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ボクの異世界侵略記  作者: チカさん
第2章 少年期編
45/93

2-23 導入に向けて4

 今日は品評会が行われる日だ。

天気はわるくはない絶好の品評会日和?で、俺は品評会参加組なので朝から川辺に向かった。

同棟の参加者と一緒に川辺に着くと、既に到着して作品をそばに置き待機してる者もいた。


品評会の出品数は最終的に10作品となった。

説明会のときには20名くらいの者がいたがずいぶん減ったな。でも合作も多いみたいな話を聞いたらから実際にはそのくらいの人数なのかな?

参加者の内、うちのアパートメントの者が作ったのが4作品。俺を除く3作品は実演をした3組の者達だ。



 最後の打ち合わせが終わり、少し待機してると開始時刻となる昼となった。

主催者数名の長々とした挨拶があり、品評会の開始が宣言された。川辺には櫓や壇、観客席に屋台まで出ている。置いてるのはつまみと酒類が大部分のようだが。

その他にちょっと離れてフリマ、春市の在庫処分市が並行で開かれているなど半分祭りの形相を見せている。


品評会の内容を要約すると、

・決められた順に、壇上で作品をアピールをする者と櫓の上で実演する者に分かれて発表を行う

・櫓には2本の管が設置され片方で1組がアピールと実演中に、もう片方が撤去や取り付け作業をして自分たちの番まで待機する

・発表終了後は速やかに撤去を行い、川辺の投票者試運転用の設置場所に取り付けを行い待機する

・投票者は全ての作品の発表が終わったのち、すぐに投票してもいいし、気になる作品の試運転をしてから結論をだしてもよい

以上だ。


ちなみに、

投票者は1人5票持ってる各棟の代表者か有力者と招待客数名。それと件の井戸を使う家庭に各1票があらかじめ配られている。

そして品評会に直接関係ない外部の客には投票権はないが賭博が行われる。

賭博はそもそも役所に申請を通したもの以外禁止されている。まあ数人規模の賭博は黙認状態だが。こういうある程度以上人が集まると賭博は行われるのが常で、そういう場合あらかじめ主催者側が何か賭博の用意をするのが常習化している。役所には堂々と賭博部なる部署が存在しここに申請を通す必要がある。もちろん通らなければ違法だが都市政府の財源の1つだから、忙しい時期を除いて通らないことはあまりないらしい。


