3-19 試作と見物
冬の下月31日。
今日はニックとトリアの家へ行く日だ。
秋に作った紙などの荷物は準備したし多分抜かりはないだろう。
朝早くに家を出て2人の家への最短だと思われるルートを進んだ。
「えーと確かこの区画のはず。それで南側の集合住宅の2軒隣だったな」
そう呟きつつ集合住宅側に回り込むと2人の家と思われる家屋が見えてきた。聞いていた通りの家構えだから間違いないだろう。
2人の家庭が移り住んだ家は1階が店舗で2階が住居の店舗付き住宅だ。
店舗付き住宅だからと言って必ずで商売をしないといけないわけではないが税関係で商売を営む、営もうとする者が購入する傾向にある住宅だ。もちろん気にしない者は1階の居住性がわるい2階建て住宅と住む者はいる。
ちなみにこれが第3層で一般市民が手に入れることができる最低サイズの住宅のタイプの1つだ。面積って意味じゃないよ。
都市奪還作戦以前の人口過密時にそう制定されていて、純粋な1戸建て住宅はほとんど存在しないためだ。
トントン
「こんにちはー」
しばらく待っていると、
ガチャ
「いらっしゃーい」
お出迎えはニックだった。よかった合ってたか。
「ああリヤカーで来たんだ、待ってて今開けるから」
そう言うとニックは家の中へ戻って行った。
出来るだけ手荷物で収めたかったが紙がかさ張って結局リヤカー引いてきた。
そして開けられたリヤカー用の扉から中に入った。
ふむ、見た感じ1階は表側の部屋が狭いから工房やトランクルーム業として使ったりする構造だな。
2階に上がりトリアとも合流したり2人の母親に挨拶をした。そしてしばらく4人での談笑を挟み3人で1階に降り、リヤカーから件の紙を降ろして1階の空き部屋に持ち込んだ。
この空き部屋が今回の作業部屋だ。
「この部屋はこうなってるのか」
この空き部屋は表の部屋と違ってコンクリ打ちっ放しって感じの部屋だった。
床板はご自由にしてくださいってことか?
持って来た紙をいくつか並べ、
「これらが厚紙だね。一応下の程厚いはずだ」
この仕分け作業が大変だった。持ってみて何となくで分類した。つまり目分量だ。
「それでこっちが花とかを混ぜて漉いた紙で、こちらが載せて漉いた紙だね。こっちは漉いた順番をそのままにしてるよ」
こちらは物の漉き込み方法が分からなかったため、何パターンか漉く方法や回数を変えながら試行錯誤した紙たちだ。
2人がそれぞれ吟味を始めた。
「折ってもいい」
「いいよ」
吟味中の2人を置いてまたリヤカーから荷物を降ろした。
次に降ろしたのは型紙だ。これが本決まりではないがこれがあるとないとでは今後の作業効率が違う。
型紙も作業部屋に持って行き、雑談も交えつつ紙袋や紙箱を試作した。
「そういやこの家、前は何を商ってた人が住んでたんだ」
「んー、確か樽買いの人が住んでたらしいよ」
へー、リサイクル業者か。
「ってことはこの部屋は元倉庫ってところか」
「たぶんなー」
床板が無いのも納得だ。
昼過ぎには一通り試作が終わった。
試作品は各々で使い心地を確かめるため今回はここまでだ。
昼休憩を入れ午後は前回の魔術談義から新たに得られた知識の相互理解に努めたり、魔力量の測定を再び行ったりした。
ニックは前回以上に魔術訓練に時間を割いたようで、前回とは測定方法が違うため絶対量の比較はできないが、感じ的にトリアに大分追いついていた。うん、それでも最下位だった。
ざんねん。
次の日。
今回は1泊2日の予定で今日帰るのだが昼過ぎまでこの辺の店を見て回ることになった。
目玉はあのハーメルトイン商会が出したという大型商店だ。
今世では売り場面積が大きい店は初めてなので少々観察してみたいと思ってはいたのだ。
ドキドキはあるがそれは楽しみから来るものではなく怖いもの見たさから来るものだ。
フランケンシュタインの怪物と呼ばれる生物を知っているだろうか。
彼は複数体の死体をつなぎ合わせて作られた生物だが、複数体の弊害か、醜い姿をしているらしい。小説は読んだことはなく概要しか知らんがな。
そして建材の関係か同じ区画でも築に百年単位の開きがあることがここではざらにあり、そのため建築様式差がある。それをつなげた件の大型商店はさぞ奇天烈な外観をしているのだろう。
ハーメルトイン商会の怪建築物と、これからはよぼうかな。
「しっかし、さびれてるねぇ」
西区の方へ3人で向かっていると閉まっている店が多く見受けられた。
「越して来た時からこの辺はこんな感じだったけど」
「そうなんだ」
辺りを見物しながらしばらく進むと人だかりが見えてきた。
「ん、あれは何だ」
「あれが今日の目的地だよ」
件の大型商店に近づくとその外観が見えてきた。
「・・・・・・」
ビミョ~
俺の中の怪建築物像からすると小奇麗すぎる。かといって洗練されているかと言われれば首をかしげざるおえない。
まあ挑戦する姿勢は評価点だ。ここが成功すれば他にも似たような商店ができるだろうからこれをモチーフに洗練されていくだろう。
しばらく外観を観察して建物の中へ入った。
中にはここら周辺のさびれ具合とは真逆の盛況具合だった。
はぁ、ゴミ人だ。・・・人混みだったかな?人ゴミ?
「で、ニック、テキトーな入口から入ったけどここは何を主に売ってるんだ?」
ゴミ人でイマイチ商品が見えん。
「ここは雑貨だね、まあ1度中庭へ出ようよ。それから説明するよ」
促されるまま中庭に出るとそこは人力車や荷車が大量に止まっていた。駐車場だな。
そして、中庭、つまり元々井戸がある広場は約半分が駐車場で、もう半分が露店群だった。
中庭も有効活用してるんだなぁと思いながら露店で飲み物を購入し、テキトーに腰かけてからニックの説明が始まった。概要は既に聞いてるからあとは場所と結びつけるだけだ。
「・・・・で、その隣が最初に入った雑貨棟だね。これで一周したかな」
「ありがとうニック。頭の整理がついたよ」
ニックの説明のおかげで大体店の位置が頭に入った。
各階ごとに商品が違う百貨店をそのまま各棟に置き換えたって印象だ。まぁあちらにはなかった魔術や魔物、武器、防具関連商品があるがな。
とりあえず全棟回ることにした。もちろん興味の薄い商品を置いている棟や階はスルーするが。
端から攻めて、ウィンドウショッピングと洒落込み、人通りが少ない不人気区域に入った。不人気って言うか特定の客層しかいないニッチな産業系統が主に入っている棟だが、なんて言うか趣味人の世界だ。
そんな人気がなさそうな店舗をいくつか通り、骨董品を扱ういかにも一般市民向けではない店舗を通りながらその商品を見て、何気なく店主の方を見ると、
「あった・・・・・・・・」




