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BU・SI・N・SYO  作者: イ-401号
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氷雫連山 氷結の女王

8千名の不死鳥騎士団創設に向けて動き出したランガード達だが、リスティアード皇太子殿下より無茶な命令が下る。

挿絵(By みてみん)

俺にしては珍しく、その日はいつもより早く起きて、飯を腹一杯食べた。

時間にゆとりを持って、リスティアード皇太子殿下の執務室に向かう。


不死鳥騎士団増員の件を議会で承認してもらう代わりの交換条件を聞きに行くのだ。

(大将の事だから、無理難題言ってくるんだろうな、、、)

(ま、どうにかなんべぇよ)


コンコン 執務室の扉をノックする。


中から「入っておいで」と声がしたので「おはよっす」と言いながら入室するとリスティアード皇太子殿下以外にレィリア武神将とアルセイス武神将が正装姿でいた。

(朝からご苦労なこって、、、)


レィリアが「皇太子殿下にお会いするのに、あなたのその姿は何ですか?」

「はい?」(駄目なのこれ?)

いつもの深紅の鎧に大剣を帯びたいつもの姿だが、、、


レィリアは続けざまに明らかに俺を見下した感じで「いいですか、武神将と言うのは帝国騎士の模範となるべき人でなければありません。それは外見も中身も一緒です。」


アルセイスが「猿に言葉で言ってもわからんよ。」

(また、こいつも辛辣(しんらつ)だなぁ~)


俺は無視して皇太子に尋ねる「今、ミハムはどうしてるんだ?」


リスティアード皇太子殿下が微笑みながら「ミハムは今、この皇太子宮で僕と一緒に暮らしてるよ」


「一応、勉強の為って事になってるけどね、僕が留守の時はアルセイスかレィリアが守っているんだ」


勿論(もちろん)精鋭の近衛騎士を常に付けてね」


「そっか」安心した俺は、王子に向けて視線を送った。


リスティアード皇太子が察して「要件はね、アースウェイグ帝国北方に氷雫連山(ひょうだれんざん)という標高3千メートル級の山の稜線(りょうせん)が続いていてね、リギア古代魔術共和国との国境線になっている」

「国境は山の稜線(りょうせん)の頂上と言う事になっているんだけど」

「頂上からアースウェイグ帝国側に少し降りたところに【氷結の女王】という者が治める村があってね、そこで最近【魔鉄】まてつが発掘されたらしんだよ」


「魔鉄?」俺は聞いたことがない単語に首をかしげていると


レィリアが教えてくれた。「魔鉄とはあなたのその深紅の鎧と同じような物よ」「普通の人間が剣として振るえば、真甦を持った者と同じように、炎や風や水を出す事が出来る。」

「鎧として使えば、剣や矢を弾く事が出来る。真甦が自然界で鉄に変わったような物。」


リスティアード皇太子が続ける

「今までね、氷結の女王の村はほぼほったらかしだったんだけど、リギア古代魔術共和国が妙な動きを始めていてね」


俺が片目を吊り上げて「妙な動き?」


「そう、氷雫連山の(ふもと)に兵を集めてるんだ。」

「どの位だ?」

「約2万」

「っで、俺にどうしろと?」


王子が満面の笑みを浮かべて「ランガードと話してると話が早くて助かるよ」


「【火の民】300名連れて様子を見てきて欲しいんだ」

「氷結の女王が困ってる事がないか、聞いて来て欲しいんだよ」ニコニコしながら楽しそうに話す。王子、、、


「もし、リギアと戦闘が始まったら、2万対3百でどうにかしろと?」俺は半分呆れながら尋ねる。


「政治的に非常に微妙な案件でね、氷結の女王の村は正式にはアースウェイグ帝国領内とも、リギア国領内とも決まりがないんだよ、そこで大規模な戦力を動かすのは戦争にも発展しかねないからね」


老舗(しにせ)の帝国騎士団を出す訳にはいかなくて、新参者の俺にお(はち)が回ってきたって事か、、、」


氷結の女王の村は山頂からアースウェイグ帝国側に少し下った場所にある。

国境線が山頂だとするとアースウェイグ帝国側にある氷結の女王の村は、アースウェイグ帝国領内であると言えなくもない。

しかし皇太子はあえて、強硬的手段に出ず、ランガードに様子を見てこい(・・・・・・・)。氷結の女王の相談に乗れと命じた。


その意図は、、、


リギア古代魔術共和国の歴史はそれほど古くなく、新興国家と言ってよいだろう。国土も人口もアースウェイグ帝国の約半分、変わった特徴としては、古代魔術を国家の基幹と据え、国を挙げて研究開発している所だろう。

謎の多い国家ではある。


二つ返事でランガードは「わかったぜ」と返事して執務室を後にした。


執務室ではレィリア武神将が「ランガードでよろしいのですか?」とリスティアード皇太子に尋ねた。


皇太子は「ああ、彼の市井(しせい)での経験とあの人柄が今回のカギになると思う」


アルセイスが「仰々(ぎょうぎょう)しく、帝国騎士が行ったのでは受け入れてもらえないと?」


「そう、氷結の女王は排他的な人物で、よそ者を異常に嫌うという噂だからね、ここはランガードの型破りな人柄に任せようと思う。それに炎と氷なんてロマンチックじゃない?」王子はニコニコ微笑みながらふざけた事を言う。


