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BU・SI・N・SYO  作者: イ-401号
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竜・威《りゅう・い》体の変調

ついに、皇弟の謀反が片付いたと思いきや、新たな火種が燃え上がる。

俺はいつの間にか、帝都アーセサスで傭兵部隊の千人隊長をすることになっていた。


副官に竜・威(りゅう・い)を選任し、部隊の編成から人選、面接まで面倒くさい事は全部任せた。


俺は帝都アーセサスを見学したり、この間メイラに世話になったので、お礼を真魂交神でしたり、真甦を練り上げたり剣の鍛錬(たんれん)をしていた。


先日、アルセイスに言われた事を心に(とど)めていた。


そして、10日が過ぎた頃、皇帝陛下より呼び出しがあった。


(何事かな?)と思いながら、竜・威(りゅう・い)は忙しくしていたので1人で皇帝陛下の執務室(しつむしつ)と言っても500人は入れそうな部屋に案内された。


その部屋は一番奥に皇帝陛下の(かし)の木でできた、執務机(しつむつくえ)(普通のテーブルの30倍位の大きさはあんだろ)があった。


横には100以上の豪華な椅子が並べられており、その椅子に顔見知りの男性が2人座っていた。


ロリーデ・ガルクス城主とビル・ヘイム卿であった。

俺はパッと嬉しくなり駆け寄った。


「ロリーデのおっさん、ビルさん」


2人に近寄ると、、、


ガチャ!奥の扉が開きアルフィス・アソルト・アグシス国務長官(アルセイスの親父)が入室してきた。


「皇帝陛下のご来室です。」


サッと、ロリーデとビルは椅子よりおり、片膝をつき(こうべ)を垂れ騎士の礼を取る。


相変わらずそういうのが苦手な俺は立ったまま皇帝陛下を出迎えた。


皇帝陛下が入室して執務机の豪華な椅子に腰かける。

(おもて)を上げよ」

皇帝陛下が威厳(いげん)を持って言う。


ロリーデのおっさんとビルさんは(ひざまず)いたまま顔を上げる。


俺はかまわず、そのままだ。


アグシス国務長官が今回のいきさつについて詳細に述べ、俺達【火の民】の活躍を少し誇大(こだい)に説明した。


チラッと立ったままの俺を見て、口元がほんの少しだけ笑った。


最後に皇帝陛下がお言葉を下さった。

「ロリーデ・ガルクス並びにビル・ヘイム、此度両名には皇族内の陰謀に巻き込まれ(ひど)い扱いを受けたこと、心より陳謝いたす。」


「余のほんの気持ちではあるが、両名に金貨100枚ずつ与えるものとする。」


「皇室憲兵隊は解体し、今後 公明正大(こうめいせいだい)で規律を守る為の新しい組織を作る予定である。」


そして、皇帝陛下は椅子から立ち上がり、馬鹿でかい執務机をぐるりと回り、(ひざまず)く2名の前で皇帝自らも両膝を床に付け、


「今回の不祥事は(おおやけ)には出来ぬ(ゆえ)、お主らには公然(こうぜん)と名誉を回復してやる事が出来なんだ」


「どうか許してほしい」


ロリーデがすかさず

「陛下、もったいなきお言葉、どうかお顔をお上げ下さいませ」

「私どもが今回経験した事は我らの人生の中でも(たぐい)無き事でしたが、それよりも陛下にこの様にまでしていただき、感涙(かんるい)(きわ)みでございます。」


皇帝陛下が「許してもらえるか?」


ロリーデ「勿論(もちろん)でございます」


「それに、今回の件で新しき頼もしい友人も沢山(たくさん)できました。」


ロリーデが俺の方を見て微笑む。


皇帝が「そうじゃな、我が息子にも良き友人となってくれる事を望むぞ嵐・守護(らん・がーど)殿」


(そいつはどうかな~あの王子、たぬきだからなぁ~)


