敵襲
いきなり【火の民】の族長になれと言われ、戸惑う嵐・守護だが、敵は逡巡する彼を待ってはくれなかった。
俺はベッドであおむけになりながら目を閉じていた。
(メイラ聞こえるか?)
(はい、こんばんわランさん)
(なんか、最近いろいろありすぎてよ~)
(相談に乗ってくんねぇか?)
(ええ、よろこんで)
(誉武号牙炎って、知っているか?)
(ええ、たしか4聖剣の一振りだったかと、、、)
(そいつの主に選ばれちまってよ)
(!!聖剣マスターになられたんですか!!)
(すごいです。すごいです。)
(そうか?)
(たしか30年近く誉武号牙炎の主はいなかったかと、、、)
(っということは【火の民】の、、、)
(そうらしいんだが、あんまピンと来なくてよ)
(そうですか、それで私に相談されてるんですね)
(ああ、こんな話、相談できるのはメイラくらいしかいねぇしよ)
(ありがとうございます)
(【火の民】は元来、紅蓮の戦士と呼ばれる戦闘部族です。)
(嵐さんとは相性が良いように感じますが、、、)
(いきなり5万人以上の長になれって言われてもなぁ)
(今までずっと一人でやってきたからよ)
(・・・・)
(私が言えるのは、嵐さんはいつも一人ではなかったと思いますよ。)
(沢山の人に助けられてここまで来られたと感じます。)
(でなければ、そのような真っすぐなお人柄にはならなかったでしょう)
(・・・・)
(そうかもな、でもみんな死んじまったよ)
(俺が弱かったせいでな、、、)
(嵐さん、、、)
(私は死にませんよ)
(一生共におりますよ)
(ありがとうな、なんか話していたら落ち着いてきたわ)
(今度、俺の竜騎馬、阿修羅丸を見せてやるよ)
(竜騎馬、それは楽しみですね、まだ一度も見たことがありません。)
(たまにはメラの村にも来てくださいね)
(今の嵐さんの真甦の力なら、道はいつでもどこでもつながります。)
(ああ、ありがとうよ)
(じゃまたな)
(おやすみなさいませ)
俺はそのまま眠りについた。
翌朝、竜・威の大声で起こされた。
「嵐さん、大変です。」
「な、なんだ?」
竜・威が鎧を付けている???
寝ぼけた頭でなんか違和感を感じた。
「ヴォルグス砦が攻撃を受けてるようです。」
目がパッと開き、頭がすぐにフル回転し始める。
「なんだと!!」
ガバッと布団を剥がしベットから飛び降り靴を履き鎧を手早く付ける。
表に出ると5柱の4人と30人ばかりが集まっていた。
俺は無視してヴォルグス砦に向かおうとした。
「お待ちください!」
竜・威が止める。
俺はぎらついた獰猛な目でにらみながら
「急いでんだ、邪魔すんじゃねぇよ」
竜・威は迫力負けしないで、睨み返す。
「嵐さん1人が今無謀に行くより、計画を立ててから行動に移った方が、はるかに効果的です。」
俺は興奮して獰猛に言い返す。
「ヴォルグス砦にはロリーデのおっさんや、沢山の友人がいる。」
「ほっとくわけにはいかねぇよ」
竜・威がいなす。
「冷静におなり下さい。」
「状況を聞きましょう」
「5柱【初瀬・燕】敵の規模所属は?」
初瀬がすぐに答える。
「敵兵約1万5千、所属は不明」
竜・威が確認する。
「国境警備隊は?」
「何処も突破された形跡無く、何の行動も見られません。」
「よしっ、初瀬足が速いのをすぐ集めろ」
すぐに初瀬はその場から消える。
そう、初瀬・燕は竜・威に劣らず、神速の能力者なのだ。
「第一陣とする」
「第二陣、5柱【門・夷塚】空を飛べる者を集めろ」
「5柱【界・爆弾】竜騎馬をそろえて第3陣として準備しろ」
「治癒術、医療看護の心得のあるものを集め、護衛200人付け第4陣とする。」
「後詰として5柱【岩・破砕】、氏族もまとめて炎元郷を守れ」
「皆、急げ」
嵐・守護があっけらかんとしている所に
竜・威の突っ込みが入る。
「嵐さんあなたは私と初瀬が抱えて飛びます。第一陣として采配をお願いします。」
俺は動揺しつつ
「おまえらには何の関係もねぇじゃねぇか」
「嵐さんが戦いに行かれるのに、私たちが見てるだけってのはないですから」
「おめぇら死ぬかもしんねえんだぞ」
「大丈夫です。紅蓮の戦士は強いですよ。」
瞬!!
初瀬・燕がいきなり現れる。
「そろったか?」
「はい、約50名炎元郷の外で、待機しております。」
「では、嵐さん号令を!」
興奮しているせいか、焦ってるせいかわからねぇが次の瞬間に俺は叫んでいた。
「し、死んだら許さねぇぞ!化けて出てやるからな!」
「「「「「「お、おう!!」」」」」」
ちょっと戸惑ったような、大勢の怒号が地割れのように響く。
死んだら、化けて出てもなぁ、死んでるし、、、
早朝から、いきなり炎元郷は慌ただしくなった。
戦いに行く興奮と新族長の初陣とあってか、皆赤い髪が逆立っていた。
炎元郷のトンネルを抜けると甲冑を身にまとった兵士が50名、膝をついて待機していた。
竜・威が叫ぶ
「ヴォルグス砦まで20分で行きます。脱落した者は第二陣に合流しなさい。」
「嵐さん良いですか?」
竜・威と初瀬が嵐の両脇から体を抱える。
「行きますよ」
「おうっ頼むぜ」
瞬 瞬 瞬 瞬
一瞬んで、50人が焦げ臭いにおいを残して消えた。
SYUKOOOOOOON!!