俺は傭兵棟に帰り、リューイと紅蓮の5柱を個室に呼んだ。


今、炎元郷は初瀬・燕(はつせ・つばめ)の弟、初瀬・翼(はつせ・つばさ)が統括管理していた。

未だ年齢は18歳と若いがしっかり者で、能力は5柱に匹敵する。当然、長老の信牙・凱(しんが・がい)が補佐役に着いている。

さすがは氏族合わせて5万人の【火の民】単一部族である、人材も能力保持者もとても層が厚い。


俺はリューイ達、紅蓮の5柱に皇太子殿下の命令を伝えた。

即座にリューイが「この時期に遠征ですか、、、居城や不死鳥騎士団の構成、訓練などやる事は山ほどあるんですがね~」


「仕方ねぇじゃねないか、入団希望者5千人を削らずに済むよう便宜(べんぎ)(はか)らってってもらった交換条件だ。」

「時間も余りかけたくねぇから、足の速い奴と遠距離攻撃組だけで300名構成しようと思う」


「不死鳥騎士団の準備の責任者は門・夷塚(もん・いづか)に任せる。」


「新兵の訓練は岩・破砕(がん・くらっしゅ)界・爆弾(かい・ぼん)に任せるよ、真甦の説明と活用方法、練り上げ方を中心にやってくれ、剣技とか陣形とか戦術に関する戦い方なんかは全然いらねぇからよ」


紅蓮の5柱が声を揃えて『了解しました。』


「よし、リューイ遠征組の構成を作ってくれ、相当寒いから装備に気をつけてな」


「わかりました。いつ頃出立します?」


「早けりゃ、今日中だ!」


(えっ?まじっすか、、、)


ーー夕刻ーー


黒曜天宮正門中央広場に【火の民】300人が雪山装備で集まっていた。

瞬足の者ばかり集めたので、最北の氷雫連山でも明朝には現着できるだろう。夜通しの飛行になる。


リスティアード皇太子殿下が、レィリアを連れ現われる。

いつ見ても、両者とも豪奢な金髪で王子は少し癖のある巻き毛でレィリアは腰まである直毛を金獅子近衛騎士団の外套の上からサラサラっと流して歩く。

この二人の姿は絵から抜け出たような神々しさがある。


リスティアード皇太子殿下が俺にだけ聞こえるようにささやく

「ランガード、君の感じたままに心の(おもむ)くまま行動すると良いよ」


「ああ、わかった。とっとと片付けて帰ってくるぜ」


リューイが大声で「リスティアード皇太子殿下に剣を(ささげ)!!」


バッ!!【火の民】全員が剣を抜き放ち胸に柄を当て敬礼する。


俺が皆に号令する「行くぞ!」


300人の【火の民】が答える。


『焼き払え!!』


瞬間、300人はその場からいなくなる。


レィリアが「リアード何か隠してません?」

レィリアとアルセイスだけに許された、(おおやけ)でない時だけ許される皇太子殿下の呼び名である。


(・・・・・・・)

何も言わない、リアードだった。


夜通し、飛びながら握り飯を食べるランガード達

「握り飯はやっぱ梅がいいな!」リューイが速度を皆に合わせながら答える「いやいやサケの方がいいですよ」

初瀬・燕(はつせ・つばめ)は(どっちでもいいんじゃないでしょうか?これから戦いになるかもしれないのに、、、2万対3百だよ、、、)


明朝、氷雫連山の(ふもと)にある、シュリと言う町に到着した【火の民】一行。


俺が皆に命じる「俺とリューイで女王の村まで行って様子を見てくる」

「皆はそれぞれ、宿を取り休め。初瀬・燕(はつせ・つばめ)が残留組を取りまとめろ」

『はいっ!』

「緊急時には直ぐに動けるようにしておけよ!」俺は言いながらリューイと超神速で消える。


【氷結の女王】の村、5百メートルくらい手前で着地して歩き出す。すると、そこに老齢の女性が妙な杖を持って立っていた。


俺が話しかける。

「どうしたんだ、ばぁさんこんな朝早くから、何か探し物でもあるのか?」


身長150センチもない老婆が年齢の割にはしっかりした声で「お主、体内に偉い物騒な物を持っておる様じゃの」「へっ?」俺は何を言われてるのかわからずにいると


老婆が妙な言霊を唱え始めると、手に持ってる曲がった杖のような物が光りだす。

「はっー!!」気合を発すると同時に俺に向けた杖から光が飛び俺を包み込む。


「???」どこも、なにもかわっていな、、、


誉武号牙炎(よぶごうがえん)の気が感じねぇ!!」

「ばばぁ!何しやがった。」獰猛に吠えるランガード


「そんな物騒なもん、持って村に入らせる訳にはいかんぞよ」

「帰る時にゃ、返してやるじゃてのぅ」


「何しやがった!ばばぁ」同じ事をもう一度叫ぶ。


「封印したんじゃよ、暴れたりせぬようにの~」

と、言いながら姿がす~と薄くなり消えていなくなる。


「待てこのくそばばぁ!!」


リューイが「白魔術を使っていましたね、それもかなり高度な、、、聖剣が封印されたんですか?」


「ああ、まったく牙炎の気配を感じねぇ!!」

「くそっ、これから大変な事が起こるかもしれねって言うのによ!!」


二人雪山に(たたず)地団駄(じたんだ)踏むランガードであった。



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