3-20 見つけた
本日は噂にまでなった大型商店でウィンドウショッピングと洒落込み、骨董品店でたまたま店主の方を見て俺は驚いた。
あったのだ。
あったのはあれだ。
本だ。ほん。ブック。
本は昔探したけれど俺の生活圏内には一切扱ってるところが無かった品だ。第2層には図書館も本屋もあるらしいが、あそこは普通の一般市民じゃ入れん。だから諦めてた。
それが店主の横に無造作に積んであったのだ。
気になる。
あれは文字を覚える学習本ではないだろうけど、あれぐらい大量にあるんだ。あの人のネットワーク上にはあるかもしれん。
値段にもよるがもしかしたら取り寄せもできるかもしれない。でも本って骨董品だっけ?
「ん、どうしたんだウィル?」
「ここで見たい物が見つかってね」
「こんにちは。少々伺いたいことがあるんですが」
暇そう(俺目線)な店主に声を掛けた。ままよ。
「どうした坊主。何か入用か、それとも何か売りに来たのか」
売ることもできるんだ。
「いえ、それが売り物かどうか聞きたいんですが」
指差した先には10冊程の本。
「これか。坊主はこんなものに興味があるのかい」
「ええまあ」
「わるいな。これは担保で預かってるだけで売り物じゃないんだ」
残念。だが、
「ちなみに、それが商品になる日と、いくら程になるか聞いても大丈夫ですか?」
担保ってことは期日があるってことだ。
「買う気満々だな。・・・これって貴重な本なのか」
・・・おい。
「知らん。本をたまたま目に入ったから来ただけだ。本屋がないからな」
ジト目で店主を見て、口調が荒れてもこれじゃあ仕方ないよな。
「本屋がない?本屋ならあるじゃねぇか」
「はぁ?第2層にはあるみたいですけど、あそこってただの人は入れないじゃないですか」
「違う違う、ここにあるじゃねぇか」
そう言って店主が指を指した方を見ると、・・ここ?
「?ここは本屋じゃなくて本を置いてる骨董店ってだけじゃないですか」
「ここじゃなくて、うん」
指先は変わらず下を指している。・・・・した?まさか、
「この下?」
店主は頭を振り肯定した。
「はぁ!!」
さんざん探して見つからなかった本屋がこの下の階にあるだと。ウソだろ。
「うっせぇぞ坊主。ここに用が無いなら行った行った」
「階段何処?」
店主はしゃくって示した場所には・・・階段だ。ぜんっぜん気付かなかった。それに、
「何あの・・・・看板?」
「よく分かったな。ああ看板だ」
位置的に看板ってなんとなく言ってみただけで、あれが本当に看板だと。
材質はその辺の店でも良く見るプレートだが、明らかに文字数もおかしい。
商店名は、人名プラス何々店って命名が大多数なためこんなに長い商店名は初めてだ。それに付随して1文字1文字は小さい。
明らかに看板の位置にあるだけの何かしら彫られた板にしか見えん。これ店?ってなる店構えだ。
「俺も言ったんだけどな。うちではこれが伝統だって聞いちゃくれなくてな」
「あら、結構親しい間柄」
「・・ああ、・・・・・・・
地下に降りてきました。
どうやらこの扉の先の本屋及びさっきの骨董店はここが大型商店になる前からここで商いをしていて、大型商店にする上でハーメルトイン商会が筆頭ってだけで共同出資者って感じらしい。
それで件の本屋だが元々は爺さんが商いをしていたそうだが、大型商店としてオープンして少し経った頃ぽっくり逝ったらしく、今はその爺さんの孫娘が継いだそうだが、あんまり上手くいっていないそうだ。
本なんて元々ニッチな産業で細々商ってたそうだが、爺さんの時には第2層に複数顧客を抱えていたそうだ。
だが代が変われば客も変わる。今の店主はやり手ではないようだ。
それで骨董店の店主はその先代の爺さんに世話になったそうで今度はその孫娘を陰から支えてるって感じだ。
いやーあの店主、語りだしたらぜんっぜん逃がしてくれなくてそんな裏話まで聞いちゃったじゃないか。
本屋の扉を開けると、
「暗いな。・・・・こんにちは~」
「「・・・・」」
なぜか暗いと声まで小さくなっちゃうんだよなぁ。
「いっらしゃいせーー!」
うぉ!!
真っ暗な中から突然人が走ってきて、目の前で止まった。
「お客様本日はどのような本をお求めですか?私のオススメとしましたらこの『ヒンメルとエレオルンの赤い花』などいかがでしょう。貧乏農家出身のヒンメルと・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ふむ、凄まじいマシガントークだな。聞くに恋愛小説みたいだが俺の興味の範囲外だ。それにしても継いだ孫娘というのがこういうタイプか。これでは売れんだろうなぁ。
件の孫娘が途中から俺たちそっちのけで目をつぶり本を抱きしめて語っていたが、とりあえず無視してわきを抜けて店内に入った。
暗いのは本のためだろうと、光の魔術の光量を抑えて発動し、奥へ向かった。
文字はあまり読めないが商店名に使われることが多い人名系とか数字は読めるため、テキトーに物色していると、
「・・・・ってところです、どうですこ・・の・・・・おきゃくさーーーん!!」
そう言うと店を走って出て行った。俺たちが店側にいるのに気付かなかったのか。・・・残念な娘だ。
本の挿絵からどういう系統の本でどのあたりにかたまってるか分かりだしたころ本屋の店主が帰って来た。後ろには骨董店の店主もいたが。
本屋の店主は涙目、いや泣いた後か。
ここはひと肌脱がなくては男が廃る。・・・・うーん。
「こほん。・・・・イラッシャイマセー。ホンジツハドノヨウナホンヲオモトメデスカ?ワタシノオススメトシマシタラコノヒンメルトエレオルンノアカイハナナドイカカガデ・・・・」
ぶわっ
・・・あれ?おかしいな。
本屋の店主に泣かれ、骨董店の店主には追い回された。
うーん、何が原因かな?ジェネレーションギャップ?
追われながら、
「そう言えば・・骨董店の店主よ・・店は大丈夫なのか」
ここに来たってことは店は放置してきたんだろう、と心配して声を掛けると、
「ふん、・・お前が・・逃げなければ・・・もうとっくに・・・帰っとるは」
「へー・・そうなんだ」
「ああそうだ・・・だから逃げるな」
・・・仕方ない。止まるか。・・・・・空中で。
素早く携帯していたメモ帳を地面に落として乗り、魔術を発動して地上からおさらばした。
そして天井付近で止まり、
「もう逃げてはないよ」
そう宣言した。
「ちっ、小賢しい真似を、下りて・・・
骨董の店主は近くにあった台を持ってこちらに投げようとしてきた。
こい・・・あれ」
あっぶなぁ。とっさに台に魔術を掛けて何とか空中で止めることができた。
「この「2人ともやめてーー!、私のために争わないでーー!」
本屋の店主が登場。
?_?私のため。・・・つまり俺が追われたのはあの女が元凶か。
「ロディ。だが」
「いいんです。ただ私が未熟だっただけで」
本屋の店主の愛称ロディって言うんだ。
こうしてとりあえず、何となく本屋の店主のために俺と骨董店の店主が争ったらしい争いは終結した。




