男が「な、なん何だ、お前たちは!」


最後にリューイが頭目の眼前に超神速で突然現れ、(こぶし)で顔をぶん殴る。


ドコン!!


「帝国騎士団ですよ」


「火刑に処します。燃やしていいですよ」


【火の民】が手のひらに火球を作り悪党に向かって投げつける。

服に火が付き、燃える悪党ども。

悲鳴を上げながら、ちりじりにほとんど服は焼け落ち、裸同然で逃げ去る。


リューイが大声で「今度、この村に来たら命はありませんからね!」とい放つ。


村長が感謝の意を伝えてくる。


俺はフーカ・セロにこの村で、真魂(まだま)を作れそうな奴を探して、フーカと真魂更新させた。


何か困ったことがあったら、直ぐに伝えろと言い。


村長には他に困ってる事は無いかと尋ねた。


ムライ村長は「この辺りは雨期になると、川が氾濫(はんらん)して畑や家が流されるて困ると訴えた。」


俺はフーカにこのあたりの地図を用意させて、広げてみる。


丁度この村の横を流れる、大きな川が村の手前で大きく右に曲がっており、雨期になると水量が増し、丁度この曲がった場所から氾濫(はんらん)する事がわかった。


俺はフーカにこの川の反対側には人は住んでいないか尋ねた。


フーカは「向こう岸は、だれも住んでません。村もありません」と答えてきた。


リューイは「また、とんでもないこと考えてますね」と言った。


俺は無視してリューイに「一応、神速部隊で向こう岸に人が誰もいないか確認してきてくれや」


リューイは直ぐに指示を出し自らも消えていなくなった。


フーカはランガード団長が何をするつもりなのか全くわからず、「どうなさるおつもりなのですか?」と俺に聞いてきた。


俺は「まぁ、見ておけ」と微笑みながら、フーカに向かって笑顔で答える。


おそらく、ランガードがやろうとしてる事を現状で理解しているのはリューイ准将だけであろう、、、


ヒュン ヒュン ヒュン


次々と帰ってくる、神速部隊。皆「川の向こう側に人はおりません」と報告してくる。


俺は後ろで不思議そうに見ていた。ラウミとシュカに声を掛ける。「最後はお前たちの力が必要だ、土竜隊を集めておけ」ラウミが元気よく「わかりました」と言い、シュカと共に走り出す。


皆と共に丁度川が、右に曲がっている地点に飛んで来た。


俺は念じる「来い牙炎」


「応」


と心の中で答える聖剣誉武号牙炎(よぶごうがえん)


直後に俺の右手に2メートルのとてつもなく長い両刃幅広で輝く超大剣が現われた。


フーカやラウミ、シュカ達、新しく入った、騎士は初めて見る聖剣だった。

「な、なんと神々しい剣なんだ、、、」フーカが思わずつぶやく


俺は真甦(まそ)を練り上げる。練り上げる。


そして牙炎に流し込む。流し込む。

(もっとだ、もっとだ)


ランガードの体が炎に包まれ、赤から青へそして白色に燃え上がる。双方の目も獰猛に白く(・・)輝きだす。


聖剣牙炎も白く輝く炎を纏い(まとい)(ごう)、|(ごう)(ごう)と周りの空気を振動させていた。


俺が大声で気合一発「いっけー牙炎!!」

白銀の炎を燃やしながら、空気を震わせ聖剣牙炎を上段から一気に振り下ろす。


ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドー!!


バキ! バキ! ドカン! ドカン!


GOWOOOOOOOO!