品評会全体についてはこんな感じだ。


待機してる場所から観客を見るに、これからの生活に密接に関係してるから真剣に顔をしている者も多い。



 俺たちの番は抽選の結果4番目となり実演はニックにお願いしている。最初はトリアにお願いしたがダメだった。


「では最初の方をご紹介します。こちらの・・・・・・


「いよいよ始まったか」

紹介されて壇上にのぼった最初の組の製作者とその相方の実演者は共におっさんだった。特に実演者のおっさんはそこそこ筋骨隆々なおっさんだ。


俺は練習環境が整備された辺りから不思議に思っていたことがある。

それは一部の作品がデカいことだ。一体あなた方は何に水を注ぐんですか?樽ですか?それとも池ですか?状態だ。だって今回の品評会は井戸の水汲み用を決めるんですぜ。

水汲みって知ってるよな。基本的に子どもか女性の役割で、ここでは所帯を持ってる成人男性がすることじゃないんだよ。だから基準はそっちにすべきだと俺は思っている。

もちろん分かってる者もいて、子どもや女性を実演者にしてる者もいる。


もうこいつらは今回の品評会とは違う目的で動いていると思うことにして心の平穏を保っている。畑とか工房用なのかなーっと。



 1人目のアピールが終わり、実演が開始された。

実演者の筋肉が震え、血沸き肉躍る筋肉の祭典が始まった。呼び水を差しているのがなんだか愛嬌がある動作だ。


しばらく眺めていると水が出始めた。


うるさい


今までと違いやっと実用レベルの稼働を確認できたかだろうか、観客の歓声が辺りに響く。

拍手ならまだしも歓声は嫌いだ。虫とかの鳴き声は気にならないのに、人が介入すると不快度が上昇するのはなぜなのだろう。

はあ一気に冷めたは~、棄権しようかな~。


俺が悩んでるうちに1組目の発表が終わり、司会者によって2人目の紹介が始まった。

2組目の製作者と実演者もおっさんだ。

ここまでおっさん10割のおっさん祭りだ。



 2組目の発表も終わり、いよいよ俺たちの番が近づいてきた。まずは管に取り付けなくてはな。

俺達は作品を持って櫓にのぼった。りはせず作品を櫓に上げるのは大人にお願いした。平地はまだしも梯子でそれを運ぶのは厳しい。


1度のぼったため分かっていたが意外と高い。でも高さ的にはアパートメントの2階以上3階未満のはずで家の方が高いはずなのだが、感覚とは曖昧で錯覚とは恐ろしいものだな。

設置も終わり、

「じゃあニックあとはお願いね」

「うん」

今日はあまりにニックの口数は少ない。緊張してるのだろう。俺だって心臓の鼓動が聞こえ・・・梯子のぼったり、設置に神経を使ったからか。



 3組目も終わり俺たちの番が来た。3組目はいつまでたっても水が放水されず何度か製作者が手直しをいろいろしていたが結局放水されず、途中棄権となった。


「では気を取り直していきましょう。

4人目の方をご紹介します。ご存じの者はご存じのこの品評会を行われる要因となった手押しポンプを最初に作ったウィル選手です。本日はどのように我々を驚かせてくれるのでしょう」

そんな驚かすようなギミックは用意してないよ。


「こんにちは、ご紹介されましたウィルです。本日はこのように大勢の方が集まってくれて製作者の1人としてまたここに住むの1人の者として嬉しく思います。早速ですがボクの作品をご紹介させていただきます」



作品のアピールを始めた。

今回の作品の特徴は、ずばりユニバーサルデザインだ。

どうしても子どもと大人では身長が違うため、無理な姿勢での長時間の使用は体にわるい。だが製作者側でそれを調整するのは限界があるため、使用者側で調整できる方式に変更した。

構造的には通常より長大なストローク部とハンドルの支点をプライヤみたいなスライド構造を導入し、あとは可動域も多少変更が利くように作っただけだ。

外観は全体的にスリムな仕上がりとなっている。


アピールが終わり、ニックに顔を向けた。


ニックが実演を開始した。まずは大人用の高さで運転を始め、無事に放水でき、まずは一安心。疲れた演技を挟みつつ、支点をスライドさせ低身長子ども用に設定し直し軽快に漕ぎ始め、放水できたところで実演を終了した。


見てて思ったが、大根だな。



こうして俺達の発表は終わった。


発表終了後は川辺に設置し直して、時が来るまでそばに待機してるだけだ。

作品を持ちつつ川辺に向かうと、既に2台が設置されそばに製作者と実演者達が待機していた。3組目は棄権なので設置はされていない。

俺とニックは既にいた者に会釈しつつ設置し待機し始めた。



 今8組目が発表をしてるが些か暇になってきた。こちらに来るのは投票者か外部の客だが、投票者は発表が終わるまで来そうにないし、外部の客は主催者の者がガードしていてこちらまで来ない。情報漏洩を防ぐためだろう。意外とケチ臭い。


俺とニックはニックをパシらせて飲み物(ノンアルコール)とつまみを入手し、発表を眺めつつ、評価や世間話をしていたが結構発表が長引いてる。

そういうのも実演を1発で成功できた組が少ないのだ。結構な割合で数回錯誤後に成功できた者や結局棄権した者がいた。

原因は最初の1と2組目は取り付け時間がたっぷりあったが、それ以降の組はアピールと実演中の間に取り付ける押し気味のタイムスケジュールなのでしっかり隙間を塞ぐのは中々難しいのだ。棄権組はそれ以外が原因だから何とも言えないが。

