第14話
「ありがとうございます。私の名前はリン・カンザキといいます。リンとおよび下さい。私の詳しい身分などについては・・きっと明日ぐらいにはお聞きになると思います。」
「リン様・・ご挨拶頂き有り難うございます。」
1人の文官の言った言葉に重なるように、他の2人の文官達は頭を下げた。リンは挨拶をしたが、文官達の身分からいって、リンの許しがない限り自分達の名を言うことが出来ない。その為、文官達はまだ視線を上げることがなく、リンの顔を見ていない。リンはそんな文官達の様子を見ながら、どうしてまだ顔をあげないのか、と不思議に思っていた。
————どうしたのかしら・・。たしか2階級以上は身分の差がある場合は・・・上のものが挨拶をしたら顔を見ることが許されるはずでは?
10歳の頃からこの世界をルシアの意識を通し見ていたリンであったが、主にはホスタ国の民の生活模様、文化や経済、他にはホスタ国と交流のある国のことについて学ぶことが多く、マナーなどについてはアルキシンを見ていた時にアルキシンの態度を見て学んだだけであり、ルシアから直接マナーについての教えを得たことはなかったのである。なおかつルシアの意識を通してこの世界を見ている間ずっとアルキシンを見ていることが許されたわけではなく、そういった”勉強”が終ったあと、目覚めるまでのわずかな時間、アルキシンに会えただけであるリンにとって、文官達が未だに頭を上げない理由が全くわからないのであった。
「あの、私の挨拶は以上ですから、どうぞ顔を上げて下さい。」
不安気に言うリンに文官達は態度を崩すことなく、今度は今迄黙っていた文官の一人がおずおずとリンに答えた。
「私達は文官でありますから、リン様のお許しがない限り挨拶をすることができません。もしよろしければ私達に挨拶をすることをお許しいただけたらと思います。」
その文官の言葉でリンは漸く自分がマナー知らずであったことに気づいた。
————私が挨拶をしても、私が挨拶をすることを許さなければいけないのね・・。
「ごめんなさい。知りませんでした。どうぞお名前を教えて下さい。」
苦笑を漏らしながら文官達に謝るリンに文官達は慌てながらもリンに挨拶を返した。
「私は陛下の第一文官をさせていただいております、マーシャル・ヘルガーと申します。それと、どうぞ私達に謝罪などなさらないでください。」
最初にリンに言葉を返した文官が挨拶をしたのを皮切りに、他の二人の文官も口を開いた。
「私は陛下の第二文官であります、ジョヘル・マルシーと申します。」
「私はゴルノア様の第一文官であり、武官でもあるモル・ジャヘルダと申します。」
最後に今迄一言も口を開かなかったモルが挨拶を終えたことで、3人とも視線を上げリンを見た。そして同時に言葉につまったかのように、驚いた表情を浮かべ、リンをまじまじと見つめる。そんな3人の様子をリンが朗らかに笑うと、3人共慌てて真面目な顔を作り、リンの質問に話を戻そうとするのであった。
内心では、リンの黒い瞳と髪、そしてそんな神秘的な色にあった美しい容貌に未だ胸を高鳴らせていたが、そこはエリート文官達、そんな想いは態度に出さずに自分達の仕事に意識を向けるのであった。
今回は短いです;
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