本当の敵
非現実的な事が告げられる中、4人は新たな絆を結ぶ。
いつものふざけたリスティアード・ローベルム・アルヴェス・アースウェイグ皇太子とは別人の様に、威厳さえ感じる堂々と、そして静かに語り続けた。
「各四海竜王の4人、つまり僕の僚友、時には背中を預けあい戦った最強の軍神達、、、」
「1人は北海国竜王アルセイス・アスティア・アグシス」
「もう1人は君、南海紅竜王嵐・守護、もう1人はまだ未確認。そして最後の1人は敵に寝返った。」
メイラが驚きを隠さずに白装束の巫女姿で膝を皇太子の方に摺り寄せ語る。
「竜王様の1人が魔物の陣営に加わったという事ですか?」
四海聖竜王が渋面で言いにくそうに話す。
「東海青竜王ウルグス、【魔の真甦】を持つ者だ。」
メイラが恐る恐ると尋ねる姿は神に祈る神聖なる巫女の姿の様だった。
「経緯をお教えいただけますでしょうか?」と尋ねる。
聖竜王リスティアード皇太子は静かにそして深く、語り続ける。
「先の戦争の終局面で我らが【魔族】を地底深くまで追い込み、一気に滅ぼし【天軍】が勝利を勝ち取るまさにその瞬間にウルグスは裏切った。」
「嵐・守護、君を殺しアグシス(現アルセイス)に重傷を負わせた。」
「嵐・守護とアグシス(現アルセイス)は【天軍】の双璧と呼ばれ、特に嵐・守護、君は戦闘に物凄く長けた最強の雄、ウルグスが始めに君を狙ったのは当然の流れだったのだろうね。」
「そして、軍神総攻撃をしかけ【魔族】に最後の攻撃を敢行していた時、逆に敵にとっては一番効果的なタイミングだった。」
「ウルグスは天軍の真ん中程で自分の軍を味方の天軍に向かって攻撃させ、自らは先頭を行く嵐・守護とアグシスを背後から味方の振りをしてだまし討ちした。」
「天軍は最後の最後で裏切りにあい、陣営が総崩れとなり、天に逃げ帰る羽目になったが、魔族は今度は地上の人間を襲い始めた。」
「天帝皇王様は大変心を痛められ、僕は天帝皇王様の意を酌み天帝様の守りから外れ、地上に降り魔軍をほぼ消滅させ人間を守った。」
「しかしウルグスはずる賢く、僕がそう出るのを呼んでいて、守りに隙が出来た天に向かって自ら攻撃を仕掛けてきた。」
「天帝皇王様はウルグスに殺される寸前に、死んだ神も含めて全ての神々を人間に生まれ変わらせる超神力【真甦回生】を発動したんだ。」
「当然、ウルグスも堕天使とはいえ神の1人だから、人間に生まれ変わっているね、、、」
余りに突飛な話にその場にいる全員が押し黙ってしまった。
何しろ、喋っているのが四海聖竜王本人と名乗るリスティアード皇太子なのだから、、、、しばらく皆が話を飲み込むまで皇太子は待ち、そして続けた。
「今、こうして僕らが生まれ変わったという事は、ウルグスもきっとどこかで生まれ変わっている。」
そこで、ずっと黙っていた竜・威が話す許可を求めてくる。
「よろしいでしょうか?四海聖竜王様」
「なんだい?」
竜・威はいつものはきはきとした口調だが礼儀を重んじた喋り方になっていた。
「いくつかお尋ねしてもよろしいでしょうか?」
「いいよ。」
竜・威はリスティアード皇太子の目を見て
「まず、今ミハム・アストネージュ様(天帝皇王様)はどなたがお守りになっているのですか?」
リスティアードは静かに朗々と
「アルセイスが全黒龍騎士団を総動員して黒曜天宮で結界を張りお守りしている」
竜・威は続いて質問をする。頭の回転が速いのが竜・威の才能だ。
「生まれ変わった、神は元の姿に戻れるのですか?」
四海聖竜王様と聞かされると、思わず口を利くのも憚れるのが本音だが、、、
四海聖竜王は平然と少しも変わる事無く
「人間のままだよ。能力は真甦の種類、量によって差はあるけど、能力については人間を超越しているのは皆も承知してると思うけど、、、」
「心臓が止まれば死ぬし、腕を切られれば血も出るし足を切られれば生えてくる事は無いよ」
「天帝皇王様の超神力【真甦回生】は一度きり、今度死ねば永遠の眠りに付く事になる。」
竜・威はどうしても気になってる事を尋ねた。
「ウルグスなる者の生まれ変わり先については?」
「不明だ」
竜・威「四海聖竜王様の今後の方針は如何されますか?」
「今度こそ、裏切り者ウルグスを殺し、魔族を一掃し、人間界を人間だけで生活し繁栄をもたらす。」
竜・威「人間の中にも悪い人間は多くいますが、どのようになさいますか?」
「全世界を平和にしようなんて、嵐・守護と一緒で思ってない。」
「アースウェイグ帝国だけは平和で豊かな国にしたいと思う。そしてアースウェイグ帝国が他国の人間の法になりたいと考えてる。」