さっきの7組目なんてハンドルの支点が折れたぞ。もちろんこれは強度の選定が甘すぎたんだろうな。


俺は一応、連続体力学は修めてるから単純な箇所は計算したんだぞ。物差しは目分量だし、定数は分からないから類推でスケールだけ合わせてたし、安全率は大きく掛けたとはいえ。

その結果、俺の計算が合ってたら思ったより細く薄くすることができることが分かったため作品をスリムにできたってわけだ。でも暫くは計算ごとはしたくないな。


そんなことを考えてる間に8組目の発表が終わり、9組目・・・おっさんだ。




 最後の10組目の発表も終わった。

「発表者の皆様ありがとうございました。それでは先に申し上げました通りこれから投票のお時間ですが、こちらの時計が5回落ち切るまでとさせていただきます。それまでに投票をお願いします」

そう言って司会進行の人が砂時計を取り出した。

おおー何分に対応するか知らんが時計じゃん。

初めて見たよ。俺は日時計のデータ集めはしてるけどまだ完成してないんだよな。今はこっちにかまけてるし。


結局こちらの体験場に設置されているのはまだ櫓で外し途中の10組目を除けて、6台だ。3台は途中棄権となった。


「さてと、そろそろ動きますかな」

「ウィル年寄りくさい」

発表自体は終了しだが半分こっちが本番だ。今から体験希望者達が気になる作品の試運転にくるため気合を入れ直したんだがまさか年寄り扱いされるとは。


体験希望者達が各々気になる作品に集まってきた。俺のところには子ども連ればかり来る。まあ狙ってた辺りだから順当だ。

標準的な桶も用意してるので、一杯になるまでどれくらいかを体験してもらった。川の水をポンプで吸い上げ、桶に注ぎ、一杯になったら川に捨てるという生産性皆無な行為だが仕方がない。

体験希望者の中には各棟の代表者か有力者、招待客などの比重の大きな者達も体験していった。

感触的にはそこまで悪くないと思われる。





「皆様のご協力もあり大きな混乱もなく終わりに出来たことに感謝します。本日はまことにありがとうございました」

品評会が終わった。

俺の結果は堂々の3位に輝いた。というか実演者が子どももしくは女性としたところが1位から3位総なめだ。おっさんの不人気さがまざまざと見せつけられた印象が強すぎて、あまり中身は覚えてない。

ああ、優勝者はポールガリアさんだ。実演者はその娘。

作品は俺が最初に作った形をインスパイアしつつより細部をよりエレガントに仕上げた一品であった。

俺の作品も大根さんのおかげで様々な人に対応できると高評価だったが、決定的な敗因はスリムだったことだ。他の作品に比べて細いため頼りなく見えたという意見をもらい、そう判断した。

まさかそこがマイナス要素だったとは。理論上実用に問題ないのだがままならんものだ。


ポールガリアさんの作品は後日井戸に取り付けられる。工事が終わるまで数日間かかるためその間近くの井戸を間借りすることになる。


「おめでとうございますポールガリアさん、それにトレミー」

俺は優勝したポールガリアさんとその娘トレミーのペアに祝福の言葉を贈った。


何が君ならちゃっかり優勝してしまいそうなんだがな、だよ。自分がしっかり優勝持ってったじゃん。

この~くわせもの~。


「あーーはっはっはーーーーー。どーーーようちの実力はーーーー。ざあーーっとこんなもんよーーーーー」

トレミーの姉のナタリーがあらわれた。


「おや、まったく関係ないナタリーさんではありませんか」

「関係無くなーーーい。私だっていろいろ手伝ったんだっからーーー」

「へーいろいろねー」

ウソだな。ナタリーはそんな性格をしてない。俺が2人の先生だった時からそんな感じ・・・・こほん、ナタリーなんて元生徒はいなかったな。俺が先生だったのはトレミー1人だったな。