景色が見えない。
遥か遠くに見えた木が一瞬後には消えていく。
「リュ、竜・威、お、おめぇいつもこんな速さで飛んでんのか?」
あまりの速さで言葉がうまく喋れない。
「ほぼ、全速ですね」
「め、飯、食わなくて大丈夫か?」
「ちゃんと食べてきましたよ。」
「嵐さんの分も用意したんですが、食べている暇がありませんでした。代りにおにぎりどうぞ。」
片手で自分の懐からおにぎりを出す。
俺はおにぎりを食べながら
「どうして、ヴォルグス砦が攻撃を受けてるのがわかった?」
「毎日定期的に、自治区領内及び周辺を警戒しています。」
「早朝、所属不明の軍隊がいきなり、ヴォルグス砦東南に現れました。」
俺は不思議に思い
「アースウェイグ帝国の国境警備隊は何をしていたんだ?」
「1万5千もの軍が国境を越えりゃ大騒ぎになんだろ」
竜・威は淡々と事実だけ伝える。
「ええ、しかし現在も国境警備隊は何の動きもしてません。」
「おかしいな、、、」
「武勇を誇るアースウェイグ帝国軍が黙って敵の侵略を許すなんてよ」
竜・威は相変わらず淡々と言う。
「しかも敵軍は所属を示す旗や国を表す刻印のついたものは一切付けていないそうです。」
「もうすぐ、ヴォルグス砦が見えてくると思いますが、、、」
遠くに煙が上がっていた。
ヴォルグス砦が燃えている。
竜・威が叫ぶ
「砦の正門が破られて、敵兵が砦内に侵入しています。」
俺の豪奢な赤髪が逆立って獰猛な目が真っ赤に染まる。
「正門は俺に任せろ!」
「竜・威と初瀬・燕達は砦内に侵入した敵を掃討しつつロリーデ城主を保護しろ」
「嵐さん一人で正門を守る気ですか?」
「不安か?」
「い・え」
竜・威が自分の事の様に嬉しそうに
「存分に暴れて下さい。」
「全員散会!砦内の敵を掃討する。城主を発見した者は連絡を!」
「嵐さん落としますよ!」
「おう」
DON!!
1万5千の軍隊の中に突然、嵐・守護が炎と一緒に現れた。
周りにいた敵兵おそらく30名以上は嵐が落とされた反動で吹っ飛んだ。
嵐が着地した地点周辺半径5メートルほどは爆心地のように円形状にくぼんでいた。
嵐が真っ赤な髪を逆立て、獰猛に吠える。
「俺の名は嵐・守護片っ端からかかってこいや!」
一瞬、敵兵は何が起こったかわからず、行動が止まったが、すぐさま相手が一人だけだとわかると四方八方より躍りかかってきた。
「牙炎来い」
「応」
「リミッター切って、はじめっからぶっ放すぜ!!」
「応!」
嵐は足から炎を吹き出し真上に飛び上がる。
「牙炎いっけぇ!!」
牙炎が赤く輝く。
嵐は頭上から敵兵に向かって聖剣【誉武号牙炎】を振り下ろす。
爆炎と共に物凄い衝撃波が放たれる。
ズガアアアアーーーン!
ヴォルグス砦正門周辺にいた敵兵が一瞬で焼かれ灰になる。
その外側にいた敵兵は衝撃破をもろに受け、吹っ飛ばされる。
そして衝撃波の後は地面が大きく二つに割れ敵兵を一気に奈落の底へ叩き落した。
たったの一撃で砦正門前にいた敵兵約2千は吹き飛ばされた。
無人と化した、正門に一人立ち嵐・守護は更に吠える。
「ここを通りたけりゃてめぇの命を払って通りやがれ」
全身からメラメラ炎が噴き出しながら、誉武号牙炎を肩に担いで仁王立ちしていた。
砦内に入った、竜・威と初瀬・燕達50人の第一陣は全員散会して、まず要人の無事を確認していた。
竜・威が真魂交神で初瀬・燕に連絡する。
(ロリーデ閣下の無事を確認するんだ)
(はっ)
(砦内に入り込んだ兵は千弱位か、、、)
すると砦内中央の建物、階段のある踊り場で執事姿の初老男性が敵兵5人と交戦していた。
既に敵兵の屍が累々とあることから相当腕の立つ御仁とうかがえる。
竜・威は神速を緩めて、一瞬で敵兵5人を切り倒す。
「大丈夫ですか?」
初老の執事姿の男性は静かに話しかける。
「かたじけない、【火の民】の方ですな」
「竜・威と申します。」
「ロリーデ閣下はご無事ですか?」
「この上の階層で戦っておられます。」
「私が救援に向かいます。」
瞬!
焦げ臭い臭いを残して、一瞬で消える。
「ご武運を」
ところ変わって黒曜天宮のとある一室
裸の男女がベットで横になりながら話している。
一人は結構壮年風の男。
もう一人は20代と思しきうら若い女。
くびれた腰つきが妙になまめかしく映る。
男が言う
「始まった頃だな、、、」
艶めかしい女が聞き返す
「今度は何を企んでいるのでしょう、、、」
「ふっふっ」
「アースウェイグは勝ちすぎている。」
「南の一部をくれてやろうと思ってな」
「その見返りは何でございますの?」
「玉座だ」
「まぁ、なんて素敵な事でしょう」
「そうなりましたら私は皇后ですね」
「なんと素晴らしい響きでございましょう」
「おほほほ」
陰謀は暗に深く深く進む