白き炎が川幅20メートルはある川を切り裂き、燃やし、爆風と衝撃波で川自体を吹き飛ばす。


川の水は一瞬で蒸発して、川の底は衝撃波で吹き飛び、大きく長く、真っすぐに地面を抉り取る(えぐりとる)


慣れているとはいえ唖然と見つめるリューイとシュス、、、


フーカ達に言葉は無かった、、、ただ、驚愕のあまり目を見開き手が震えていた。


・・・幅20メートルの大河は新たに作った(・・・)川沿いに沿って流れ始める。


右に曲がる事無く、真っすぐ直線に、、、


ランガードは川を聖剣で地面をえぐり、真っすぐにつなぎ直したのだった。


俺は「ふぅ~」と息を吐き出し

「土竜隊、川の防壁を作ってくれ。」


ラウミとシュカがハッと我に戻り

「わ、わかりました。」と他の土竜隊に声を掛け、真っすぐになった川沿いに2メートルほどの防壁を固く石を混ぜて作り上げる。


土竜隊の作業が終了する頃には夕方になっていた。

俺が「飯食って、帰還すんべ!!」と言うと


ムライの村人たちが、それぞれ食事や酒を大量に持って集まってきた。


村長が「ランガード様、ありがとうごぜぇます。」

「心より感謝しますじゃ、皆さまには是非心ばかしじぇすが、夕飯と酒をご用意させていただきましたのでま食べていってくだせぇ」


俺はひと汗かいたことだし、せっかく用意してもらったので皆で相伴(しょうばん)する事にした。


刈り取った畑の上に茣蓙(ござ)を引き、宴会が始まった。


村人は皆、心より感謝を表し、帝国騎士を労って(ねぎらって)くれた。


村人からすれば、毎年水害で悩まされていたことが、解消して、川が真っすぐになった分。


今まで川だった土地が畑にできる喜びと、先ほどの荒くれ共を一瞬で退治してくれたお礼は感謝しきれないほど嬉しかったに違いない。


俺はそんな、村人たちの笑顔を見てとても嬉しく感じた。

次から次からお酌される、酒を飲んでは感謝の意を表される。


夜になり畑には焚火(たきび)がたかれ煌々と明るく、騎士団員も村人も大変盛り上がっていた。


そこでシュスが立ち上がり「氷結の村に代々受け継がられる【氷の舞い】を披露しとうございます。手拍子をお願いできますか?」といい後ろで束ねた銀髪を振りほどく。


豪華に真っすぐ腰まで流れる、銀麗な姿。


ランガードが「それは、いいな是非見て見たいもんだ」


村人と不死鳥騎士団員は丸く円座になって、手拍子を始める。


その中央で舞う、シュシィス・スセイン氷結の女王。


優雅に、優美に流れるように銀髪が華麗にひらりひらりと舞う。


服装は作業着だが、流れる様な舞の仕草、指先まで華麗に美しく感じる所作は着るものなど関係なく、周りの者を魅了する。


無骨な【火の民】はもちろん、ムライの村人たちも思わず呆気(あっけ)にとられるほど、シュスの氷結の舞に心打たれ感嘆し魅了されていた。


20分ほど舞い、華麗に片膝を付き、お辞儀をして終わりを告げる氷結の女王。


途端に割れんばかりの拍手と喝采。


うぉおおおおおー!!


「シュシィス・スセイン殿、お見事でございます。」

「いんやぁ、言葉もでねぇほど、すんばらしぃのぅ」

「ほんに、すんばらしいべや、冥途の土産が出来よったで」


シュスは激しく盛り上がった賛辞に優雅に腰を折り答える。


俺はシュスの所まで歩いて行き「すんげぇかっこよかったぞ」と言うとシュスは頬を赤らめ「ランガードに褒められると嬉しく思います。」と返してきた。


夜は更けて、宴も最高に盛り上がり帰還する刻限となる。


フーカ・セロは俺の前にやってきて

「団長、心より感謝します。ありがとうございました。」

腰を90度に曲げてお礼を言う。


俺は「戦うだけが帝国騎士じゃねぇよ、国民を助ける事こそが俺達の役割だ、どんな形にしろな」


村人たちは皆、夜も更けているにも構わず。不死鳥騎士団員に最後まで感謝の言葉をかけてくれる。


フーカ・セロも村長始め、村人たちから声援を受け


俺達はムライの村を後にした。


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