表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ボクの異世界侵略記  作者: チカさん
第2章 少年期編
42/93

2-20 導入に向けて1

 祖父母宅から家に帰って来た2日後、いつものように自分と母と幼児2人分の朝食を持って家に帰ろうとしたところ、

「おーいウィル」

俺を呼ぶ声に後を振り向くと、ライルがいた。


「おはようライル。なんか用でもあるの?」

「ああおはよーさん、用がないと話しかけちゃいけないのか?」

「そこまでは言わないけど、用がないとわざわざ後から声をかけたりしないだろ」

「まあそうだな。それでウィルは今日の夕方の会議に出席するんだろう?」

「一応ね。でもライルは関係ないだろ」


会議とはこのアパートメントの定例、臨時会議のことで、今日開かれる会議は手押しポンプを井戸に導入するのに賛成か反対かを決める臨時会議だ。

俺が祖父母宅へ行ってる間に複数人が井戸のある広場で手押しポンプのお披露目をしたらしい。母が言うには俺くらい身長の高さまで水を汲みあげたそうだ。

あの井戸はうちらのアパートメントだけではなく、他数棟との共同利用、管理がされている井戸で、そんな場所でお披露目したためこの辺り一帯の話題をさらってる状態らしい。

その話題を鑑みてアパートメントの上の方の人が動いた結果が今日の会議と言うわけだ。今日の会議で決まったことは、次に開かれる数棟間の代表者会議に持っていかれ、そこで最終決定がくだされる。


俺は今回の話題に少なからず関係があるため出席する予定になっていた。でも普通は家庭の代表者が出席するから、ライル(子ども)は関係ないはずなんだけどな。


「いや俺も参加するのさ。今日は俺以外夕方までに帰ってこれそうにないみたいでさ」

「へー、ライルのところはみんな忙しいんだね」

ライルの家は親2人と兄と姉が1人の計5人家族だ。ライルはこんな感じだが驚くことに第4子の末っ子だ。長男とはずいぶん離れてるらしく成人していて別のところに住んでいるそうだ。ラックは見たことはあるそうだが俺はその長男を見たことがない幻の存在だ。もちろんラックとライルが結託して俺をだましてる可能性もあったので両親に確認済みで実在の人物ではあるようだ。


「俺も一応忙しいんだが、何とか抜けれそうなんだよ」

いよいよ都市奪還作戦が迫っているから、忙しい者は本当に忙しい。辛気臭い顔の者が最近増えてきたし、最近見なくなった者もちらほらいる。うちの父と同じように仕事場に泊まり込みなのだろう。


「そうなんだ。じゃあまた夕方の会議のときにね」


ライルと別れて、朝食を家まで運んだ。



 朝食が終わり、食器を返しに行ってからまた家に帰って来た俺はゆったりとニックとトリアに出した宿題の採点や、まったりと幼児2人と戯れながら夕方までほのぼの過ごした。



 夕方になり母と一緒に1階に降りた。会議は食堂の一部で行われる。既に一部の者達が駄弁りながら集まっていた。


会議の場にはお披露目されたと思しき手押しポンプが3台置いてあった。その近くにはそれぞれの製作者と思しき者が座ってたり、会議出席者に説明などをしている。

うん、製作者の3人とも俺と手押しポンプについて意見を交わした者達だ。それにしても凄いな、普段の仕事もあるだろうにこんな短時間で作り上げるなんて、ホントに仕事してるのかこっちが不安になってくるぜ。


俺も会議の前に見とくべきか?でも今回は意思決定だけだから見なくても実際に井戸に設置するのをどれにするかコンテストがあると思うからその時でも遅くはないと思う。作品を遠目に見つつ、製作者と目が合った時は目礼を交わしつつ待っていると出席者が増えてきた。中にはライルと同じように大人以外が代表者として来ている家庭もあった。


「よーウィル、隣いいか」

「朝振りだねライル。別にかまわないよ」

母の反対隣にライルが座った。


「それでウィルの家は賛成なのか?それとも反対?」

「うちは導入に賛成だね。そういうライルの家はどうなの?」

「まだ決まってなくてな。もう俺の一存で決めていいことになったよ。それでウィルの意見が聞きたいんだが」

「ん?」

「ほらっお前はいくつか欠点があるって言ってただろ。その辺で保留状態なんだよな、で、あの前の3つはその欠点を克服してるのか?」

「知らない」

「なんでお前が知らないんだよ」

「そんなこと言ったって製作者の人達とは意見は交わしたけど、製作に関しては一切関与してないんだよ。そもそも意見を交わした人達の中で誰が作ってて誰が作ってないかすら知らないよボクは」

