アースウェイグ帝国第87代皇弟ルグナス・ハルスト・アルヴェス・アースウェイグ陛下
ついにアースウェイグ帝国皇帝陛下と謁見する事になる、嵐・守護と竜・威だが、、、
結局、俺達【火の民】12名はアストネージュ伯爵家に泊まらせてもらうことになり、翌日の昼前までぐっすり寝てしまった。
俺は一晩寝ただけで、真甦も完全充電完了、体調バッチリに回復していた。
直ぐに竜・威の所に顔を出す。
竜・威は既に起きて着替えていた。
俺は心配そうに「もう、立って大丈夫なのか?」
竜・威はにこやかに
「おはようございます。族長、おかげ様でもう大丈夫です。」
「族長にお話があるんですが、よろしいですか?」
俺は不思議に思って「何だよ、今更、、、」
竜・威は昨晩の事をゆっくり思い出して決意を込めて話し出す。
「僕は、今まで族長の剣、折れたら新しい剣が代わりを務めると言ってきました。」
「でも、昨日の族長の涙を見て心に決めたことがあるのでご報告させて下さい。」
俺は涙を流したことを面と言われて、動揺しながら
「な、なんだよ、、」
竜・威は決意を込めて
「僕はもう2度と折れません。絶対折れない強い強い剣になります。」
「ですから、どうか僕の事で心配しないで下さい。」
俺は思わず、また半べそかきそうになり「り、竜・威~」
その時、部屋の扉が開き、レィリア・アストネージュが入って来る。
「こほん、ご友情を深めてる所に水を差すようで、大変申し訳ございませんが、リスティアード皇太子殿下がお呼びでございます。」
俺は照れながら「ちっ!ノックぐらいしやがれってんだ」強がって言う
「だから、行き遅れちまうんだぜ」
レィリア・アストネージュは冷静に
「ここは自分の家です。ノックする必要を感じません。」
「それに、私はまだ23歳、まったく行き遅れてなどおりません。」
「そもそも、レディに対して行き遅れになるなど発言すること自体が問題があるのではないかと思いますけどね」
「赤い髪のそちらの方が、性格に問題がかなりおありなのでは?」
俺はこういうやり取りは嫌いではない。
逆に恭しくされるより心地よく感じさえする。
「ふん、どこに行きゃいいんだよ」
竜・威がクスッと笑う。
俺達は黒曜天宮中央にある謁見の間に連れていかれた。
1万人以上は入れる広さの謁見の間では、大勢の人間が走り回っていた。
鎧をきた、武人から正装姿の文官らしき、かなり爵位の高いと思われる人迄、いろいろな沢山の人が出たり入ったり繰り返していた。
その中心にリスティアード・ローベルム・アルヴェス・アースウェイグ皇太子殿下は居た。
次々と指示を出し、報告を受ける。
俺達が近付いて行くと、皇太子は気付き
「皆、ちょっと休憩にしよう。緊急な事があったらかまわないから取り次いでね」
気楽に俺が話しかけると
「なんだ、徹夜だったのかよ」
レィリアが「無礼ですよ。ここではリスティアード皇太子殿下にもお立場があります。」
皇太子が「今は緊急時だから、かまわないよ」
「それに嵐・守護は完全自治権を保有している【火の民】族長、立場は僕と同等だよ」
俺が気になっている事を聞いてみる。
「今回の件はどうなんだ?」
皇太子が「うん、皇弟が謀反を起こしたなんて言えないからね、皇弟夫妻は不慮の火事で焼死という事になると思うよ」
俺が「おめぇ、始めからそのシナリオで俺に皇弟宮を焼かせやがったな」
皇太子がニコニコ笑いながら
「またまた~そんなことないよ~」
(こいつ絶対、やりやがったな)
俺は確信していた。ッと同時にリスティアードの底の深さを図り切れずにいた。
強い事に関しては、おそらく世界最強だ。
俺や【火の民】5万人、アルセイスにレィリアが束になってかかってもかなわないだろうな、、、
皇太子はニコニコしながら更に話しかけてくる。
「それでね、皇帝陛下が急遽帰国することになってね、君達には陛下が帰国するまでアーセサスに滞在していてもらいたいんだよね」
俺はちょっと気になった事があったんで聞いてみた。
「それって、皇帝と会って事情を説明しろとかいうのか?」
「うん、そんな感じ」
「そうしないと、ロリーデ・ガルクス卿やビル・ヘイム卿の汚名を張らせなくなっちゃうからねぇ~」
「皇室憲兵隊も200名も死んでるしねぇ~」
俺は渋々「わかったよ残ってやる」
「但し、大げさな会見とかは無しだぜ」
皇太子はいつもと変わらず微笑みながら
「わかってるよ~ありがとうねぇ~」
(本当に大丈夫か???)