俺は「ああ」とだけ答えた。


アグシス国務長官が

「陛下、次のご予定の時間でございます。」


(この王様はとてもまじめに働いているみたいだな)


皇帝陛下が名残惜しそうに「そうか」と言い部屋から出て行った。


始めにビル・ヘイム卿が話しかけてきた。

嵐・守護(らん・がーど)殿、皇帝陛下の前で騎士の礼を取らぬのはどうかと存じますがな」

(そんな静かな声で怒んなよ迫力ありすぎだっつぅの)


「べ、別に悪気はねぇんだけどさ、そういうの知らねぇし、慣れてねぇし、、、」


「陛下も怒らねぇからよ」


ガチャ!俺達が入ってきた後ろの扉が開いて、今度はアルセイスが入ってきた。

「こちらにいらっしゃると聞いたもので、ご挨拶(あいさつ)(うかが)いました。ビル・ヘイム卿、ロリーデ卿」


「なんだ、赤い猿もいたのか」

(こいつ顔は良いくせに口は悪いな)


ビル・ヘイム卿がアルセイスをじっと見て

「また、お強く成られましたな」


アルセイスが誇らしげに言う。

「ありがとうございます。」


「ビル卿に指南されたおかげとそこの赤い猿が暴れると困るので毎日鍛錬(たんれん)しております。」

(まだ、言うのかこいつ、、、)


ビルが静かに言う

「騎士が人の事を赤い猿などと言ってはなりませぬぞ」

(そうだそうだ)


アルセイスが重ねて言う。

「失礼しました。」


「赤い大量殺戮兵器たいりょうさつりくへいきの間違いです。生き物扱いするからいけないのですね」

(こいつのひん曲がった性格は折紙(おりがみ)付きだな)


ロリーデのおっさんが苦笑いしながら

嵐・守護(らん・がーど)殿、此度(こたび)の件の詳細伺(しょうさいうかが)いました。」


「我ら両名とヴォルグス砦の兵士全員を代表しまして、心より御礼申し上げます。」


「アースウェイグ帝国とは無縁の貴殿が我らが祖国をお救い下さいました事重ねて御礼申し上げます。」


俺は「そういうのは良いからよ、俺とロリーデのおっさんは友達だろ、ビルさんは剣の師匠だ、困ったら助け合ういたってあたりめぇなことだろ」


ロリーデが顔をクシャッとして微笑み

「あなたは変わりませんな」


俺は胸を張って

「もし、これ以上(えら)く成ろうと、逆に一文無しになろうと俺は変わんねぇよこれが俺だ」


アルセイスに向かって

「だが、おめぇに言われた事は変えるよう努力しているぜ」


アルセイスは静かに小さな声で

「当たり前だ、頑張れよ」

と言って、2人に挨拶(あいさつ)して退室した。


俺もしばらくアーセサスに(とど)まり傭兵を続けていく旨を伝え、竜・威(りゅう・い)の元へ向かった。


竜・威(りゅう・い)傭兵棟(ようへいとう)の一室に与えられた机の上で大量の紙を乗せ忙しく処理していた。


俺が入出してくるとにこやかに

「お茶でも用意しましょうか?千人隊長」

(なんかこいつ雰囲気変わってねぇ?)


「部隊の編制(へんせい)とかもろもろの手続きは終わったのか?なんか手伝うか?」


竜・威(りゅう・い)はお茶を入れながら

「大丈夫ですよ。もうほとんど済んでますから」


「結局、【火の民】紅蓮の戦士ばっかりですけどね」


「族長の阿修羅丸も連れて来てるそうです。」


「ですから、すぐにでも出動できますよ」


「それより、個人的に相談があるんですけど、、、」

(え、な、なに恋人でもできた?)


「実は、最近僕の体がおかしいんですよ」

(こ、こいばな?)


「もう3日も寝てないのに全然元気なんですよ」

(はい?欲求不満?)


「それに真甦の力が以前より数倍強くなっているんです。」

「見ていて下さい。良いですか?」


シュン!!