「はあー、お前は相変わらずだな。じゃあ仕方ない欠点を克服してようがしてまいがお前はあれの中でどれを推すんだ」

「なんか導入すること前提で話が進んでるように聞こえるんだけど」

「もしもの話だよ。それでどれを推すんだ?」

「見た目だけで決めるのは無意味だから今のところは保留かな。どうせ今度は誰の作を採用するかの品評会が開かれると思うからね」

「ウィルがあてにならんかー。さて賛成反対どうしようかなー」

失礼なやつだな。



しばらくライルと談笑をしつつ待っていると、

「皆さん忙しい中集まっていただき、ありがとうございます。本日の議題は既に聞き及んでる者が多いと思いますが一応説明させていただきます。・・・・

会議が始まった。


俺のいなかった間のお披露目の出来事から始まり、そこに至るまでの過程も話され、俺も軽く紹介された。あとは3台の手押しポンプとその製作者4名が紹介され、大きな桶に水が張られ、順番に実演が行われた。1台は2人の合作だ。


ふむ、3台とも1メートルくらいの高さなら吸い上げることができるようだな。


そのあといくつか質疑応答があったが特に俺に有益そうな事柄はなく、出席者による投票が始まった。




「以上で、会議を終わります。皆様ご協力ありがとうございました」

会議が終了した。結果は賛成多数で導入することになった。


あとは代表者連中の話し合い次第なので俺は完全ノータッチだ。

仮に代表者会議で導入することが決定されたとしても実際に工事が始まるのはだいぶ先の事になるだろうという話だ。

改修工事時には井戸が一時的に利用できなくなるため、周辺の井戸を間借りしないといけなくなる。そのためそちらにも話を通さないといけない。定期の点検や補修ならまだしも不定期な改修工事はいろいろ面倒事が多いみたいだ。



 会議が終わった次の日、今日は久々に始動した。2日間しっかり休憩を取っていたのでそろそろ作業を始めようというのだ。


今日取り掛かろうと思っているのは給水管だ。やはりこの部品は作るのがとても面倒なため祖父母宅でもいろいろ作り方を考えていたのだ。昨日見た3作品の給水管は土管2台と木管1台だった。土管はあの長さでも重そうだったし、衝撃に不安が残る。木管は桶と同じように板を組み合わせて固定している中々技量がいりそうな作品だった。でもあの桶タイプは水圧がかかるところには向かないと思うんだがな。数メートルくらいなら補強次第で大丈夫なのだろうか?


俺が考えついた製作方法は2枚の板をCの形に曲げて互いに嵌め合いクギで固定する方法だ。最初は板2枚だけでいいかと思ったがそのうちへたって来るかと思いクギで補強しようと思い直したのだ。

高水圧でもなければいけると思うんだが1度試してみるまでなんとも言えない。



 2枚の厚みと横幅の違う板を用意して、軟化の魔術を掛け体重を掛けながらゆっくり曲げていく。この作業を数回繰り返した。


「こんなもんだろう」

出来上がった2枚の板は円に近いCの形まで曲げることができた。鉄板なら溶接してバリを取れば完成なのだが、・・・木材って溶接?できるかな?

できる・・・ないな。さすがにそれは意味がないだろう。


予定通り嵌め込みをしよう。




「ようやく入ったか」

最初は全く入らず内側になる板をどんどん削って薄くしながらトライし続けた結果、ようやく端を入れることができた。ここまで入れば後はそう難しくない。

だがそろそろ次の予定が入っているためとりあえずここまでで放置しておこう。



「2人とも待たせたね」

今日はニックとトリアとの授業の日だ。春になってから授業は隔日で行うことにした。魔術に関しては2人とも俺に教えられることがなくなったため各自自主練習となった。俺が2年弱かかったところまで2人は1年弱で到達した。偉大なるは文字。とだけ言っておこう。


「じゃあ今日は算数だったね」

「うんそうだよ」

2人に関しては小学算数はもう終わりにして、中学算数つまり数学へ段階を進めた。数学は概念的で抽象度が高いがぜひついてきてもらいたい。

今は文字式に慣れさせている段階だ。


「じゃあ今日も授業を始めます。今日は・・・・・・




今日もまた1歩、2人が俺に教育(洗脳)されてゆく。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