ーそれから3日後ー
アースウェイグ帝国第87代皇帝ルグナス・ハルスト・アルヴェス・アースウェイグ陛下は2万の帝国騎士団に守られ急遽帰国し帝都アーセサスに到着した。
俺と竜・威はアストネージュ伯爵が用意してくれた礼服を借りて皇帝陛下の呼び出しに応じる支度をしていた。
準備が整い部屋から出ると、レィリア・アストネージュが金獅子近衛騎士団団長の正装した姿で待っていた。
真っ白な鎧姿に大きな白い盾を持ち、兜はかぶらず、白い長いマントを肩から下げ、肩まである真っすぐで豪華な金髪がとてもよく映えた。
その姿はまるで、物語に出てくる軍神の様な出で立ちであった。
普通の人ならば、恐縮するか、見とれてしまうのだろうが、この人は違った。
「馬子にも衣裳とはよく言ったもんだ」
「良く化けたもんだ」
レィリアも負けずに相変わらず凛とした声で
「赤いお猿さん、よく聞きなさい」
「陛下の前では、【はい】か【かしこまりました】以外の言葉は使わないようにするのよ」
「それと、礼儀作法は私と同じ様にしなさい。」
俺は「はい、はい、わかりましたよ」
即座にレィリアが返してくる
「はいは一度!」
「は・い」
(何回このやり取りしてる?)
連れていかれたのは、この間、皇太子と会った謁見の間?だったかな?
中に入ると何百人もの武人、文官が左右に別れて並んでいる。
その場にいる全員の目が嵐・守護と竜・威に注視される。
(やっぱ、だましやがったなあのヘラヘラ王子)
レィリアが先頭を歩き、俺達は後ろを連いて行った。
1段上がった所に玉座があった。
そこに座すはアースウェイグ帝国第87代皇帝ルグナス・ハルスト・アルヴェス・アースウェイグ陛下であった。
陛下の両隣には右側にリスティアード皇太子殿下が左側には正装した文官らしき者が立っていた。
(後で聞いた話だが、執政を執り行う国務長官らしい、しかもアルセイスの親父さんだと)
玉座の後ろには、白い鎧を纏った、金獅子近衛騎士団が20名程横一列に控えていた。
レイリアが玉座より一段下がった所で片膝をつき、頭を垂れる。
後ろの俺達にも同じ様にしろと目配せしてくる。
竜・威はスッと自然な形でレィリアと同じように騎士の礼をとり頭を垂れる。
俺はギクシャクしながら、仕方なく同じ様に片膝をつく。
皇帝陛下がお声をかけてくる。
「余が第87代ルグナス・ハルスト・アルヴェス・アースウェイグ皇帝である」
「面」を上げよ」
俺達は言われたように顔を上げた。
そこには、壮麗の威厳に満ち溢れ、年齢の割には引き締まった体躯をした男性が玉座に座っていた。
長い髪を後ろで束ね、王冠を被り右手に金色の錫杖を持った姿は神話に出てくる神々しさであった。
「此度の事情は、全て聞いた。」
「その方らの活躍で、事なきを得たと聞いた。」
「間違いないか?」
レィリアが俺を振り向き睨む
俺は言われていたように「はい」とだけ答えた。
皇帝陛下は「我弟の事ながら、お主らには感謝いたす」
また、レィリアが睨む
俺は「か、かしこまりました」と答える。
あってるのか?これ?
