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BU・SI・N・SYO  作者: イ-401号
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神々の陣形

ランガードは武神将の外套(がいとう)翻し(ひるがえし)歩き出した。


黒曜天宮中央練兵広場に倒れ込む、銀鷲騎士団エイブ・フォリアン千竜騎士長の所まで、、、


ランガードは倒れている、エイブ千竜騎士長に右手を差し出す。


エイブ千竜騎士長が苦笑いしながら、ランガードの右手を掴み立ち上がる。

「ランガード殿に驚かされるのは、慣れたつもりだったんですがね、、、完全にやられました。」


ランガードはエイブ千竜騎士長の肩をたたきながら、「こっちはまだまだ素人の寄せ集めだよ、もしあの陣が突破されていたら立て直す事は無理だった。」


「初めての戦いだから、勝てたが次は無理だろうな」


肩を抱き合い、他の銀鷲騎士団の騎士にも手を差し伸べ一人一人と握手するランガード。

「ありがとうな、奴等にはいい自信になったよ」

「すまねぇな、傷は大丈夫か?」

「わりぃな、次は勝てねぇから、今回は譲ってくれや」


逆に恐縮する銀鷲騎士団帝国騎士、仮にも帝国騎士団長たる武神将が対戦相手の騎士一人一人に握手を求め、声を掛けて労をねぎらってくれる。


銀鷲騎士団の雰囲気がガラリと一変した。

笑いさえ起こるようになった、、、


素人集団に負けた屈辱的敗北感から、対戦相手の騎士団長に対する好意に変貌して最後は皆で笑いながら、お互いを褒め(ほめ)たたえていた。


貴賓席から見ていた虎翼騎士団団長ナリナック・スパック武神将が牙狼騎士団団長タカツ・ブルワルク武神将に話しかける。

「いやはや、驚きの一戦じゃったのぅ、お主の団で勝てたか?」


右目に大きな傷跡が残るタカツ武神将は「初戦であれをやられては勝てませぬな」にやりと獰猛に笑って見せる。


そして話し続ける。

「それよりも、ランガード武神将の対戦相手を気遣う態度こそ、不死鳥騎士団最大の武器ではないかと思いますがな、、、」


ナリナック武神将が「確かに、今まで武神将が一騎士と握手し肩をたたきあい、笑いながら話をする事などなかった事じゃな、、、」


「新しい風がアースウェイグ帝国を吹き抜けるか、、、」

最年長武神将のナリナック団長が遠い目をしながらつぶやく、、



リューイは不死鳥騎士団の団員を褒め(ほめ)たたえていた。

「みんな、凄いよ。訓練通りバッチリ連携も決まったね」


フーカ・セロが「帝国騎士に勝てたんだ、、、」

ラウミは嬉しさのあまり泣き出しそうだった。

シュスは相変わらず静かに「一年の辛い訓練が、実った。」


リューイは横にいるリンに向かって

「精度も範囲も劇的に上がっている。それに発動時間も短縮できてる。沢山訓練したんだね」


リンはうつむき頬を赤らめる。

「ありがとうございます。」

っと、下を向いて言う。


「よし、じゃ、みんなお礼を言おう」


リューイは大声で「対戦いただきありがとうございました!」と銀鷲騎士団に向かって深々とお辞儀をする。


不死鳥騎士団全員がならう。

「「「「ありがとうございました!!」」」」


更に声を張り上げ「皇帝陛下に敬礼!!」

全員が、両足の(かかと)をピタリと付け、右腕の(ひじ)を折り曲げ、右拳を左胸に当て胸を張る。


ザッ!!


皇帝陛下は貴賓席の一番前で立ち上がり凛然(りんぜん)と声を張り上げ

「灼熱の不死鳥騎士団の戦い、見事である。帝国の新たな国礎(こくそ)足らぬことを心より願うものである。」


黒曜天宮中央練兵広場にいる全員が立ち上がり


「アースウェイグ帝国万歳!!」


「アースウェイグ帝国万歳!!」


と連呼する。


黒曜天宮が地響きで揺れる様な、大喝采である。


灼熱の不死鳥騎士団決起会は滞り(とどこおり)なく終了した。


ランガードはリューイと【火の民】を伴い、黒曜天宮の回廊を不死鳥騎士団城に戻る途中、リスティアード皇太子殿下が壁に背中を預け両腕を組み下を向き、壁際で待ち構えていた。


夕陽が斜めに差し込んでいて、王子の顔を陰で隠す。


どんな格好をしても様になる王子様である。


俺は随伴(ずいはん)する皆に(あご)を振って、先に行けと合図する。


リューイを先頭に皇太子の前を通り過ぎる時に全員、お辞儀をして通り過ぎる。


リスティアード皇太子は下を向いたまま、全く動かない。

不振に思い俺は声を掛ける


「どうしたい?大将、元気がねぇじゃねぇか」


リスティアードは泣いていた。


「ど、どうしたんだ?どこか痛いのか?」俺は動揺を隠せずおろおろする俺を皇太子はそっと


抱きしめた。


大粒の涙を流しながら、拭い(ぬぐい)もせず、子供の様に泣きじゃくっていた。


俺は王子が落ち着くまでじっと動かずに好きにさせていた。

15分もすると、少し落ち着いて来たリアードが喋り(しゃべり)始める。


「あの陣形を考えたのは君?」


不死鳥騎士団の模擬戦の事を言っているんだろうとすぐに理解して俺は「ああ、そうだ」と真剣に頷く(うなずく)


