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ボクの異世界侵略記  作者: チカさん
第3章 少年期移住生活編
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3-21 本屋改善1

 本屋での争いも終わり、その本屋の店主のロディことクロディーアさんと互いに挨拶をした。

クロディーアさんは今は落ち着いている。どうも俺たちは約1週間ぶりの客だそうで、張り切った結果があれという事だったらしい。

この大型商店の中の不人気区域とはいえさすがに少なすぎるだろ。事実、1階の骨董店の前は通り抜ける者がほとんどはいえそれなりに人通りはあった。

多分認知されてないんだろうな。階段の位置とあの看板が足を引っ張ってる感じだしな。


「それでどのような本をご希望でしょうか」

「文字学習用の本ってありますか?」


「文字学習用の本ですね」

クロディーアさんが立ちあがり、数冊を本を棚から引き抜いた。


「こちらが文字学習定番の『0からの王国語入門』です。シリーズ本で全3冊からなっています」

その3冊か。

「中を拝見しても」

「はい」

本を開き、中を覗き込んだ。


ふむ、軽く見ただけだが確かに文字学習向けの本だな。


「確かに。これはお幾らで」

お願いだ、手に届く値段であってくれ。


「はい、1冊20ティカになります」

・・・無理。


「・・・どうやら今回は縁がなかったみたいです。貯めてからまた来ます。お邪魔しました。2人とも帰るよ」


ガシッ


後で暇そうにしている2人と共に店をあとにしようと振り返り踏み出そうとした時、肩に手を置かれ待ったがかかった。


「あの・・店主さん、これは?」

「買っていってくれないんですか?」


「あいにく手持ちが無くて」

「19ティカ。1冊19ティカで前金も5ティカでいいですからお願いします。買っていってください」

あー、商売上手くいってないらしいからねぇ。骨董店店主に金を借りてるみたいだしなぁ。・・・ん?前金?


「前金ってなんですか?」

「前金ですかぁ?前金は前金です。・・・もしかしてこういうお店初めてですか?」

「はい」


クローディアさんから本屋のシステムの説明を受けた。

曰く、ここに置いてある本は見本で、売る本はこれの写本なのだそうだ。

写本の在庫がある場合はすぐに購入できるが、在庫が無い場合には写本師に依頼して用意する必要があるそうだ。

ちなみにここの本は文字についてはクローディアさんが写本しているそうだ。というか本業が写本業らしい。挿絵は絵師に依頼してるそうだ。

それで写本作業費用として通常は売値の半値が前金になるそうだ。本代が20ティカの場合、前金10ティカってことだな。


なるほど、そう言うシステムか。という事は分かったが、結局19ティカだ。

いろいろ試作して散財したから今は無理だ。来年だな。


「説明ありがとうございます。ですが、少々ボクには手に届きそうにありません。申し訳ありません」


俺の言葉に店主が望みが絶たれたって顔をして肩を落とした。

ごめんね貧乏で。


「それで少し聞きたいんですが、ここは貸本業とか図書館みたいな閲覧業はしてないんですか?」

「貸本に閲覧ですか?」

「あっ、その反応、してないみたいですね。すみません、では今日はありがとうございました。またいつか来ます」

はぁ、こちらも望みが絶たれたってところか。


ガシッ


踵を返すと店主がまた俺の肩に手を置いて行く手を阻んだ。俺の肩はあんたの手置きじゃないんだが。


「・・店主さん。これは?」

「その話詳しく聞かせてもらってもいいですか?」


「うん?詳しくも何もそのままの意味ですよ。写本を直接売買するわけではなく、貸本は日とか週単位で本を貸して賃料を、閲覧は本の閲覧料っと言うか日単位で入館料を頂くんです」

