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ボクの異世界侵略記  作者: チカさん
第3章 少年期移住生活編
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3-32 復旧作業と冬の準備

 復旧作業初日。


「じゃあ、行ってくるわ」

「いってらっしゃい」


母とフェリは父の所へ見舞いに行った。怪我の詳細や家長の判断を聞きに行くのだ。

最悪冬の間はこの家を放棄することを視野に入れないといけないからだ。

家は冬までに補修できるとは思うが、問題はその資材が手に入るかだ。

食料についても同じだ。

幸い現金はそれなりにあるので、第3層にひと月位部屋を借りる選択肢もある。



 2人が見舞いに行っている間、俺とリュートは壊滅状態の畑へ出て食い散らかされた作物の廃棄作業に従事した。


「はぁ、やるせないなぁ」


中には一昨日、つまり襲撃があった日に植えたばかりの分まであり、本当にやるせない。


だが空を見上げると最外区ではまだ煙が上がっている。情報は流れて来ていないが、あちらの区はもしかしたら一時封鎖されるかもしれん。そう思うとまだマシな被害かな。っと慰めることはできた。



 畑を回わり廃棄処理をしていると母たち帰って来ているのが見えた。父の判断を聞くため1度戻ろうか。


「リュート、2人が帰って来たから1度戻ろう」

「うん」







「じゃあ冬の間もここで過ごすんだね」

「ええそうよ」

父の判断は残留だった。

父の怪我は聞いた通り全身咬み傷だらけで、一部肉体が噛み千切られていたそうだ。

日常生活はまだしも、復帰までには相当時間がかかるという話だ。

そして、ラードラットは致死率の高い病原菌の保有は確認されてないそうだが、咬まれて数日間微熱と幻聴が続く感染症の症状が出ているらしく、母は今夜治療院の方で泊まるそうだ。





「じゃあ、あとはお願いね」

「うん、父ちゃんによろしく」

近くで資材を出来るだけそろえた後、母は荷物を持って治療院へ向かって行った。


残った俺たちは、


「じゃあ、ボクとリュートが家の補修で、フェリは部屋の片付けで良いかな?」

「畑は後でも良いの?」

「畑は雪が降るまでに終わればいいから、あとあと」


役割分担を決め、それぞれ作業に取り掛かった。

ただでは起き上がらん、これをいい機会だと思ってリュートにいろいろ教えよう。



 穴だらけで一部崩れた土壁の所にやって来た。


「じゃあ、ボクの動きを見ておいてね」


崩れ積もった土壁の土と買い足した土壁用の土を水を入れて執拗に混ぜ合わせた。

ちっ、土壁用の土は自作すると出来上がるまで数日かかるので今回は仕方なく買ってきた。あの商人め、足元見やがって。


執拗に混ぜ合わせた土を持って、今度は穴が少ない土壁の所へ移動した。

「あっちは」

「あっちは損傷が激しいから、一から直そうと考えてる」


あっちは土壁の基材が損傷していて、穴埋めだけじゃまるで足りないため後回しだ。


土壁の穴に団子状の塊を嵌めこみ手で周囲と馴染ませた。


「こんなもんかな。リュートもやってみて」

「うん」


リュートの穴埋め作業を見守った。


「・・・よし。これでどう?」

「うん、それで大丈夫だよ」


その後いくつかの穴を埋めさせ、土の混ぜ方も見た後、もう任せても大丈夫だと思いこの穴埋め作業を任せた。

土壁の補修は、この穴埋め作業後乾くまで放置しておいてその後複数回の塗り重ねする。とても時間がかかる作業で最初に取り掛かったのだ。


穴埋めをリュートに任せ俺は製材に取り掛かった。

あの商に(以下略)



 復旧作業2日目。

この家屋群に人が増えた。

家が焼失、倒壊した者たちを中心に仮住居としてここの空き家を紹介されてきたのだ。


その時に、集団でこちらに向かって来てたから男衆総出で武装して彼らを迎えるなどのトラブルが起きた。

だが、連絡を受けていないので彼らの言い分を信じるわけにはいかなかったと言う事情があり、結局役人が来るまで膠着状態が続いた。


おかげで復旧作業がちっとも進まなかった。



 復旧作業3日目。

昼ごろ、両親が帰って来た。

父は上半身全てと左脚に包帯を巻いていてまだ療養が必要だが、無事な姿が見れてほっとした。


治療院から軽症と言われての強制退院だったそうだが、これで軽症とは。一体どれ程の人が治療院に運び込まれたのだろうか。



 復旧5日目。

昨日までの作業で家の軽微な損傷は大体補修し終えた。

だが、


「これが問題なんだよなぁ」


俺は倉庫の前に来て呟いた。

倉庫が特に損傷が酷く、穴だらけの土壁に大きく齧られた柱。

資材ももう心許ないし、いっそ壊して倒壊の危険性を下げるって手段も視野に入れるべきだろうか?