「どうして、あの陣形をランガードは思いついたの?」


俺は深く考えず

「帝国騎士はほとんどの者が強い真甦を持っているのに、騎士団ごとに色分け(・・・)されているのがたまらなく不思議でよ」


「混ぜて連携した方が強くなるんじゃないかって思ってよ」


「平民から騎士希望者を採用するって決まった時から、ごちゃまぜの真甦(まそ)を持った、騎士団にしようって思っていたんだ」


「だから、選考基準も試験も全て真甦の力を持った者で、どう真甦を使うか判断基準にしたんだ」


リアードは既に泣いていなかった。「それで、一年であの陣形を作り出したの?」


俺は照れながら「考えたのは俺だが、ほとんどリューイがやったんだけどな」


リアードはにこりと微笑み「あの最後に現れた少女の真甦をよく感じ取れたね、【天の真甦】は隠れている事が多いから」


俺は「ああ、リンの事か」

「カンだな、この少女は何かあるって、感じたんだ。」


リアードは感心したように「君の動物的、野生のカンは外れた事がないね、、、昔から、、、」


「ランガード、君の作った戦い方はその昔、【神々の陣形】と呼ばれたものと同じだよ」


俺は何とも答えられなかった。

そもそも、神であった頃の記憶が無いのだから、、、


俺はしかめっ面しながら「神々の陣形、、、良く分からねぇが、あいつらはまだまだだ。もっと鍛えて実戦の経験積まなきゃならん。」


「憶えなきゃなんねぇことが山ほどある。だが、今日の模擬戦は自信になったろうな」明日からまた厳しくシゴいてやると心に思い、大将と別れた。


あんな泣きじゃくる、大将の姿を初めて見たのでちょっとびっくりした。


ランガードが立ち去る姿をずっと、後ろから見ていたリアードだった。




ー1年後ー


灼熱の不死鳥騎士団居城 最上階、ランガードが自分の執務室で必要な書類に目を通し、判を押していると扉がノックされた。


コンコン


隣の机で同じく書類整理していた、リューイが立ち上がり扉を開ける。


そこには不死鳥騎士団百竜騎士長のフーカ・セロが立っていた。


そう、入団試験で最後まで棄権しなかった、あのフーカ・セロは今では千竜騎士長にして【火の民】五柱の門・夷塚(もん・いづか)配下の百竜騎士長に昇進していた。


フーカはおずおずと話し始める

「お忙しい所、失礼いたします。」


リューイが微笑みながら、「中に入りなよ」と客用の椅子に座るよう促す(うながす)


フーカは恐縮しながら椅子に座る。


ランガードが「どうしたんだよ、ここに来るなんて珍しいじゃねぇか」


フーカは申し訳なさそうに話し出す。

「実は二週間ばかり、お休みをいただきたいのですが、、、」


俺は書類から目を上げフーカを見る。

「どうしたんだ?珍しいじゃねぇか、誰よりも訓練好きのお前が」


フーカは目線を落とし

「僕の実家は農家をやっております。」


「実は父がぎっくり腰になってしまったようで、今は稲穂の刈り取り時期なので、手伝いに行こうと思いまして、、」


俺は「フーカ確かお前の実家は、アーセサスから西にあるムライって村だったよな」


「はい」


俺は少し考えて、

「わかった、それじゃ、手の空いてる連中連れて皆で行こうぜ!」


「えっ!!」フーカは目を丸くして


「いえ、そんな迷惑はかけられません。」


リューイが間に入る

「どうせ、団長は書類整理に飽きて、外に出たいんですよ」

「いい機会だから、皆で行きましょう。」


俺が立ち上がって「よし、そんじゃこれから行くべ」嬉しそうに机をぐるっと回り、フーカの背を叩く。


「リューイ、出来るなら【火の民】の神速部隊に声を掛けて運んでもらおうぜ」


「わかりました、直ぐに準備しますから一時間後に黒曜天宮中央広場で良いですか?」


っと、そこに「そういう事なら、私もご一緒させて下さいませ」氷結の女王 シュシィス・スセインが執務室の開けっぱなしだった、執務室の扉の向こう側から入ってきた。


氷結の村はアースウェイグ帝国の保護下にあり、帝国軍が常駐する氷結砦が出来上がり、城主にゼス・フェマン元隊長が就任し千名の帝国軍兵士を配下に置き、氷結の村を管理維持している。


魔鉄が取れる、採掘場もアースウェイグ帝国によって整備され、採掘量も以前よりはるかに多く取れるようになった。


氷結の村はリギア戦役以前より、道も整備され、氷結砦から氷結の村を囲む氷雫連山(ひょうだれんざん)の間を城壁によって守られ、大変栄えた銀麗(ぎんれい)の街と化していた。


その為、シュシィス・スセイン氷結の女王は以前の計画通り不死鳥騎士団城、団長の部屋の隣に居室を設けてもらい近習と共に暮らしているのであった。


フーカ・セロがおろおろしながら(いやぁこんな大事(おおごと)になっちゃって、、、村の連中きっと、びっくりするだろうな、、、)


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