嵐・守護《ラン・ガード》のけじめ
ジャシス王国軍を突破した嵐・守護率いる【火の民】紅蓮の戦士達、進軍は止まらない!
「!!」
ガウス准将が始めに気が付いた。
灼熱の【火の民】戦闘部隊は敵陣を突破し、留まる事無くそのまま進撃を続けていた。
既に、火柱の陣は解かれ、竜騎馬による高速移動行軍に移っていた。
全く停止する気配がない。
アルセイス黒龍騎士団団長が静かにガウス准将に向かって命令を発する。
「黒龍騎士団は全軍、国境警備隊と連携して掃討戦に入れ、指揮はガウスに任せる。」
ガウスが復唱する。
「はっ、これより掃討戦に入ります。」
余計な事は一切聞かない。
これがガウスの良い所であり、アルセイスと長く団長、副団長としてやっていける大きな理由であった。
ガウス准将は年齢は30歳、歴戦の勇者だがヴォーフォミア男爵家の次男として生まれ、20歳の時に帝国騎士団に入り、現在の地位に就いたのは25歳の時であった。
【風の真甦】を多く持ち、武芸も達者でアースウェイグ帝国で年一度行われる、武芸大会では過去に準決勝まで行った実績がある。
身長は180センチ、体重72キロ、細身な体躯で、俊敏そうな強者に見える。
彼を一番印象付けるのは綺麗に切り揃えた口髭だ。
実際の年齢よりも上に見える大きな理由だろう。
ーーーーーーーーーっと
アルセイスは指示した後、忽然と雷と共に消えた。
【火の民】の先頭を堂々たる体躯の阿修羅丸に乗騎した、長身の嵐・守護は軍神の如き勇ましさで駆けていく。
突然、嵐・守護の隣で|雷《かみなり》が光り、アルセイスが上半身だけ嵐・守護の隣に現れる。
下半身は雷の様にバチバチと電撃を放って宙に浮いている。
「何をする気だ?」
アルセイスが静かに嵐・守護に聞いてくる。
俺は全く驚かずに「決まってらぁ」
「ケジメ付けに行くんだよ」
アルセイスは相変わらず静かに
「たったの1千騎でか」
「ああ、最強の1千騎だぜ。」
俺は前だけ向いて答える。
アルセイスは逡巡せず
「私も同行する。」
嵐・守護はアルセイスの方など気にも留めずに「好きにしな」と吐き捨てた。
アルセイスは密かに考えていた。
(こいつの性格じゃ、どうせ止めても無駄だろうし、ああだこうだ言ってる時間も面倒だし、自分がついていくのが一番有効だな、、、)
瞬時に考えて、下半身を電撃神速にして上半身は能力を解いて、嵐・守護と並びジャシス王国 王都ジャガス目指して進撃した。
ジャシス王国は縦長の国土でアースウェイグ帝国と隣接しており、王都は丁度、国中央の位置に在り、国境からさほど離れていない場所にある。
つまり、今嵐・守護達がいる場所から非常に近くに王都があるのだ。
ジャシス王国には真甦がある兵士がいない。
よって、真魂交神を使って連絡する事が出来ない。
情報が伝わるのに非常に時間がかかるのだ。
もちろん、自軍が既に敗北している事など夢にも思わず、、、
王都ジャガスではアースウェイグ帝国に派遣した4万の軍の戦勝報告を今か今かと待ち侘びていた。
そんな所にジャシス王国 国王陛下の元に「敵軍襲来」の急報が持たらせられた。
国王始め、国の主だった者は王城の大宮廷に集まっていた。
一様に何故、敵がここに来たのか理解できず、右往左往するばかりで有効な指示を誰も出せずにいた。
嵐・守護達は王都ジャガス間近まで迫っていた。
王都警備隊らしき一団、1万程が王都正門より出撃してきた。
アルセイスが冷静な声で
「あの部隊は俺に任せろ」
「先に行け!」
嵐・守護は初めてアルセイスの方を見て
「ありがとうよ、そうさせてもらおう。」
と微笑んだ。
アルセイスはアースウェイグ帝国4聖剣の一振り【天地雷刃 黒晶一文字】を持つ。
代々アグシス家に伝わる秘剣である。
聖剣の厄介な所は、聖剣はいずれも主を聖剣自身が決める事だ。
嵐・守護がそうだったように、アルセイスも【天地雷刃 黒晶一文字】に選ばれた聖剣主なのだ。
【火の民】の前でアルセイス・アスティア・アグシス黒龍騎士団団長は地上に仁王立ちになった。
【火の民】達は左回りに迂回して王都正門を目指す。
アルセイスは心に念じる
(いざ、参るぞ)
(応)と応えがある。
左手の掌を広げて、左腰辺りに置く。
すると、左手の掌から剣の柄が現われる。
右手で柄を持ち一気に引き抜く。
刃渡り1.5メートル、漆黒の片刃直刀が現われる。
名の通り、剣の鍔は『一文字』になっていた。
刃は漆黒だが、水晶の様な透き通る妖しい気を発していた。
【天地雷刃 黒晶一文字】が現われたと同時にアルセイスの上空が真っ黒の雷雲に覆われる。
ジャシス王国王都警護団がアルセイス武神将の目前に迫る。
全員、馬に乗った騎馬隊であった。
口上も警告もなしに迎撃してきた。
(まぁ、俺達が攻めて来たんだから、当然の対応だよな)
などと思いながら、アルセイス武神将は容赦のない攻撃を仕掛ける。
(唸れ、雷神)
DOGON! DOGON! DOGON! DOGON! DOGON!