お茶を入れていた竜・威(りゅう・い)が消えた。

(俺でも見えなかったぞ)


突然俺の横に、竜・威(りゅう・い)がお茶のカップを持って現れた。


一滴のお茶も(こぼ)さずに


俺は驚いて

「ちょっと待て、どうした?」


初めて竜・威(りゅう・い)の神速を見た時より格段に速さが増して正確性も安定性も別次元のものだった。


能力だけ見ると、別人の様だ。


その時、

コンコン扉がノックされた。


竜・威(りゅう・い)が扉を開ける。


そこにはレィリア・アストネージュ金獅子近衛騎士団 団長が軍装で立っていた。


俺が「ひとんちではちゃんとノックするんだな」


軽く無視されて

「ジャシス王国が不穏な動きをしているそうよ」


「国境に3万~4万の軍を集めているとの事です。」


俺は一瞬で顔つきが変わり獰猛そうに

「上等だ、けじめきっちりつけてやんよ」


「リスティアード皇太子殿下が貴方(あなた)を呼んでますよ」


俺は勇みリスティアード皇太子の所に向かった。


副官である竜・威(りゅう・い)も着いていこうとした所をレィリア・アストネージュに止められた。


「君には話があるんだけど、少しよろしいですか?」


竜・威(りゅう・い)は驚きながら

「は、はい?」


レィリアは優雅に椅子に腰かけ

「どうぞ、貴方(あなた)もお掛け下さい。」


「はい」


レィリアは落ち着いた感じで

「最近あなたの体に変化はない?」


いきなり聞いてきた。


「!!」


(なんでレィリア様が気付いておられる?)


言葉に詰まっているとレィリアが

「安心して下さい。」


「それは、不思議な現象ではありませんよ」


僕は黙って、レィリア様の話を聞いた。

「先だっての高弟謀反事件の際にあなたは負傷し、大量の血液をリスティアード皇太子殿下より(たまわ)りました。」


「リスティアード様の血液は特別な物で、今回の様に大量の血液が体内に入ると、その者の力は数倍から数十倍強くなります。」


静かにしっかりと

「真甦の無い者でも、怪力を持つ事が出来ます。」


「あなたの様に多くの火の真甦を持つ者であれば、飛躍的(ひやくてき)に能力は上がります。」


「あなたは感情より理性を優先するようですから、こうして話に参りました。」


「5年くらい以前の話なのですが、リスティアード様と仲が良かった貴族の帝国騎士が戦場で負傷された際にリスティアード様の血液を大量にその者に分け与えました。」


「その者は(おろ)かにも跳ね上がった能力を過信して反乱を起こし逆賊となり、結局リスティアード様御自身がその者の命を絶ちました。」


「それ以来、皇太子殿下は他人に血を与えません、、、」


「リスティアード皇太子殿下は自分が起こした間違いや信頼していた者の不祥事については必ず他人に任せず、ご自分で決着をお付けになります。」


「そして、その都度ご自身が傷つかれます。」


「正直にお話しします。」


「私はあなたが死んでも構いません。」


「しかし、それでリスティアード様が苦しい思いをされるのは許容できません」


ぎゅっと、レィリアは自分の握った拳を更に強く握った。


竜・威(りゅう・い)はそっと、その拳の上に手を優しく起き

「僕はレィリア様と同じですよ」


嵐・守護(らん・がーど)様の決して折れない剣。」


「この力に振り回されることは絶対にありません。」


「逆にこの力を与えて下さった、リスティアード皇太子殿下に感謝する事はあっても剣を向けることはありません。」


竜・威(りゅう・い)は力強く言い放った。


「お約束します。」


「それに、いくら強くなったとはいえ、僕がそんなことしようとしたらまず間違いなくまず初めに族長に殺されますよ。」


レィリアは優しく微笑み

「あなたなら、大丈夫ね、話せてよかったわ」


席を立ち、颯爽(さっそう)と部屋を出て行く。


1人残った竜・威(りゅう・い)はギュッと握った自分の拳を見つめていた。


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