「でも本を盗られたり、汚されたりしたらどうするんですかぁ」

「汚されたりしたとき用に賃料とかと別に担保を先払いで払ってもらい、返却時に特に汚れや破損がなければ担保は返還って寸法です。貸し物業とか図書館のやり方ですよ。

盗難については売買にしても一緒だからそれは別の問題だと思いますけど」


俺の言葉を聞いて店主は何か考え出したので、・・・帰ることにした。

次来た時には買うぞ。散財に気を付けなければ。



 踵を返して、2人を連れ部屋の外まであと1歩と迫ったその時。


「ちょっとまってーー!」

見つかったか。それにしても声が反響してものすっごいうるさい。


「そうだん。あなた相談に乗って」

店主は俺のもとまで走ってきて、今度は両肩に手を掛けてそう言ってきた。


「相談?」

「そう、相談」

「・・・何の?」

「この店をもっと流行らせたいの。でもどうやっても上手くいかないの。お願い、あなたの知恵を借して」

こんなガキンチョにそんなこと言ってくるなんて、なりふり構ってられない程経営状態わるいんだな。


・・・・・さて、どうしようか。

俺自身経営に関して人にアドバイスできる程経験もない。だから多少罪悪感はあるが断りたい。

だがこの具合からいって金が貯まる来年まで、はたしてこの店残ってるだろうか?ここが潰れたらもう本屋を見つけることができないかもしれん。・・・いや、


「少々聞きたい。ここ以外に第3層に本屋ってある?」

業界人なら他の店も知ってるかもしれん。鬼畜?聞こえんなぁ~。


「なんでそんなこと聞くんですかぁ。言っときますけど20年ぐらい前からここしか本屋はありません」

退路が断たれた。


「助言はできるか分かりませんが、話しだけは聞きましょう」

いろいろあったが時間にはまだ余裕がある。だがこの大型商店、まだ半分程度しか見回っていないんだよなぁ。


後を振り向き、

「2人もしっかり聞いといてね。現店主の苦労話が聞けるなんていい経験になるだろうからね」


ジワッ






「・・・・・・と言う話で以上です」

店主さんの話はいろいろ質問を挟みつつも一応終わった。それなりの長話だったがその間客は1人も来なかった。


そして俺にとっても興味を引かれる内容ではあった。

前世の本屋とはあれ以外にもずいぶんシステムが違うのだ。こちらでは本とは営業と顧客回りをして売る品らしい。ここでも買うことはできるが基本はそっちのようだ。店主は写本している時以外は営業に出ているそうで、今日開いていたのは偶然だ。

それで店主さんが経営状態を鑑みいろいろしたみたいに言っていたが、結局売り込み方法などがメインの取り組みだった。


「ふむ、大体の事情はわかりました」

「苦労してるんだなねぇちゃん」


「言わないでよ。それで、何がいけなかったのでしょう」


「・・・・・・そうですねぇ。売り方ですかね」

「え、でもいつも贔屓にしてくださってる方々には評判はいいんですよ」

「いえいえ、そこではなくてもっと全体としての売り方です。・・・客層を変えてみませんか?」

「そんな、長年ご愛顧いただいた方をいきなり」

「うーん、言い方がわるかったかな?今の顧客の大多数が第2層の方たちでしょう。つまり今までは富裕層が客層だった。これからは都市民全てを客層とするようにすればいいのです」

「それが簡単にいけば苦労なんかしません!」

「ええそうです。ですがここに来て本とは何か少し見えてきました。・・・・・例えばこれ」

俺は棚から目に付いた1冊の本を抜き取った。


「それは」

「煌びやかな装飾ですね。職人の技が光っています。通常高価な本を更に高価にしているのはこの装飾です。ゆえに第2層に住めるほどの富裕層でしか手に入れられない物になってしまいました。

写本師さん、聞きたいんですが、この表紙の装飾は写本元に忠実じゃないといけないんですか?」

「・・・規定はない。注文者次第でより煌びやかになることもあるし」

「ありがとうございます。つまりここでいう本とは詰まるところ知識を得るための媒体ではなく富の象徴です。より煌びやかで、希少な本を持ってることに意味があるとさえ言えます。まぁ極論ですけどね」

「それで」

「ああ、ちなみに聞きたいんですが、ボクが買おうとして諦めた本ですが、割に高い方ですか安い方ですか?」

「安いわ。でも挿絵が多いから割にしたら高めよ」

「ほう、ちなみに挿絵なしと挿絵単一色の場合、店主さん、あなたならいくらで売り出しますか?」

「・・・・・それっていま大事?」

「うーん、あとでもかまいません。それともう1つ聞きたいんですが、勝手に一般人が写本するのは違法ですか?」

「違法ではないわ、でも割に合わないからする人はいないと思うわよ。それに、・・・・」

1冊の本を取り出し、最後の方のページを見せてきた。そこにはいろいろな判が押してあった。


「これは?」

「これはこの写本の分類と写本元との誤字脱字の検査した人が間違いありませんと押す判よ」


店主さんの説明が少し入った。

どうやら写本査閲官なる資格があるらしく最低でも写本査閲官2級なる者が1人以上判を押した写本が公的に認められる最低限の本らしい。

それ以下でも別に違法ではないが公的機関や知識人にはほぼ購入を拒否されるそうだ。


そして本屋の店主兼写本師さんも写本査閲官2級を持っていて写本を売る最低レベルはクリアしてるそうだ。つまりこの人は紙さえ用意すれば挿絵なし、装飾なしの本を1人で作って売れると言うわけだ。

これぐらい本屋の嗜みとドヤ顔で言ってきた。比較対象がいないので程度がよく分からんっと言うのは飲み込んだ。


「なるほど、つまり特に気にすることはないと言う事ですね」

「そうだけど、そうじゃないのー」

言いたいことは何となく分かる。だけど写本行為自体に枷があると切れる手札が減るので無視することにした。



「ふぅ、少し疲れましたね。1度休憩にしましょう。ボクたちちょっと休憩してまた来ますので、店主さん。挿絵ありなしとかの費用別原価計算しといてくださいね」

「えっ、いくらで売る。じゃなかったっけ、何か増えた気がするんだけど」

「ええ、少し時間が出来ましたのでより詳細をとね。じゃあきゅーけーはいりまーす」



 中庭の露店群に戻ってきた。

時間は丁度昼時で、露店群には黒山の人だかり。もちろん比喩表現だよ、黒髪の人ほとんどいないからね。


軽食と飲み物を購入し、ゆっくり休んだ。


「ねぇウィル、あの人のことどう思ってるの。ウィルがあそこまで肩入れするの初めて見るんだけど」

「トリア。ボクはあの人のことどう思ってるかと言うより、あの感じからボクが本代を貯めるより先に無くなりそうだったから肩入れしてるだけだよ」

「じゃああの人のことどうとも思ってないってことでいいのよね」

「?ああ」



まったりと一服を終えて、

「さて、2人に提案があるんだけどいいかな」




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