竜・威「法で裁けぬ事や、理不尽な事など、様々に悪用する人間は後絶ちませんが、、、、」
「その為に真甦があるんだよ!」
「真甦で裁き、真甦で許し、真甦で罰する。」
といった具合に竜・威とリスティアード皇太子が語り合う姿を見てメイラは思う。今この世界の行く末を人間達の未来をお決めになられようとしているんだと理解した上で、、、意を決して最後に話し出す。
「お話を全て飲み込むには少し時間がかかると思いますが、四海聖竜王様のお考えはよくわかりました。私でよろしければ、陣営にお加えくださいませ」
リスティアード皇太子が微笑み
「ありがとう心より歓迎するよ」
皇太子は最後に俺の方に視線を向ける
「俺は、かわんねぇよ!」
「神様でも何でも、今までと何もかわりゃしない。俺の正義は俺が決める。」
「だが、今までわからないだらけで悩んでいた問題は解決してすっきりした。それについては感謝する。」
リスティアード皇太子が笑顔を俺に向けて言う。
「うん、君はそれが一番いいね」
皇太子が続けて言う
「先だっての高弟陰謀事件を背後で操っていた様に生き残りの魔物も最近多くみられる。嵐も憶えがあるんじゃない?」
俺がふと記憶をたどると、メイラと目が合った。
「そうだ、メラの村に行く時【髑髏の心臓】と名乗る山賊の首領が蜥蜴の魔物だった」
「メラの村を襲った、毒を放つでかいのも魔物だったな、、、」
四海聖竜王が元のリスティアード皇太子に戻って、
「そうなんだよぅ~、最近やたらと魔族の活動が活発でね~でもね、獣人族という亜人族がいるんだけど彼らは見た目と能力は人とは全く違うけど、心はヒトと全く変わらないんだよ~」
嵐・守護が険しい眼付きで
「その話し方はもう辞めろ!四海聖竜王だが何だか知らねぇが、『それ』はもうやめろや【大将】!」
リスティアード皇太子が目を見開き「君は昔も僕の事をそう呼んでくれていたんだよ、君の助言に従おう」嬉しそうに目を細め「では僕も君の事を昔の様に【ランガード】と呼ぼう」
「発音は全く一緒じゃねぇかよ!」
突っ込みたくなるランガードであったが、ほのかに上気しているのがメイラや竜・威には感じられた。
リスティアード皇太子が竜・威の方を見て目を合わせてくる。
「君も過去ではランガードの名参謀役として彼に仕えていたんだよ、君も過去の名前で呼んでいいかな?」
「リューイと!」
ランガードがまたもや突っ込む
「だから発音は同じじぇねぇかよ!」
竜・威は感動して、目を潤ませながら、、、
「僕も神様の時と同じ名前だったんですね。」
ランガードが脇から「道理で誉武号牙炎に選ばれなかったわけだ。」
「あっ、そういう事言っちゃいます!」
リューイが唇をとんがらがして言い返す。
「族長がいつもだらしなくて、いい加減で適当だから、僕が付いて尻拭いしなくちゃ、いけないんじゃないですか!」
メイラが二人のやり取りを見ていて、あまりに非現実的な事を告げられて緊張していた雰囲気がいつものように和んだ様に思った。その瞬間にリスティアード皇太子が、
「僕と4人で真魂交神しようか?」
ランガードが代表して
「いいのかよ、真魂交神すると相手に力を与えてしまうんだろう」
リスティアード皇太子はもうふざけたりしないで
「以前もしていたからね、リューイには血も分けてるし問題無いよ。」
ランガードが「俺はメイラとリューイとは済んでるから、大将のだけもらえればいい。」
四海聖竜王リスティアードがコクリと頷き、胸に右手を当てる。
すると眩いばかりの黄金の光を発する【真魂】が3個現れる。
メイラが驚きを隠せずに「真魂を1度に3個も出す事が出来るなんて、、、、」
竜王リスティアードが優しく声を掛けてくる
「どうぞ」
ランガードは乱暴に1個真魂をリスティアードの掌から奪い取り自分の左胸に当てる。
すかさず、自分の真魂を右手で取り出し四海聖竜王リスティアードの左胸に押し当てる。
「変わらず、熱く激しく優しい真魂だね」
続いて、リューイとメイラがリスティアードの真魂を両手で受け取り自ら左胸に取り入れ、自分の真魂を両手で四海聖竜王に差し出す。
「ありがとう」
自らひとつずつ真魂を両手で受け自らの左胸に同じく押し当てる。
「リューイのは強い忠義心を感じるね」
「メイラは優しくてとても暖かい」
リューイとメイラは四海聖竜王リスティアードの真魂を胸に頂き、驚きを隠しきれずにいた。
な、なんて神々しく、勇ましい、言葉にする事さえ憚れるような荘厳な真魂、2人とも声が出せない程感動していた。
ランガードは一言
「まぁまぁだな」




