救援要請
5千名の入団希望者達が最後の試験に挑む。合否はいかに、、、
そして新たにくすぶる火種が起こる。
突如侵入してきたのは、馬鹿でかい大虎熊であった。
熊と言っても体長はゆうに2メートルを超え名前通り、口には牙が生えており、手には鍵爪のような鋭い爪が片手に5本も生えていた。
おそらく、洞窟内で食べていた食事の匂いを嗅いで、襲ってきたのだろう。
女性二人は悲鳴を上げ奥に逃げる、男三人も初動の対応に遅れた。
突進してきた。大虎熊の爪に右腕を切り裂かれるホセ。
「ぐはっ!!」血が飛び散り、体が吹っ飛び壁に叩きつけられる。
以外に一番早く、行動に出たのはシュカだった。
右手を地面に付け目を閉じる。すると大虎熊の前に土壁が盛り上がる。
大虎熊は目が血走り、狂ったように土壁を壊して、奥へ奥へと侵入してくる。
フーカが大虎熊の前に立ちはだかり、右手を一閃!!振り下ろす。
鋭い風の音と共に風の刃が大虎熊を切り裂く。
大虎熊の右肩から斜めに風刃で鮮血が飛ぶ。
しかし、大虎熊の勢いは止まらない!目が更に血走り勢いを増す。
フーカは間近に迫った大虎熊の懐に自ら飛び込み、自分の右腕に風刃を乗せて腹をつ貫く。
右腕は大虎熊の背中から突き出る。
それでも、大虎熊は倒れず、牙が生え揃った口を大きく開けて、フーカの頭ごと食い千切ろうと襲いかかってくる。
フーカは(ダメだ、逃げられない)と覚悟を決めた。
間近に迫る、鋭い牙と獣臭さと口から滴る涎。不思議と冷静に人ごとの様に見ていられるフーカだった。
その時、リンの体が光った!!双方の瞳も金色に輝き放つ。
同時にリンから金色の光が物凄い速さで放たれる。
次の瞬間、フーカを頭から齧り付こうとしていた大虎熊の首から上が無くなっていた。
大虎熊の頭が肉片や血も何も残さず、消滅したのだ!
ドウッと首から先がない大虎熊が倒れる。フーカは大虎熊が倒れる前に腕を引き抜きリンを振り返り見る。
リンはまだ金色に光っていたが、直ぐに頽れて、前のめりに倒れる。
横にいたラウミがそっと抱え起こす。
胸に自分の耳を当て、口元を確認する「大丈夫、心臓も動いてるし息もある。」
フーカは次に壁に飛ばされた、ホセの様子を見に行った。
ホセは意識があり、なんとか喋れる様子だった。
「大丈夫か?ホセ」
「ああ、なんとかな」右腕には5本の爪の傷跡が生々しく残っていて血が滴り落ちていた。
フーカは直ぐに水瓶からとった水で傷を洗い、清潔そうな洗濯したばかりの肌着を破りホセの右腕に巻く。
応急手当てして止血した。
リンが意識を取り戻した。「う、うう私一体、、、」
「そうだ、あのでかい熊は?」
ラウミが優しく「安心してあなたが、能力で倒したのよ」
リンはその時の記憶が無いらしく「私が能力を、、、」
フーカがスッと立ち上がり、皆に聞こえるように言う
「ここで僕らは棄権する。」
ラウミとリンが「あと3日で騎士合格よ!」と声を揃えて言ってくる。
ホセも「3日なら俺もこのままで大丈夫だ、我慢する。」
フーカは譲らず「駄目だ、ホセの傷はほっておいたら死んでしまうかもしれない!」
「騎士試験合格は大切だけど、ホセの命には代えられないよ」
シュカが静かに「僕もフーカ君に賛成だ」
ラウミ「そんな、、、ここまで頑張って来たのに、、、」
フーカは首から下げていた、黒い魔石を取り出し「ごめんね、ラウミ」
「フーカ組棄権します。救助をお願いします。なお重傷者一名います」と念じた。
瞬時にリューイとメイラ治癒隊と初瀬・燕が洞窟内に現れる。
メイラがホセの元に駆け寄る。リューイは他の4人の無事を確認して、首の無い大虎熊の死体を見た。次に洞窟内を見回しフーカ組の生活状況を見て取った。
メイラが緊張した様子で「この方にはとても悪い物がたくさん入ってしまってます。この場で消滅させるので少し時間を下さい。」
リューイは「命の危険はありますか?」
「今、治癒に入れば大丈夫です。あと半日遅れていたら間に合わなかったと思います。」
リューイは「時間は大丈夫ですから、直ぐ治癒をお願いします。」と言い、他の4人も自分の回りに集めて話し出した。
「フーカ君の判断はとても正確で良い判断でしたね。」
リンが「私達、不合格なんですよね」と半泣き状態で言う。
「合否はこの場では言えませんが、皆さんの組は一番最後の棄権組ですよ。」
「え、それじゃ、他の組は皆 既に棄権したんですか?」ラウミが体を前に乗り出し聞いてくる。
