悲愁《ひしゅう》の皇太子殿下
謀反を起こした、皇弟殿下と雌雄を決するべく嵐・守護達は立ち向かうが意外なことに、、、
嵐・守護は今にも爆発しそうな勢いだった。
そこへ凛とした声で
「お待ちください!」
「嵐!勘違いですよ」
レィリア・アストネージュだった。
「リスティアード皇太子殿下はお仲間を救うために、ここに止めおいたのですよ。」
「皇弟殿下の謀反は、承知しております。」
「しかし、皇弟殿下には1万を超える真甦を持つ騎士がついております。」
「お仲間がいくらお強くても、無事ではいられないと判断し、この部屋に止めおかせて頂きました。」
アルセイス卿が結界を解く
竜・威が駆け寄り
「皆、無事か?」
初瀬・燕が即応してくる。
「はい、気絶させれましたが、危害は加えられておりません」
リスティアード皇太子殿下からいつもの微笑みが消えていた。
「ヴォルグス砦襲撃、ミハム・アストネージュ伯爵子息拉致、ロリーデ・ガルクス郷並びビル・ヘイム卿への罪の擦り付け、ジャシス王国との内通、国境警備隊への贈賄による裏切り功策、そして僕の毒殺未遂、、、」
「全部君達が、 片付けてくれたんだね」
「アースウェイグ帝国を代表して心から感謝するよ」
「ありがとう」
嵐・守護が吠える。
「それだけわかっていて、なんで何もしなかった!」
「どれだけの人間が死んだかわかってんのか!」
リスティアード皇太子殿下は膝をつき
「本当に申し訳なかった、全て僕の責任だ。」
レィリアが割って入る
「嵐、気持ちはわかりますが、リスティアード皇太子殿下もいろいろ手は尽くしていたんですよ。」
嵐はまだ吠える
「お前の弟のミハムだって、いつ死んでいたっておかしくなかったんだぞ」
「ロリーデのおっさんやヴォルグス砦の連中は仲間を沢山失って、その上汚名までかけられて、、、」
「それだけわかっていてなんでだよ。なんで黙ってみていたんだよ。」
「あんたくらい強けりゃ、1人でも全部片づけることもできたんじゃねぇのか!!」
突然誉武号牙炎が
(敵だ)
「!!」
リスティアード皇太子殿下がすっと立ち上がり
「嵐・守護、一緒に来てくれ、今晩全て片付ける」
皇太子宮に兵士がなだれ込んで来た。
数はおそらく2000名は下らない。
嵐・守護が赤髪を逆立てまま
「おめぇ、わざと隙を作って、敵を呼び込みやがったのか」
「だから、正門も閉じず、働いている人間も全て帰宅させ、俺達には完全装備で、、、」
皇太子はいつもの微笑みを向けて物騒な事を言う。
「説明は後でするから、今は剣をブンブン振るう時だね」
「こんな状況だけど、君と一緒に戦えるのは嬉しいな」
嵐・守護は一言
「ふん」
と言った。
竜・威は対応が早かった。
「皆、武器は?行ける?」
初瀬が即答してくる。
「武装は解除されませんでした。いつでも行けます。」
アルセイスがスッと前に立ちはだかり
「俺達の前に出るな」
嵐が即座に
「従え、後衛を頼む。」
竜・威と初瀬が即答してくる。【火の民】の強さの根源である。
「「はっ」」
リスティアード皇太子殿下が今までにない大声で
「前衛はアルセイスと嵐・守護で好きなだけ暴れていいよ。」
「僕を本陣として、直衛をレィリア」
「後衛を【火の民】にお願い」
「敵兵を突破し皇弟宮迄一気に攻め入り」
「反逆者リムネブ・レドイド・ラーム・アースウェイグ皇弟を打ち取る。」
「いくよ!」
その時、私室の扉がバンと開き、敵兵がなだれ込んで来た。
嵐・守護が爆発する。
一瞬で敵兵全て灰塵とかす。
「おりゃ、今めちゃくちゃ機嫌がわりぃんだ!」
「近寄ると火傷するぜ」
皇太子が笑いながら
「洒落になってないね」
嵐が吠える
「いちいちうるせぇんだよ」
皇太子がにこにこ笑いながら
「そんな、冷たいこと言わないでよぅ」
アルセイスは2人をほっといて
「アルセイス・アスティア・アグシス参る」
電光石火の速さで続いて押し寄せてくる敵兵に向かって
剣を抜く。
刃が漆黒の片刃の長剣。
雷が刃に纏わりついている。
ブン!!バリバリー!
アルセイスが一振り漆黒の剣を振るった。
通路にいた敵兵全て一瞬で電撃で体を打ち抜き倒す。
通路は真っすぐ200メートル位あり、そこにいた敵兵全てを一撃で倒したのだ。
リスティアード皇太子が続けざまに声をかける
「さぁ、とっとと行くよ」
嵐・守護の足が炎に変わり窓から飛び出す。
続けざまにアルセイス卿が電光石火で続く
リスティアード皇太子はレィリア・アストネージュと一緒に空を舞う。
まさしく2人共、空中を散歩するように宙を走っている。
リスティアード皇太子は【天の真甦】による効能で、レィリア・アストネージュは【空の妖精】の力を借りてまさに飛んでいるのである。
そして、竜・威ら【火の民】が続く。
竜・威は後方から見ていて
「族長のハチャメチャ振りはよく知っていましたが、それに劣らないどころかそれ以上の人達がこの世にいたんですね」
アルセイス卿と嵐・守護の共闘は正に殺戮と破壊の神の様に激しく凄まじかった。
アルセイスが雷光で何十人以上も貫き
嵐・守護が轟炎で同じく何十人も灰燼に帰す。
この2人を止められる敵兵はこの場所にはいなかった。
黒曜天宮全体が震えるほどの猛攻である。
黒曜天宮下にある、帝国騎士団が気付いて上がってくるのも時間の問題であろう。
しかし超型破りで激しい殺戮者達は止まらない。
一気に皇弟宮まで、アルセイスが先導していた。
雷と炎が黒曜天宮内を渦巻いて、熱風と雷光があちらこちらでまばゆいばかりに巻き起こっていた。
嵐・守護は戦いながらアルセイスの事を観察していた。
(こいつ、まだ本気出してねぇな)
そんな時、誉武号牙炎が
(我もいくか?)
