3-35 順調?な復旧
雪解けの時季になった。
避難してきた家庭の人達は慌ただしく動き始め、元から居たうち等は例年ならせいぜいちょっと早めの農具点検の時期なのだが、今年はそうも言ってられないので動き始めた。
うちは畑の除雪作業とフーホーの収穫植え付け作業だ。今回は種イモ?がどれ程手に入るか未知数のため、まずは出来るところからだ。
畑の除雪作業は普通なら灰を撒いて太陽に任せるのだが、今回は魔術でゴリ押しすることになった。
方法は簡単、広い板を用意して雪の上に載せ、魔術で板を温めるだけだ。リュートのあの方法を参考にした。
そして溶かした箇所に雪を寄せて全体的に薄く雪が積もっている状態にする。さすがに畑全体をカバーするには魔力が足りない。
もちろんフーホーが植わっている場所は避けているよ。
フーホーが植わっている場所は自然に任せ、収穫出来次第植え付けもできるように、予め耕しておくっていう算段だ。
「兄ちゃん早くー」
板の上に重しとして載っているリュートに急かされつつも順調に除雪作業が続けた。
数日もするとまず使う分の畑の除雪もすっかり終わり、俺は小型管理機で耕起作業を、母とリュート、フェリが収穫植え付け作業をすることになった。
「じゃあ、ボクは先に出るから」
耕起作業の俺は少し早めに家を出て作業を始めた。
畑を数往復した頃他の者がやって来て収穫作業を開始した。
「ここはもう大丈夫~?」
「耕し終わってるー!」
収穫も植え付けも今の所順調だ。
だが前と同じ様に戻るまでには一体どれ程の時を要するのだろうか。
今年1年は余裕がないのは間違いないが。
春の上月に突入した。
区の全ての人が農作業に従事しているのではないかと言うほど作業している人が多い。最外区からの避難してきた人達で、直ぐには帰るに帰れない組が休耕地を支給され農作業に従事しているのだ。
うちの家屋群に避難してきた家庭の内1家庭は既に出て行った。それはあの姉弟の家庭だ。
冬の間複数回に渡り行われた野外くん・・・コホン、カマクラプチパーティーで更に少し仲良くなった。その友人が居なくなるのはやはり思うところが無いわけではない。
他の2家庭はもう少し残りそうだ。復旧作業は最外区の方が優先順位が高いので、この区から避難してきた家庭の方が後になりそうだ。
そして小型管理機達はそれはそれは目立った。
小型管理機もお披露目から早2年半。2年前にはうちを含めて3家庭のみが所有していたこの道具も、いくつもの家庭がネックだった魔力量を増やすことに注力し、今や畑隣りさんの家庭も持っている状況だ。
この周囲だけで目立っていたこの道具は多くの従事者の目にとまり一気に認知度を上げた。あの効率は魅力的に見えたのだろう。
だが実態は消費魔力がある程度多いので使える人は少ない。
痛し痒し感慨深いものだ
「厳しいわね」
「あぁ、やっぱり」
畑に関する家族会議で、残りの畑に植えるフーホーの種イモ?集めをしている母から芳しくない報告が上がった。まぁそうだとは思った。
「見直しが必要ね」
「農林業者協会に行って種を何種類か調達する?根菜なら何とか手が回るよ」
「もうほとんど残ってないと思うわ」
「・・・だよねぇ」
都市政府が休耕地用にある程度買い占めてるだろうな。
非商業用の畑位なら再生栽培とかである程度補充できるが、商業用の畑はなぁ。
「もう残りは遊ばしとくしかないのかしら」
「うーん、そうだね」
その後もほぼ母と俺だけで進んだ話し合いは結局益のある話がでなくて、畑を放置しておく事になった。
勿体ないが早くても半月はそのままだな。
例年になく暇な春を迎えた。
ただ建材関係が高騰しているため、木工をしたりすることは出来ず、建て替えすることに決まった倉庫もしばらくそのままだ。
普段農作業に多くの時間を割いていた俺とリュートはとにかく暇になり、多くの時間を武術訓練に割くようになった。魔術訓練と勉強はフェリと一緒だ。
そして冬の間方向性を探っていた魔術槍士についてだが、魔術と槍術の両立は難しく別々の運用が精々で、唯一武器に硬化の魔術を掛けて戦うのが、それっぽい程度だ。
今はその硬化の魔術を武器に永続的に掛けつつ戦闘技術を磨いている。魔闘技と呪文省略の2つの高等技能を行使するのはまだ動きがぎこちなく、スムーズに動けるようになるのが目下の目標だ。
しばらく日が経ち、訓練の合間を縫って本屋さんに来た。
襲撃で無事だった紙は冬の終わり前に少しでも現金を手に入れるため全て卸し、本日の目的は始まった貸本サービスを利用してみようと思ったからだ。
「いらっしゃい」
「こんにちは」
「本日はどのようなご用向きでしょうか」
「本を借りようと思ってまして」
「はい、ありがとうございます。それではこちらへの記入をお願いします」
貸本業を始めるうえでいろいろルールが設定された。
本を借りるにはまず、氏名や住所などの個人情報を登録しする必要があり、それに登録証発行手数料として担保金を予め徴集する仕組みを取り入れた。
本の方も貸本用に標準ページ数を決め、それから大きく逸脱する物は章毎とかに分割再製本された本だ。
1度に借りれる本は2冊で1週間からひと月までの期限設定、他にもこまごまあるが違反行為をしなければこれ位知ってれば十分だ。
登録をして歴史関係の本を2冊借りた。
店主さんが本当に第4層なんだ、と言ったのが印象的だった。そんなに俺は第4層の住人として可笑しく見えないのだろうか?そしてそんなに信用されていなかったことに愕然とした。
つまり店主さんをもう少し弄る必要があるという事が確定したという事だ。
訓練と読書、授業で日も流れ、漸く新たな種、略して新種が手に入る時期になった。
畑も遊ばしている間に堆肥場で作った堆肥や購入した糞系堆肥をいつもより多めに鋤きこみしておいた。時間に余裕があったからもう十分馴染んでいる頃だろう。
種の入手順に蒔いたら世話や収穫が大変な事になりそうなので、しばらく貯めていた結果、成長が早くほぼ年中取れる葉菜類を幾つかとカブの種を入手できた。
「カブは今からでも大丈夫だけど、そうなるとこれと時期が被っちゃうからこれは夏が良いんじゃない」
とか、
「でもそうなるとフーホーと時期が被るわ、種の量が不足してるからフーホーを優先するべきよ」
など、作物の種類が増えると大変なスケジュール調整を家族全員で意見を出し合って行い、何とか及第点だと思われる案に沿って今年の農業計画が立てられた。
さぁ明日からまた頑張るぞ。