大轟音と共に無数の雷がアルセイスの上空にいきなり現れた黒雲から、ジャシス王国王都警備隊に次々連続して落ちる。
何百と言う、雷が上空より襲い掛かる。
一撃で何十人もの兵士が一瞬で、人も馬も爆散し消滅する。
血も灰も何も残らず、消滅する。
嵐・守護が右後ろを振り向き
「あいつの攻撃はえげつねぇな」
竜・威が竜騎馬を横に並べて答える。
(族長もかなりえげつないですよ)
と心の中で思いながら口では
「【剣聖】は伊達ではないという事ですね。」
っと、微笑みながら言う所が竜・威らしい、、、
アルセイス武神将の攻撃は、一方的な虐殺と言ってもおかしくない雷撃だった。
数分でジャシス王国王都警備隊は文字の通り、何も残さず、全滅していた。
っと、同時にアルセイス武神将は電撃の様に消えた。
嵐・守護達は王都正門を❘界・爆弾と岩・破砕の一撃で破壊して王都に突入して、王城を目指した。
王都では一般の人々が何事が起ったのかとびっくりしながら、右往左往している中を1千騎の【火の民】は駆け抜けていった。
普通の人にとっては竜騎馬など存在も知らないのが当然、見た事もない生き物なので、竜に跨る赤い戦士の一団と目に写り、まさに恐れるあまりに逃げ惑うばかりである。
【火の民】は高潔な戦闘部族であり、略奪や暴行などをする者は1人も当然だがいなかった。
完全に統制の取れた、部隊なのである。
疾風怒涛の如き速さで、王城迄辿り着き、王城を守る堅牢な門も一瞬で破壊して場内に突入した。
そこで、竜・威率いる、足の速い部隊が次々と竜騎馬の騎乗から消えていく。
すかさず、主のいなくなった竜騎馬を隣の戦士が手綱を持つ。
竜騎馬を育てている【火の民】だからこそできる離れ業であった。
王城前の広場まで来た所で、敵兵が大勢城から出てきて半円形に囲まれた。
【火の民】の進軍は止まった。
嵐・守護は阿修羅丸から降りてポンと優しく阿修羅丸を叩くと阿修羅丸は主の意を酌んだようにゆっくり後ろに下がる。
俺は獰猛に笑いながら、誉武号牙炎を肩に担ぎながら
「命のいらねぇ奴から、かかってきな!」
前方の兵士達が怒声と共に剣を振り上げ、襲い掛かってくる。
血走った目を大きく開け、口を大きく開き、唾を飛ばしながら、何言ってんだかわからない罵声を浴びせている敵兵が目前に迫る。
俺は軽く、牙炎を横に薙ぎ払う。
轟炎が舞い、一瞬で剣も鎧も全て灰と化し吹き飛んだ。
俺は獰猛に笑いながら
「次はどいつだ?」
興奮していた、敵兵の怒気が、あまりの壮絶な光景を目のあたりにして、、、萎えた。
丁度その時である。
竜・威がジャシス国王陛下本人を右手で羽交い絞めした状態で忽然と嵐・守護の横に現れる。
初瀬・燕が位の高い貴族らしい男をこれも羽交い絞めにして現れる。
男は所々、焼け焦げていた。
次々に神速部隊がジャシス王国、高官らしき人物達を捕まえて嵐・守護の廻りに現れる。
一様に、拉致されてきた者は所々焼け焦げていたり、燃え燻っていた。
嵐・守護がジャシス国王に向かって吠える。
「兵士全員に武器を捨てるよう言え」
ジャシス国王が「貴様の様な下賤の者の言う事など聞けるか」
俺はちょっと大きめの火炎爆弾を掌で作り、ジャシス国王の足元に投げつけてやった。
BON!
「ぐわぁー」国王が悲鳴上げる。
爆炎と共に吹き飛びそうになる国王を竜・威がしっかり羽交い絞めにしている。
更に嵐・守護は掌に火球を作り獰猛に笑いながら
「王様の顔をふた目と見れねぇように焼いてやろうか?」
竜・威は心の中で思う
(本気だ、絶対本気でこの人やるよ、、、)
ジャシス国王はもうなりふり構ってなどいなかった。
顔中からしたたり落ちる汗が地面にぽとぽと落ちる。
「わ、わかった、、、」
嵐・守護が火球を国王に近づけ、髪の毛をチリチリ焼く。
国王はこれで完全に落ちた。
「な、何をしている、全員武器をす、捨てろ!」
「は、早くしろ!」
廻りにいた、兵士全員、剣を投げ捨てた。
嵐・守護が続いて言う。
「王様以外に、この国を仕切っている奴はどいつだ?」
バリバリ轟音と共にアルセイス・アスティア・アグシス黒龍騎士団団長が現われる。
「そこの執政長官とそっちの軍務長官、あとお前だ財務長官。」
名指しされた、高官が声を揃えて言う
「ア、アースウェイグ帝国の黒龍騎士団団長、アルセイス卿!」
アルセイスは堂々と大きく通る声で
「此度の貴国ジャシス王国が我アースウェイグ帝国領内に2度にわたり武力侵攻し、国境を侵犯した件で参上した。」
小さな声で嵐に話しかける。
「この後どうするつもりだ?」
嵐・守護が相変わらず獰猛に笑いながら
「俺の名は【火の民】が族長、嵐・守護ケジメを付けに来た。」