「信じてないでしょーー」

「モチロンシンジテルヨ」

「きーー」

不興をかってしまった。

どうやら俺も大根だったようだ。




 品評会が終わった次の日、

「これをどうしようか」

俺は品評会で貰った豪華賞品の処遇を巡って難儀していた。

賞品は鉄製のクワであり、うちではあまり使い道のない品だった。

これなら一緒に貰った参加賞の食事券の方がましだ。食事券は5ティカ分、うちの場合家族全員で約10日、今は父がめったいないからもう数日多いが、大体それくらいの価値の参加賞だ。

鉄製のクワは平時でその数倍、現在鉄は武具に回されるため数倍で手に入れることはできない貴重品だ。


母に相談しても、

「ウィルが貰ったんだから好きにしなさい」

と言って、食事券のみ進呈してクワの所有は俺になった。


売るか?

べつに7本集めても何か起こるわけないし、観賞用、保存用、布教用、実用用に4本いるわけでもない。

でも金属なんだから何とかして工具に転用したい気もするんだよなー。


・・・保管しよう。俺は最強の切り札(とりあえず先送りだ)を発動した。



 俺が切り札を発動し、双子の子守りをしつつ双子の勉強を見るここ最近の日常を謳歌してると、


トントン


ノック音が聞こえ、誰だろう?と扉を開けると、


「こんちはー」

ナタリーが訪ねてきたようだ。その後ろにはトレミーもいる。うちを訪ねてくるとは珍しい。

「コンチハー、ナタリーさんとトレミーじゃないか。何か用なのかな?」


「それがトレミーがどうしてもウィルに言っておきたいことがあったみたいでね。さあトレミー言ってあげないさい」


ナタリーの後ろからトレミーが意を決した顔で出てきて、

「せんせー、あねのナタリーはそれはそれはたくさんのおてつだいをしています、すいじせんたくとししたのこたちのもりまで、それはそれはたくさんです、そしてそれはあのさくひんについてもおなじです、あねはせっきょくてきにちちのてつだいをかってで、さいしょのだんかいからなんかいもなんかいもどうさをためしてようやくかんせいしたのです、きのうのやくはトレミーにゆずってくれてはなをもたせてくれましたが、ほんとうはとってもきだてのいいおしとやかなおんなのこなのです」


「・・・・・・・・・・・・うん。そうだね。どうやらボクはナタリーのことを誤解していたようだ」


なでなで


「ふっふーーん、どうよ。私がどれだけ頑張ったかよーーく分かってでしょ。これからはあんな失礼なことは言わない事ね」


どうやら昨日の出来事を根に持ってるようだ。妹を使い、このセリフを言わせ、そしてこのドヤ顔である。


「トレミー、君の熱意はようく伝わったよ。このあとボクはナタリーに個人的なおはなしがあるんだ。長くなりそうだから先に帰っててくれないか」


「っ・・・あははー、私はこの後忙しいんだ、だからその話は今度ねー、さいならー」


ナタリーはトレミーを置いて帰って行った。逃げ足のはやいやつだ。

俺は置いてかれたトレミーにおやつを包み、苦労を労い帰した。


それにしてもナタリーは何がしたかったのだろう?



 もう数日で春の伐採が行われる今日、開所式が行われている。

今日まで数日間少し離れた井戸への水汲みは些か大変だった。距離もそうだし、時間帯もそうだ。俺のスケジュールが狂いっぱなしだったぜ。


「皆様、本日はお集まりくださいましてありがとうございます。井戸の改修工事も無事に竣工し、本日皆様にご披露出来ますのも・・・・・



今日はとにかく話が長い。入れ替わり立ち代わり同じような話をもう何回も聞いた。偉い人って同じような話を人前で堂々と言う度胸もつけないといけないのか。

各棟の代表者から、品評会のときにもいた招待客、この前いなかった新たな人まで一体どこまで話を広げた事やら。




終わったー。式典も終わり帰ってもいいし、井戸についたポンプを動かしに行ってもいい。大量に並んでいるがな。


眺めていよう。



うん、みんな楽しそうにしてるな。作ってよかったよ手押しポンプ。



こうして井戸に手押しポンプが導入された。




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