「ええ、そうです。他の999組は既に全員棄権してます。フーカ組が最後の一組ですよ」
「そうなんですか!」フーカが嬉しそうに尋ねる。
「治癒の時間があるので、僕個人の感想を言わせてもらいます。」「フーカ組のこの家は完成度がとても高いと言わざるえません。男女別部屋にお風呂、調理場としっかり生活の基礎を築いています。」「唯一想定外だったのが、こいつですね」といい首の無い大虎熊を見る。
「換気口をもっと扉より離れた場所に作っておけば、臭いも漏れず、熊も襲ってこなかったでしょう」
「こいつが現われなければ、目標の二週間は達成していたでしょうね」
「しかし、これだけ大きい大虎熊に襲われ5人全員無事なのは、皆さんがとても勇気があり、攻撃力、判断力に優れていたからだと思います。とても立派な事です。」
丁度その時、メイラが「終わりました。後は黒曜天宮に戻ってから行いますので、戻りましょう」
「わかりました。皆さん忘れ物はありませんか?」「行きますよ」リューイの回りに円になって手を繋いだ全員が一瞬で消えた。
残ったのは、首の無い大虎熊だけであった。
ー黒曜天宮重要会議室ー
上座には皇帝陛下が座し、右側をリスティアード皇太子殿下から13武神将が並び、続いて高級武官が並ぶ。
左側はアグシス国務長官が座りこちらも同じようにアースウェイグ帝国を実際に管理運営している高級文官、官僚が並んで座っていた。
ひと月に一回ある、帝国定例高官議会である。いわば、ここでアースウェイグ帝国の今と未来を決める場所なのだ。
一通り、議題が片付けられ、会議も終盤になった所で司会役の皇太子殿下が「皆様、お疲れのところ申し訳ないが、ひとつ緊急議題を上げさせて欲しい。」
「よろしいでしょうか、陛下?」
皇帝陛下は「何かあったのかな皇太子よ、話してみるがよい」と気安く呼びかけた。
「ありがとうございます。陛下」
朗々と立って話す皇太子。
2メートルある身長によく整った目鼻立ちに小顔を豪奢な金髪が周りを飾る。神々しいまでに立派な立ち姿であった。
「実は不死鳥騎士団団長ランガード武神将より要請がありました、件をご相談いたしたくお時間を取らせていただきます。」
「皆さま周知の様に不死鳥騎士団は平民より志高き者を登用する事となっております。」
「帝国騎士団は一団5千名と決められておりますが、不死鳥騎士団には特例で8千名の配備をご検討いただきたく議題とさせていただきました。」
「その理由についてご説明させていただきますと、、、、」
っと時間は流れ
結果、不死鳥騎士団8千名は認可された。
但し、予算はそのままでという条件付きで
黒曜天宮の回廊をリスティアード皇太子殿下とランガード武神将が二人並び歩きながら小声で「大将、ありがとな」ランガードがささやく
「会議なんて、始まる前に結果は決まってるのさ」と皇太子は言う。
「認可は降りたから、僕の条件も飲んでよね」
「ああ、何でもどんとこいだ!!」
「それじゃ、明日朝一で僕の執務室に来てくれる?」
「了解!」
そこで別れて、ランガードは傭兵棟に向かった。
2階の仮の不死鳥騎士団執務室に入ると、リューイがスッと体を寄せてきて「入団希望者5千名、全員戻りました。」と報告した。
「死亡者、怪我人は?」
「死亡者はいませんが、重傷軽傷合わせて100人ばかりいましたが、メイラさん達のおかげで、全員元気に練兵場に集まってます。」
「よしっ」といってそのままの軽装で練兵場に向かう。
(せめて外套は羽織りましょうよ、、、言っても無駄か、、、)
練兵場には入団希望者の5千名が整列して並んでいた。
長身の赤毛のランガードが出て行くと皆の注目が集まった。
「みんな、最後までよく頑張ったな!入団試験の発表だが、、、」よく通る大声で叫ぶ。
し~んと静まり返る練兵場内
一呼吸おいて
「ここにいる全員合格だ!」
間があき大歓声に変わる。
『やったー!!』『よしっ!!』『お父さんお母さんやりましたよ!』
それぞれに募る思いを吐き出す。
静かになるのを待って、ランガードは更に続ける。
「今の気持ちを大切にしろ!」
「己に厳しく、民を守るのが俺達帝国騎士団の役割だ!」
「これからの訓練は凄く厳しいものになる、へこたれんじゃねぇぞ!弱音吐いたら、蹴り飛ばすからな!」
「忘れんなよ!」
『はいっ!!』5千人が一斉に返事をする。
ここに8千名からなるアースウェイグ帝国軍、初の13軍団目の【灼熱の不死鳥騎士団】だ創設された。