レィリアが更ににらみ圧をかけてくる。
(もう、勘弁してくれよ~)
リスティアード皇太子が声を発する。
「陛下、よろしいでしょうか?」
皇帝は右隣を見上げるようにして「かまわぬ」と言った。
リスティアード皇太子が朗々と語り始める。
「此度の件で、彼らが功績を上げたのは、先だってご報告申し上げた様に間違いございません。」
「しかし、彼は市井の出で、この様な宮廷の雰囲気やマナーになれておりませぬ」
「どうか、ご無礼を承知で申し上げますが、彼らが普段話しているように話す事をお許しいただけませぬか?」
皇帝陛下が頷き
「そうであったか、それは気付かず済まぬな」
「立って、普段そなたらが話すように話すがよい」
リスティアード皇太子が更に話を続ける。
「陛下にはお耳に入れておきとうございますが、そこなる赤い髪の背の高い青年は【火の民】の新しき族長にございます。」
「嵐、誉武号牙炎を出して」
俺はわからんが言われた通り(来い)と念ずる。
(応)と応えがあり
次の瞬間、俺の右手に2メートルを超す。
両刃幅広の超大剣が眩しい銀色に光り輝き現れる。
皇帝が「お、おお」と洩らし、玉座より立ち上がり降りてこっちに来る。
レィリアがすっと脇にずれ、皇帝に道を譲る。
皇帝が「聖剣【誉武号牙炎】、、、」
「では、お主が新しき【火の民】族長であるか」
俺はお許しが出たので普段通り「そうだ」と答えた。
もうレィリアはこっちを見なくなっていた。
っと、その時アースウェイグ帝国ルグナス皇帝が跪き
「第87代アースウェイグ帝国皇帝として若き【火の民】族長に祖先に成り代わり改めて感謝を申し上げる。」
すると、そこにいた武官、文官その他すべての人間が跪き一斉に
「「「「感謝を!」」」」
唱和する。
(ど、どうした?)
(俺なんか悪いことしたか?)
動揺している俺に竜・威がそっと
「堂々としていれば大丈夫ですよ」
っと話かけてくれる。
また、リスティアード皇太子が話しかけてくる。
(目が笑ってやがる、、、)
「彼の名は嵐・守護と言います。陛下」
皇帝陛下が目を見開き
「嵐・守護殿と申すか!」
「これが、偶然ではあるまいな」
「嵐より民を守護する者」
「此度の件と合わせ、嵐・守護殿には何か褒美を差し上げたいのだが、いかがかな?」
俺はちょっと考えて
「それなら、ロリーデ・ガルクス城主とビル・ヘイムさんの汚名を晴らして欲しい」
「それと、ヴォルグス砦で戦死した家族への手当とヴォルグス砦の修復を早急に頼みたい」
皇帝陛下は「それは当然の事であるな、そうではなくそなた本人の希望はあらぬか?」
俺は更に考えて「特にないな、しばらくここで傭兵をさせてもらってもいいかな?」
皇帝陛下「そんな事であれば、何の問題もないが、何と無欲な、、、それでは」
「陛下!」またこいつが入ってきやがった。
リスティアード皇太子が話に割って入る。
「無欲な者は時に愚鈍に写りますが、彼の人と成りは私が補償いたします。」
「ここアーセサスで傭兵をしたいというなら、どうでしょう、千人隊長としてお雇いになられてはいかがですか?」
皇帝陛下は考え「皇太子がそういうなら、余はかまわぬが【火の民】族長が傭兵隊長とはのぅ、、、」
(いや、千人とかじゃなくて普通の一兵卒でかまわねぇんだけどな、、、)
怒られそうなので黙っていた。




