魔女との賭け
フィレオラの話を聞いてミナトが口を出す
「だとしても、このフィレオラが同じことを繰り返すとは限らないんじゃないのか?」
「いいえ、ここまでは完全に私が経験したことと同じよ」
「だとしてもだ。未来の歴史は変えることが出来るんじゃないのか?わざわざこの子の命まで奪わなくても。例えば、この子の魔法の力を引き出さなければそれでいいじゃないか」
「そう、気づいていないのね・・・・」
「え?」
「その子はすでに魔法を使っているわよ」
「なんだって?そんなはずはないだろ。じゃあ、フィレオラは俺と出会った時にはすでに魔法が使えたってことか?」
「いいえ、その子が魔法を使えるようになったのはその後のことよ」
どういうことだ
日本にいる間に誰かがフィレオラの魔法の力を引き出したってのか?
ミナトは思わずレイカを見るが、レイカはそれを察してか首を横に振る
「何か考え違いをしているようね。その子は自力で魔法が使えるようになったのよ」
「そんな事がありえるのか?」
「可能よ。実際、私は自力で魔法を使えるようになった人物を他にも知っている」
「・・・・・・」
「その子は見様見真似で魔法を発動させた。あなたが使ったゲートの魔法を一度見たことで、それを自分でもやってみようとした」
「まさか・・・・」
「でも、ゲートを開くことは出来たけど、閉じる方法はわからなかったようね」
あの時、日本で開いていたゲートはフィレオラが作り出したものだったのか・・・・
「これでわかったでしょう。その子はやがてこの世界を消滅させる。不老不死になってからでは遅いのよ。その子を殺せるのは今しかない」
「いいや、俺は認めない」
その後、一度大きく深呼吸をした後、ミナトは提案した
「俺と賭けをしないか?」
「賭け?」
「そう、俺はフィレオラが不老不死にならないほうに賭ける。そういう未来を作る」
「バカね。その賭けは世界の消滅をテーブルの一方に乗せているのと同じよ」
「いや、そうとは限らない」
ミナトは説明をする
この賭けは合理的な話だ
さっきのフィレオラの話をまとめると、因果がループしていることになる
世界を消滅させて過去に飛んだフィレオラがいたから、世界を消滅させるフィレオラが誕生する
もしどちらかが存在しなければこの歴史の流れは成立しなくなる
もし、この世界がそんな閉じたループを繰り返しているとしたら、どちらにせよこのフィレオラを殺すことができないだろう
あるいは、殺せば別の意味で世界が消滅してしまうことになる
「そうだろ?」
「・・・・・・」
でもこの世界はループなんてしていない
ループしているとしたら最初のフィレオラはどこから来たんだって話になる
やっぱり、過去に飛ばされたと思っていたフィレオラは似たような別の世界に来たんだ
そこは前にいた世界と全く同じに見えるが、同じじゃない
別の次元にある同じような世界だったんだよ
「だから、たぶんこの子を殺すことも可能だろうし、その後も世界は続いていくはずだ。だとしたら、この子を殺さなくても世界を存続させることだって可能なはずだ」
「一応聞くけど、もしあなたが賭けに負けて、その子が不老不死になったら、その時はどうするの?」
「別の方法でフィレオラを止める」
「別の方法?」
「フィレオラの時間を凍結して封印する。お前には出来るんだろ?」
「・・・・・」
「そしてもし仮にこの世界が閉じたループ世界だとして、そのループの終端が世界の消滅だとしてもだ。そういう方法であればループの終端はいつまでも先延ばしできる。お前が永遠にフィレオラの時間を止め続ける限りな。それはこの世界が永遠に存続していくことと同義だろ?」
そう言うとフィレオラは笑い出した
「なによそれ。どちらに転んでもあなたの勝ちみたいなものじゃないの?」
「お前にとってもそうだと思うぜ。世界を消滅させなかったもう一人の自分の生き方を見ることができるんだ。あるいはお前が成そうとしていた世界の消滅を防ぐということを達成できるはずだ」
フィレオラは一度目を閉じると
「わかったわ。その賭け、受けましょう」
そう答えた
そして
「どういう結果になるのか、楽しみにしているわ」
そう言い残し、背を向けると、そのままその場から去っていった