(こんな所でお前を出したら、この城全部ふっとんじまうだろうが、、、)
(そうか、アルセイスが本気になっていないのは城と一般人を守る為か)
(こんな時でも冷静なんだな)
2人は皇弟宮正門前まで来た。
正門に立つ2人の姿は正に鬼神の如し佇まいであった。
直ぐに、リスティアード皇太子とレィリア・アストネージュ、【火の民】が到着した。
正門はしっかり閉められ鍵がかけられていた。
珍しくリスティアード皇太子一歩前に出て、正門に手を当てる
瞬間
正門が弾け飛んだと思った瞬間、消滅した。
何をした様子もなかったのにいきなり分厚い鋼鉄製の扉が消えた。
アルセイスなら電撃で破壊しただろう
嵐・守護なら爆炎で破壊しただろう
リスティアード・ローベルム・アルヴェス・アースウェイグ皇太子は触れただけで、しかも鋼鉄製の扉は跡形もなく消滅したのだ。
「さ、いこうか」
散歩にでも行くようにリスティアード皇太子は歩き出す。
皇弟宮の中にも随分と兵士は残っており、片っ端からアルセイスと嵐・守護が片付けていく。
右から襲い掛かってくる一団に嵐・守護掌から炎を大量に吐き出し、丸焼きにする。
左から別の一団が襲いかかってくる。
アルセイスは冷静にそして静かに漆黒の剣を振るう。
電撃と一緒に爆風が飛ぶ、風圧で敵兵は全員吹き飛ぶ。
皇弟宮の一番奥の部屋に2人は居た。
正妻のリビリアが大声を張り上げて
「何事ですか、この狼藉は!」
「皇太子と言えど、許されぬ蛮行ですぞ」
ぐっ!!
リビリアの背中から剣が突き立っていた。
リスティアード皇太子が冷たい声で
「騒ぐな、下種」
リスティアードの手に握られていた剣をリビリアから引き抜く。
リビリアはその場に倒れ込んで動かなくなる。
リムネブ皇弟殿下がショックを受けて大声で叫ぶ
『リビリアーー!!』
更に冷たい顔と声でリスティアード皇太子が剣で皇弟の首を跳ねる。
「さようなら、叔父上」
首のない胴体から大量の血が噴き出す。
皇弟の首がゴロンゴロンと床に転がる。
リスティアード皇太子が立ったまま話し出す。
「叔父上は僕が小さい頃は自分の子供のように可愛がってくれていたんだ、そんな叔父上が僕も大好きでね、、」
「叔父上の一度目の結婚は幸せそうだったんだけど、相手の女性があまり丈夫じゃなくてね、流行病で亡くなってしまったんだ」
「3年ほど前にあの女と再婚したんだけど、皇帝継承権第2位というのはよほど魅力的だったみたいで、あの女に唆されて叔父上は変わってしまった。」
「僕は正直、皇帝になる事や地位や名誉なんて興味がないんだよ」
「普通にこの国を治めてくれる人がいれば交代してもいいくらいだよ」
「でも、今回の件で後手に回ったのはやはり、身内を打つ覚悟が僕に無かったからなんだ、、、」
突然!!
竜・威がリスティアード皇太子の背中に神速で飛び込んできた。
「あぶない!」
次の瞬間、竜・威の腹に剣が突き立っていた。
「くっ」
バタン!竜・威が倒れる。
嵐・守護が叫ぶ。
「竜・威!!」
先ほど殺したはずのリビリアが薄笑いを浮かべて立っていた。
アルセイスが直ぐ様、リビリアの胴体から体を真っ二つに切り裂く。
気色の悪い声が天井からした。
「ぐぇ、ぐぇ、あと少しでアースウェイグ帝国が手に入ったというのにのぅ惜しいのう」
天上に異様な物が張り付いていた。
顔はリビリアの者だが体は巨大な蜘蛛だった。
体は黒と黄色の斑模様で異様さを増していた。
レィリア・アストネージュが叫ぶ
「傀儡使いの魔の者か」
リスティアードが初めて本気で怒りを表した。
目は金色に光りだし体全身も金色に光る。
「また、貴様たち魔物の仕業か!」
「ぐっ~え~ ま、眩しい」
苦悶の表情をするリビリアの顔をした魔物の蜘蛛。
「消えろ!」
リスティアードから黄金の光が蜘蛛めがけて飛んで行く
ジュッ!!
瞬間で蜘蛛の魔物は消滅していた。
悲鳴や呪いの言葉を発する暇もなくそこには何事もなかったかのようだった。
嵐・守護が叫ぶ
「しっかりしろ!竜・威!」




