氷結の女王はシュシィス・スセインは氷の麗人
氷雫連山に向かう【火の民】300名。その前に立ちはだかるのは、、、老婆。
氷雫連山は標高3千メートルを超える。
天まで突きさすような山々の連なりで、年間を通して氷が溶ける事はなくいつも一面、白と銀の世界である。
突き刺すような寒さの中、ランガードとリューイは徒歩で氷結の女王が統治する村の入口まで来た。
ランガードは妖しい老婆に聖剣 誉武号牙炎を封印されてしまい、行使する事が出来ない状態で大分苛立っていた。
村の入口には大柄な男が二人長い槍を持ち、侵入者に対し立ちはだかるようにしていた。
二人共、頭から肩に掛けて雪が積もっており何時間も動いていない証の様に彫像然として起立していた。
リューイが門衛の二人に話しかける。
「氷結の女王様に面会を申し込みたいのですが、取り次いで頂けますか?」
「駄目だ!」
「「・・・・・・・」」
今度は変わってランガードが喋る。
「俺達はアースウェイグ帝国から来た使者だ、女王に合わせてくんねぇかな?」
「駄目だ帰れ!」
「「・・・・・・」」
「リューイ、飛べ」と言って、リューイの肩に手を乗せるランガード
忽然とその場から消滅する二人。
さすがの無口の門番も驚いて、周りを見渡すが何も痕跡になるような物は無い。
門衛の一人が、「女王様に報告を」と短く相方に命令する。
村の中に侵入する事に成功した【火の民】最強の二人だが、家屋の陰に隠れながら、村を見るが余りの人の多さに驚愕する。
(こんな小さな村になんでこんなに人がいるんだ?)
ランガードが驚いていると、リューイが真魂交神で
(村の山頂側に砦の様な建築物があります。)
(戦に備えて作ったのか?)
(多分、、、規模は大きく頑丈に出来ていそうですよ)
(女王を探しこい)
(了解)と言って、超神速で消えるリューイ。
その間、村の観察を続けた。
村人はおよそ一万人以上はいるようで、男も女もいて子供から年寄りまで生活している。村と言うより町に近い。
男はほとんどが武装しており、緊迫感が感じられる。
シュン!突然現れるリューイ。
「女王は見かけませんでしたが、村の中央当たりに一回り大きな家があり門衛も二人います。恐らくそこに女王がいると思われます。」
「んじゃ、話し合いに行こう」
堂々と歩き出す。
周りを行く村人は見慣れぬ、長身、赤髪、深紅の鎧に毛皮を被ったランガードに慄き、道を開ける。
直ぐに武装した、男達がランガード達二人を取り囲むように立ちはだかる。
ランガードは直ぐに両手を上げ戦う意思のない事を表す。
それを見て、リューイも同じように両手を挙げる。
二人を取り囲んだ武装した男の中で、一番巨大な体格をした隊長らしき男が話しかけてきた。
「お前ら、何者だ!どこから来た?」
ランガードが両手を挙げたまま
「アースウェイグ帝国より使者としてここに来た、戦う意思は無い。」
BUN!!
ランガードの後頭部を棍棒のような物で殴ってきた。
咄嗟にリューイと前方に転がり、棍棒の攻撃を避ける。
「戦う気はねぇって言ってるだろうが!!」起き上がり叫ぶランガード
しかし、攻撃は止まず武装兵はついに剣を抜いて襲いかかってきた。
「言葉が通じねぇのかこいつら!」
リューイが「仕切り直しましょ」と言って右手を俺に差し出す。(超神速で一端回避しようという事だろう、、、)
俺はリューイの右手を取らず、剣を抜いた。
武装兵も少し緊張する。
そして俺は抜いた剣を武装兵に向かって放り投げた。戦う意思は無いというつもりだったのだが、次の瞬間、、、
ガツン!
頭部を殴られ血が出る。
「いってぇじゃねぇか!!」
俺は殴った奴を殴り飛ばした。
一発で武装兵は気を失った。
次の瞬間、驚く事に俺の体は全身がカチンカチンに凍
っていた。
「族長!!」
リューイが叫ぶ。
女性の声が響く
「この村での、暴力は一切許しません。」
武装兵を含め、村人全員が首部を垂れる。
女王の身長は女性にしては高く180センチは有りそうだ。
しかし一番目を引くのはその銀色の瞳と長い真っすぐ伸びた銀髪だろう。
目鼻立ちも整っており、絶世の美女と言っても差し支えないのだが、その双方の瞳の鋭さが、女性らしさを損なわせていた。
長いトーガのような服に腰を帯で固く結び、抜群のスタイルが想像できる。その上にひらひらした上着を纏っている。
(そんな薄い格好で、寒くねぇのか?)
氷の結晶にさせられた俺の事なんか誰も気にしないで、、、
BOU!
