6話 帰宅
「ただいまー」
村に着き、私は自宅の扉をノックする。応答があるなり、帰宅したことを告げた。
「お帰り、キリエ。待ってたよ」
出迎えた母親にぎゅっと抱き締められる。久しぶりに会う母は、私に会えてとても嬉しそうだった。
夏休みに入る前、私とオルカはそれぞれの家に、休みが始まったら帰る連絡の手紙を送っていた。
村の習わしで、13歳で進路を決めるというものがある。その後の子供達の自主性は強く尊重される。なので、私は学院での生活中は家に連絡をしていなかった。
「学校はどう?もう慣れた?」
3ヶ月も居れば慣れて当然だけれど、連絡をしていなかったのもあって心配していたのだろう。
母の問いかけに、私は微笑んで答えた。
「うん。もう慣れたよ。すごく過ごしやすくていい学校だよ」
そう言いながら、鞄を探って成績表と中間試験の評価の書かれた用紙を取り出す。
「これ、テストの結果と成績表」
私から用紙を受け取だった母はわくわくした様子で書かれている内容に目を通す。
「どれどれ?……えっ!?S判定!?」
内容を確認した彼女の目が驚きに大きく見開かれる。
村で暮らしている時には自分の魔力の事を両親にも隠していたから、驚くのも無理はないだろう。
多分オルカのご両親も同じ反応をするはず。……でもどうかな、オルカのご両親はオルカの集中力を知ってたからそこまで驚かないかも。
「すごいじゃない、キリエ。お母さん誇らしいわ」
成績表も、どの項目も三段階の評価で最高の評価を貰っていた。
母は感極まって涙ぐみながら、話を続ける。
「学校ではどんな感じで過ごしてるの?」
私は母を気遣いながら、ゆっくりと質問に答える。
「えっとね。お勉強は魔法の基礎から習って、いろんな属性の魔法も習ったわ。学食も美味しくてね。あ、それとね、オルカ君とお付き合いし始めたよ」
母は頷いて聞きながら、オルカとの交際の話には驚きながらも優しく微笑んだ。
「そうなのね。キリエとオルカ君は昔から仲良しだったものね」
言いながら、母は嬉しそうな笑顔になっていく。
その後も、オルカとはどんな付き合い方をしているのか、お友達は出来たのかとか、色々質問されて、私は包み隠さずに聞かれた事を答えていった。
「そんな事があったのね……オルカ君大丈夫?キリエにも何か危ないことがなかったか心配だわ」
ライの事を話すと、ちょっと心配そうな表情を浮かべる。私は、オルカも元気にしているし自分も無事だと伝え、笑顔で話を続けた。
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夕方には父も仕事から帰宅して、親子三人で食卓を囲む。
団欒の中、父に何か魔法を見せてくれと乞われて、私はライトの魔法を使った。
私の掌の上で光球が柔らかな光を放つ。
ライトは魔法の灯りを生じさせる魔法で、ロウソクやランプ等の道具が無くても辺りを見渡せるようにする、魔導師でなくても使いやすい魔法の一つだ。
「これをね、こうすると……」
光球を天井に向けてふわりと浮かべる。すると、部屋全体が柔らかな光で包まれ、父は拍手をして喜んだ。
「流石私達の子だ、母さん。こんなに優しい光今まで見た事がないよ」
「そうね、お父さん。キリエは本当に良い子に育ってくれたわ」
そう言われると少し照れくさい。優しい両親に恵まれてよかったな、と私は思った。
「他にはどんな魔法を習ったんだい?父さんには魔法の知識があんまりないからよくわからないけど、きっとすごい魔法も使いこなせるんだろう?」
すごい魔法という漠然とした言葉に、私はクスッと笑ってしまう。
「お父さん、キリエはすごいのよ。成績も最優秀で試験でも最高評価をいただいてるわ」
そう言いながら母は、成績表と試験の結果用紙を父に手渡して見せる。
柔らかな光の下で、それらの文字ははっきりと読み取れた。
「これは……!キリエ!すごいじゃないか!」
思わず父は感嘆の声を漏らす。
「他の魔法も見せてあげたいのだけど、学院で習った魔法は攻撃魔法が多いからあんまりお父さん達に見せられないわ。ごめんなさい」
私の言葉に、なるほどと納得した様子で父は頷いた。
「そういえば、オルカ君も帰ってきたのだろう?どうだい、彼は。キリエと同じくらいすごいのかい?」
話題はオルカの話に移り、母も嬉しそうな笑みを浮かべる。
「うん。オルカ君はね、すごく正確に的を狙って魔法が使えるの。私も昔からオルカ君が集中した時の姿、格好良いなって思ってたけど、試験の時とかは他の子達も彼に見惚れてたわ」
私の言葉に、父はおお……と声を漏らす。
「それとね、私、オルカ君とお付き合いを始めたわ。彼の方から想いを伝えてくれて……」
少し頬を赤らめながら言う私に、両親は揃って祝福の言葉を伝えてくれた。
そうして話し込んでいるうちに夜も更け、私は部屋に浮かんだライトの灯りを消して、その日は眠りについた。




