研究の成果
各年の終わりには、学校を卒業して魔導士隊に入るか、そのまま研究を続けるかの選択が与えられる
そして、卒業する場合、それぞれの研究の成果を見せる場が設けられる
その多くは模擬戦の形を取られることが多い
戦闘に関する魔法を学ぶ人が多いためだ
エディルスが二人のもとを訪れた
「二人はそのまま研究を続けるのか?」
それに対しオルヴァルトが答えた
「ああ、そのつもりだ。現時点では二人ともまだ何も成果が出ていないに等しいしな」
そう言った後に付け加えた
「まあ、俺の場合は立場上、魔導士隊に入るという選択肢はどちらにせよ無いんだがな」
それを聞いて、エディルスは
「そうか。なら、俺も研究を続ける。俺にも成し遂げたいことがあるしな」
そう言って去っていった
しかしイーヴァだけは、学校を卒業して魔導士隊に入る道を選んだ
彼女の場合、研究の成果として、町の住民の怪我などを治癒することになった
そして、その成果は著しかった
通常は治るのに1ヵ月はかかるであろう重症を負った人物を数日で完治させることに成功した
それをもって魔導士隊への入隊が認められた
そして、何度かのモーディンとの闘いで結果を残し、彼女は瞬く間に出世していった
その間もルーベルトとオルヴァルトは研究を続けた
時空魔法の難しさは、その構造が複雑すぎて組み上げるための難易度が跳ね上がる点にあった
たった一つの魔法を生み出すのにも、かなりの時間がかかりそうだった
つまり二人は、その系統の魔法を広く満遍なく使えるようになるというより、たった一つの魔法の開発に専念することになる
ルーベルトはこの時、時間を操ることを目指していた
それに対しオルヴァルトは空間を操ることを目指す
それぞれに成果が出始め、それを共有することで二人の研究速度は互いに早まっていったと言っていい
そして、それから1年後にはルーベルトは人類史上初めて初歩的な時空魔法を完成させた
そして、オルヴァルトに告げた
「俺は今年で卒業して魔導士隊に入るよ」
「そうか。俺のほうはまだ結果が出ていない。しかしあとは時間の問題といったところまでは来ている」
「ああ、そうだな。まあお前はどちらにせよ魔導士隊には入らない。王族の仕事をしながら研究を続けるんだろ?」
「そうなるだろうな」
「俺は一兵卒としてこの国の問題を解決していく。まあ、いつか俺が隊長とかになれたら顎で使ってくれよ」
「その時は遠慮なくそうさせてもらうさ」
それを聞くと、ルーベルトは研究室を出た
そして、研究成果の発表の日が来た
ルーベルトには模擬戦の形を取られた
その他多くの人達も同様だ
ルーベルトの相手はエディルスだった
エディルスからの強い希望があったとのことだった
摸擬戦の前にエディルスはルーベルトに宣言をした
「俺はお前に勝つことが目標だった。だから、この摸擬戦の場で決着を付ける」
「まさか、そのために卒業を1年遅らせたんじゃないだろうな」
「そのまさかに決まっている」
それを聞くとルーベルトは少し困った顔をしたが
「わかったよ」
そう答えた
摸擬戦は全て一つの会場で行われた
戦闘を行う舞台が真ん中に一つあり、観客席もある
闘技場のような場所だ
参加者にはそれぞれ魔力を一定程度抑制する指輪がはめられる
これにより、不慮の事故の可能性を減らしている
そして、治癒を専門とする魔導士も待機している
その中にはイーヴァもいた
参加者それぞれが魔法を使っての戦いを行い、次々と決着がついていった
しかし、負けたからといってそれで卒業できないということではない
あくまで研究の成果を見せる場として摸擬戦が行われている
そしていよいよルーベルトとエディルスが対峙した
お互いが切り札を隠したまま戦闘が進む
相手の魔法を回避するか魔法壁で防ぐことの応酬
勝負はほぼ互角に見えた
「このままじゃ埒が明かないな」
エディルスはそう言うと、学校での研究成果を使った
それは一時的な自身の魔力の増幅だった
「お前がこのまま同じように戦い続けるなら、確実に俺が勝つぜ?」
そう言って、エディルスは攻撃を繰り出す
その威力は確実に高まっていた
エディルスの言葉のとおり、ルーベルトは明らかに劣勢となったかに思えた
しかし、次の瞬間、ルーベルトの魔法がエディルスの背中に命中した
エディルスからすると、自分の魔法が相手に命中するかと思ったその時、突如としてルーベルトが背後に現れたのだ
「なんだって?」
吹き飛ばされて、思わず呆然となるエディルス
立ち上がるが、今度は横からルーベルトの魔法が命中する
膝をつくエディルス
「そこまで!」
立ち合いの指導員が摸擬戦の終了を宣言する
そしてそのまま指導員はルーベルトに尋ねた
「今の、どうやったんだ?」
それに対してルーベルトの答えはシンプルだった
「時空魔法が使えるようになったんですよ」
そう言い残して、ルーベルトは会場を去った