俺の全身から炎が噴き出て、氷を溶かし弾き飛ばす。
「つめてぇじゃねぇか!俺じゃなかったら死んでんぞ」
(いやいや、あんたは不死身でしょ、、、)
村人全員が驚愕の目で俺を見る。
「スセイン様の氷結を一瞬で破ったぞ、、、」
俺を氷漬けにした張本人が一歩前に出る。
「そなたらも、魔鉄が目的か!」
「名前くらい聞いてからでもいいか?」
「俺は【火の民】族長でアースウェイグ帝国からきたランガードだ。このちっこいのがリューイだ。」
「私はシュシィス・スセイン氷結の女王と呼ばれておる」
「やっと話す事が出来た、、、」と思った瞬間
俺とリューイの回りを分厚い氷の壁で覆いつくされる。
氷結の牢屋だ。
「私はアースウェイグにもリギアにも支配されない。」
女王が超え高々と宣言する。
ランガードが呆れて「だから、話をしに来ただけだって何度も言ってるじゃねぇか、、、かなり頭が固いな、顔は綺麗なのによ、、、」
「国は金の為なら、嘘もつくし、人も平気で殺す。私は絶対騙されない!」
(駄目だ、こりゃ相当筋金入りの頑固者だ)
(もう、帰ろうかな?)
突然、村の大きな鐘が連打される。
カンカンカンカン!!
女王が服をひらりと翻し、砦の方に走っていく。それに続く武装した男共、女は子供を連れ家の中に入り窓や扉を閉める。
武装した男達は次から次へと砦に集まっていく。
俺達は氷の牢屋に閉じ込められたまま
「どうします族長?」
「考えが変わった、様子見だ」
氷雫連山頂上からこの氷結の女王が治める氷結の村まで左右に高く聳え立つ氷の谷間が続いている。
その谷間の先に氷結の村の砦は堅牢に立ちはだかっていた。
その氷と雪の谷間の向こうに軍勢が突如現れた。
その数、およそ2万!!
シュシィス・スセイン女王が銀色の双方の瞳に冷たい冷気を宿して「リギアめ軍隊を寄こしてきおったか!」
「ゼス何人か連れて付いてこい」
ゼスと呼ばれたのは武装した兵士の中でも一番体が大きく、2メートルを超す長い槍を持ち腰には剣を帯びた、隊長らしき人物だった。
ゼスが5人ほど武装兵を連れ、氷結の女王に続く。
女王を先頭に6人は砦より出て2万人のリギア古代魔術共和国軍の前に立ちはだかる。
女王が凛とした澄み切ったよく通る声で
「この氷結の村は何処の国にも属さぬ、何用あってこのような大軍を連れてきたか指揮官にお尋ねしたい!」
2万人の軍勢の中から、指揮官らしき者とその幕僚と護衛が20人ほど前に進み出る。
異様なのは、皆頭からつま先まですっぽりと真っ黒な厚手の被布に目の部分だけくりぬいてある異様な出で立ちで皆剣の代わりに黒い樫の木で出来た杖を持っていた。
指揮官らしき人物は真っ黒な被布に鴉の羽を飾った冠らしきものを被っていたのでわかった。
指揮官が聞き取りずらい、ズルズルした話し方で喋りだす。
「この村は古より、リギア古代魔術共和国の領土であるる。」
「よって、無法に占有しておるヒトらしき者達は今、出て行けば命は助けてやろうゾゾ」
凛と響く王者の声で
「何を戯けた事を言っているのだ!無礼者が」
「無法に軍隊を持って攻めて来たのは、その方らであろう!!」
リギアの不気味な指揮官が身悶えするように
「ぐっ、ぐっ、ぐっお前のような見栄えの良い、気の強気女子を解剖して飾って置くのは楽しみじゃ、楽しみじゃ」
シュシィス・スセイン女王は
「獣の変態めが、氷結の戦士の力 説くとその目に焼き付けよ!」
「氷壁よ立ち上がれ!」
リギア指揮官と氷結の女王の間の氷の地面が盛り上がる。
厚さ3メートルはあろう氷壁が高さ10メートル程まで上昇し谷間を塞ぐ。
氷結の村が代々より防壁として準備してきた氷壁である。
代々の女王が真甦を少しずつ少しずつ練り上げて用意した防壁である。
そう、氷結の民は【水の民】氷結の真甦を持った部族だったのだ。今まで誰にも知られず、ひっそりと平安に暮らしてきたのに魔鉄が発掘されたことが知られると、各国がこぞって牙をむいてきた。
しかし、今回の様に2万もの軍勢が攻めて来たのは初めての事であった。
シュシィス・スセイン氷結の女王がよく響く声で
「氷結の戦士よ、戦闘準備せよ!」
ゼス・フェマン隊長が女王を庇う様に砦まで走り大声で怒鳴る。
「氷結の弓兵隊、配置に付け!」
「続いて、氷結の槍隊、氷玉隊は防壁より出て来た敵を一掃しろ」
「急げ!」
バタバタと急に動きが激しくなる氷結の民達である。
囚われの身となったランガードが檻の前を走り去る初老の男性に大きな声で声を掛ける。
始め男性は無視して通り過ぎようとした。
男性の足元に炎が爆発する。立ち止まり驚く初老の氷結の民
ランガードが手のひらより極小の火炎爆弾を放り投げたのである。
「何があった!!」ランガードが叫ぶ
動揺しながら男は吐き捨てるように叫ぶ
「リギアの兵が攻めてきやがった!」
ランガードは一瞬で赤い髪が燃え上がり、体が炎で爆発する。
ドッカーン!!
氷の檻は吹き飛ぶ。
「リューイ、あのくそばばぁを見つけて牙炎の封印を解かせろ」
「麓の【火の民】に真魂交神で救援要請だ。」
「はいっ!」
返事と共に消えるリューイ准将である。
自分の剣を拾い、砦に向かって走り出すランガード武神将であった。