父の判断が待たれる。



 復旧6日目。

今日で今週も終わりだ。


復旧作業はとりあえずここまでにして、今日から本格的に冬籠りのための品を集めることになった。

この区で手に入る食料は政府からの配給分を除いて、ぼったくり価格で提供されている。と言うわけでもなく、例年より少々お高いぐらいだ。

一応この国の食糧庫と呼ばれた程の食料生産量を誇った都市だ。今は都市数が増えたことで食糧庫という印象が薄くなりつつあるとはいえ、1つ2つの区が全滅したところでまだまだ余力はある。


父もある程度回復し、家族会議が開かれた。



「今年の冬はサウナを控えるか」

「いやいや、父ちゃんさんよ。サウナは魔術に頼ってるから別に減らす必要はないんじゃないかな」


家族会議の中で燃料の話になり、入浴回数を減らそうと言う父に俺が反論している。


「その変な呼び方はいいとして、今年は家の中の暖房に魔力を割いてほしいんだが」

「家ぇ?もつかなぁ」


昨年の春に気付いたが、俺の魔力量は既に両親の魔力量を超えている。特にサウナや風呂を沸かす様になってからそれが顕著になってきた。

それでも家1軒で、四六時中ともなると中々に厳しいと思う。


「もちろん火を焚くのと併用してだ。家族全員でのつもりだがウィルの負担が1番大きいだろう」

「・・・・うーん」

「難しいか?」

「と言うより魔術を掛ける対象が無いんだよね」

「対象か。・・・・・確かにサウナ石は今の量じゃ少な過ぎるな。買い足すか」

「土台も一緒にね」

「ああ」


今年は家の暖房も魔術である程度代用することになりました。



 日が少し経ち、襲撃から今日で10日。

うちは倉庫を除いてすっかり復旧作業は終わった。

倉庫は来年まで放置と言うことになり、そのため冬籠りのための物品は空き部屋兼工房兼物置予備の部屋に置くことになった。

今の所冬籠りのための食糧は順調に集まっている。ただ例年に比べ値段重視で集めているため品数が少ないのが残念なところだ。


そして調達は母たちに任せ今日から農作業に従事することになった。

燃料費とサウナ用の石と土台の差分から捻出した資金でわずかながらも畑分のフーホーを用意したのだ。フーホーは例年この時期にも植え付けているのでまったく問題ない。



 うちは復旧も冬籠りの準備も十分順調だ。

しかし、家屋群、区全体を見るに復旧が順調とは言い難く、応急処置の家やいつの間にか人の気配がしなくなった家も出てきた。


うちの家屋群ではお隣さんたちはそれなりに順調に準備を整えている。この区の特殊性で少なからず現金があったのが少なからずプラスに働いている。

だがどうしても来年の畑の収穫は減るだろうな。


そして仮住居として来た者を紹介しよう。

3家庭15名位だ。

位というのは1家庭は元々この区の家庭で、見たことはある人たちで、もう2家庭は最外区からの者でこっちは奴隷を幾人か連れている。

この奴隷の数が来た当初に比べ減っているのだ。口減らしと資金調達だな。

これからも変動するかもしれないから位だ。


この3家庭はもちろんうちより優遇が大きく、冬は越えれる程度には準備が進んでいると思われる。

まぁこの3家庭はある程度余力があるから1戸建てにそれぞれ住めているわけで、余力のない家庭は1軒に数家庭押し込められて生活しているのが現状だ。


今の所今冬は餓死者や凍死者は出ないと思う。もちろん不注意や事故、事件などは省いてだ。


俺の周りはこんな感じだ。



冬までもう日もない、しっかり準備を整えるぞ。




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