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ボクの異世界侵略記  作者: チカさん
第3章 少年期移住生活編
90/93

3-41 進展2

 夏の下月42日。

今日は本屋の店主さんが言っていた人と会う予定の日だ。


そして俺は店主さんが帰った後大変だった。

もちろん俺と店主さんとの仲を邪推した者達の誤解を解くのが、だ。


店主さんは俺より大分年上なのだが、背が低く体つきも起伏に富んだとはとても言えない体型のため、少し年上のガールフレンドと見られたみたいだ。

そして性質がわるいことに、母の第1審査を店主さんが越えてしまったのが誤解を助長した。第1審査はフェリが淹れたあのお茶だ。

実はお茶という者はこの国では結婚の決め手の1要素となるほど重要なものなのだ。


そういうのもこの国のお茶、所謂ハーブティーなのだが数百種類のハーブから選んだものを家庭ごとに独自にブレンドしたものだ。

大衆食堂とかのお茶は薄味のやつが数種類あり飲み比べて合うもしくはマシなお茶を選ぶんだが、各家庭で何世代にも渡り少しずつ変わりながら受け継がれてきたお茶の味は初味だと吹く事もあるほど独自進化している。

だから基本的に他家のお茶は合わず、合う者は相性が良いとされ母親の審査の1つとなるのだ。


基本的に家の跡継ぎに恋愛婚と言うのはあまりない。なぜなら結婚相手は家同士の繋がりを加味して家長が決定するからだ。だから年頃になると両親が相手探しに奔走し、そして両家の家長同士の話し合いで後は決まるって訳だ。

つまり母の審査は既に始まってるって事さ。

ちなみに、跡継ぎ以外の両親の対応は他家に輿入れさせるか放置かに分かれる。


誤解は解くのは母がしつこく邪推を続けたが、最終的には店主さんの大体の年齢を伝えて漸く誤解を解くことに成功した。


今度からラックにはもう少し優しくできる気がした。



 大型商店にやって来た。ここはいつ来ても賑わっているな。

そして本屋にはカウンター以外に商談スペースが無いため、今日は店主さんの家の事務スペースで会うことになっている。


階段を上り目の前には店主さんの家の扉。何時もと違い足が重い。


ノックをするとすぐに店主さんが顔を出した。


「こんにちは」

「いらっしゃいウィル君」

「相手方は?」

「もういらしてるわ」


あら早い


部屋に入ると前の時と内装が変わっており、扉近くには机と椅子が置かれたスペースが出来上がっていた。


「こんにちは、どうやら遅れてしまいましたかな」

「こちらが早く来過ぎただけですよ」


確保されたスペースの椅子にはかなり年を召した老人が座っていた。先代、つまり店主さんの祖父世代に親交があったらしいから見た目相応の年だろう。

うん?・・・うーん。


「こほん。ウィル君、こちらの方がこの紙を発明した人への紹介を申し出ているヴェルトリーさんです。ヴェルトリーさん、こちらがその発明家の方と親交があるウィル君です」


少々不躾に見てたかな。

店主さんの紹介で礼をして席に座った。



 挨拶もそこそこに本題が始まった。


「少々儂の話を聞いてもらいたい。儂は長年後人を指導する立場にいた者じゃ」


この老人は教職関係者かな?


「後人を指導するうえで今まで様々な知識を蓄え、実証のため実験も重ねてきたが、此度見たコレは実に有意義なものじゃった」


そう言うと老人は荷物入れに手を入れ、


「今出来上がったのはこれじゃ」


差し出してきたのは何と紙だ。なかなかのジャブ。


「拝見しても」


老人が作った紙を検分した。

少々厚くバリバリでポロポロ剥がれるが、俺が作っている紙と大体似たようなものが出来上がっている。


・・・凄いな。

何がすごいかって、それはその期間だ。

確か老人が帰って来たのは今年の交易団に随伴してだから帰って来てまだ30日に届いていない。色々移住に関することをしながらだから実質10日から1週間でここまでの品を作ったってことだろう。


「それは、発明者(・・・)の君から見てどうかな?」


・・・・・・ふむ。


チラリ


ふむ、・・・まっいっか。


「後は調整です。それにしても顔が広いですね」

「長く生きとるとな、よくもわるくも知り合いが増えるものでのぅ」

「「・・・・・・」」


当たりか。流石に1週間やそこらでこの出来は相当だ。


「ちょっと待ってください!今の話はあたかもウィル君がこの紙の発明者の様に聞こえたんですが」


店主さんを無垢な瞳で見てみよう。


「・・・・・・本当なんですね」


あら失敗。


「な、何で教えてくれなかったんですか。まるで私道化みたいじゃないですか」

「たしかに」


ごめんねぇ、あとで立派な建前考えとくから。


「それであなたは、ボクに何を聞きたいんですか?」

「初めは純粋にこの品に興味があった。だが今はお主に興味がある」


蔑みの目でこの老人を見よう。ホかペか知らんがこの老人とは金輪際会う事も無いだろう。


「・・・何か勘違いしとらんか」

「か、勘違いって、それはそれは、へへへ、あっしなんてあなた様が目をつける程のもんじゃぁありやせん、じゃああっしはこれで」


席を立ち後ろを見せずに後退していると、


「あのぅウィル君、ヴェルトリーさんはそう言う意味で言ったわけではないと思いますが」


ヒィィ!店主さんは腐ってたぁ。



新たなる事実に俺は戦慄を覚えつつ、話し合いは1度ご休け、休憩に入った。




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