↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
56/61

56話 実習期間の終わり

 ゆっくりとお肉を咀嚼して、飲み込んでいく。パンも一緒に食べて、食べきる頃にはお腹いっぱいになった。

 オルカは果物の盛り合わせを少し持て余している様子だった。まだ残っている。

「持って帰る?」

「そうするかな」

 私は返却口に食器を返して、オルカはポーション作成の魔法で調合をせずに果物を小瓶に密封した。

「割と腹いっぱい」

「私もお腹いっぱいだわ」

 オルカは少し考える様子を見せた後、私に果実の入った小瓶を手渡した。

「これ、キリエが食べてくれるか?しばらく甘いものはいいや……」

 消去法で果実なら回復出来る、って事で食べていただけで、好きで食べてるわけじゃなかったものね。

「わかったわ。お腹が空いたらいただくわ」

 私は受け取った小瓶を鞄にしまって、寮の分かれ道まで歩いた。

 分かれ道に辿り着いて、オルカは名残惜しそうに私の手を取る。ここ数日ずっと一緒に行動していたから、私も離れるのが少し寂しい。

「それじゃあ、また後でな」

「うん。また後で」


 寮の自室に戻った私は、鞄を置いてお風呂の準備をする。着替えの部屋着とタオルを含めたお風呂セットを持って、再度自室を出てお風呂場へ向かう。

 学生寮の脱衣所のロッカーも、職員寮と同じく入れたものが綺麗になるロッカーになればいいのにな、とちょっと思った。



 寮の自室でぼんやりとしているうちにお夕飯の時間になり、学院長先生からマジックレターが届いた。

 学院長室で一緒に食べる事になって、私は急いで制服に着替えて学院長室に魔法で転移する。

 オルカは先に来ていたけれど、部屋着のままソファーに座っていた。

「あれ、キリエ制服で来たんだ」

 私の姿を見て呑気な事を言うオルカ。

「ええ……」

 気にしなさすぎでは……?

 学院長先生はオルカの様子を見てにこやかに微笑んでいた。

「キリエ君、オルカ君から話は聞いたけれど、食事の量はどうするね?一人前で足りるかい?」

「えっと、そうですね……とりあえず今夜は一人前でお願いします。もし足りなかったらおかわりさせてください……」

 自分のお腹具合が変動しすぎてまだよく分からない。一応オルカに生命エネルギーの供給は続いているから、少し多めでも良いのかもしれないけれど。

「わかった。オルカ君は果物は無しだね」

「はい。それでお願いします」

 学院長先生は食堂へマジックレターで連絡を飛ばす。


 程なくして、夕食が運ばれてきた。

 私のは今夜はとり肉の玉子包みだった。オルカのはオムレツと野菜のスープ。

「明日からは君達が学院長室に居ないと思うと寂しくなるね」

 学院長先生も今夜はお肉料理にしたみたいで、私と同じとり肉の玉子包みを切り分けながら話をし始めた。

「私達も一人で寝るの寂しいなってちょっと話してたんです」

「でもいつまでもここで寝泊まりするわけにもいかないしな」

 私とオルカも、学院長先生の言葉に同意を示す。

「まあ、今後は授業後研究をした流れで夕食を一緒に食べよう、と私は思っているのだが、君達はどうだい?」

「良いんですか?またお邪魔してしまって」

 私の質問に、学院長先生は優しく微笑む。

「構わないよ。ここは君達の研究室でもあるのだからね」

 そうか、そうよね……。応用魔力学研究室は学院長室がとりあえずの部屋として使われるのだものね。

「ありがとうございます。是非そうさせてください」

 オルカはすぐに学院長先生の言葉に答えた。

 学院長先生も、笑顔で頷く。


 その時、扉をノックする音がした。ギィ、と低い音を立てて扉が開かれ、アダム先生が入ってきた。

「失礼します。おっと、お食事中でしたか。キリエ君のブレスレットが出来上がったので急ぎお持ちしました」

 そう言うと、アダム先生は私に近づいてきて、丁寧に包まれている白い布の包みを手渡してきた。

 包みを開いてみると、精緻な装飾が施された美しい金色のブレスレットが入っていた。青い宝珠も楕円形に綺麗に磨かれている。

「綺麗……」

 その美しさに、思わずため息が漏れる。

「そうだろうとも。我が叡智の歯車舎が誇る装飾魔道具の才女である三年生のクラリス君が手掛けたのだよ」

「クラリス先輩、ですね。今度お礼をお伝えしないと。またそちらにお邪魔した時にお伝えしたいのでよろしくお願いします」

 私の心からの感謝の言葉に、アダム先生はうんうんと頷いた。

「それでは私はこれにて。お食事のところ失礼しました」

 アダム先生が去った後、私はブレスレットを着けてみた。ひんやりとした触感が心地よかった。

 ちゃんと起動するか、左手で宝珠に触れてみる。宝珠にかすかな光が灯り、問題なく起動する事が確認できた。

「美しい仕上がりになったね。おめでとう、キリエ君、オルカ君」

「無事に仕上がって良かったな」

 学院長先生もオルカも嬉しそうだった。私も微笑んで、二人に向かって頷いた。


 夕食は一人前でお腹いっぱいになった。

 食べ終えて少し学院長先生とオルカと雑談をしてから、私達はそれぞれの自室へ転移魔法で帰った。

 今日からは一人で寝るのかあ……と思うと、やっぱり少し寂しかった。

 寝間着に着替えて、ベッドに横たわる。左手に光るアクアサファイアのペアリングと右手首に輝く金色のブレスレットを眺め、テレパシーでオルカにおやすみを伝える。

『オルカ、ありがとう。おやすみなさい』

『ああ、おやすみ、キリエ』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。