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54話 解決方法

 朝食を三人で囲む。朝から私はミックスグリルみたいな、ハンバーグと複数種類の焼いたお肉が乗ったものを食べていた。

 オルカはバナナのような果実の皮を剥いて齧っている。

「そういえば、明日実習の最終日ですけど、普段の食事を食堂でとるときにこの量を注文しても大丈夫なものでしょうか」

 私のちょっとした疑問にも、学院長先生は丁寧に答えてくれた。

「周りの目が気にならなければ問題ないよ。空腹時の為にサンドイッチセットやおむすびも持ち帰れるように頼んでおいてある」

「ありがとうございます。助かります」

 でもこの量をお昼休みに食べるとなると時間いっぱい使いそうだわ……。

 となると、朝食の時に持ち帰って授業の合間の休み時間にも少しずつ食べないとな。

「そういえばキリエ、俺が寝てる時に何かしたか?」

「ヒーリングをかけたよ」

「ああ、そうなのか。それで……」

 オルカは合点がいったようだった。

 オルカの生命エネルギーの量がだいぶ回復してきている。それでもまだ半分にも満たないけれど。


『お前を抱く夢を見た』

 急な告白に私は口に含んでいたものを噴き出しそうになる。寸前でこらえたけれども。

『そう、なのね。ごめんなさいね寝てるところを』

『いや、いい。久しぶりの感覚だったからな』

 それはそうだけれど。

 直接的な接触はエネルギー交換の効率が高い。それが性行為ともなれば猶更だわ。それを夢で見たというのなら、実際にするとしてもオルカの生命エネルギーはそれなりに回復できるのだろう。

 元の場所で私達は世界に降りる以外にやる事といったらそれくらいしかなかったから、本当に彼にとったら久々の感覚になる。

 ましてや今、私の意識は世界の中にしかない。シンが維持管理を外側でしているとはいえ、寝ている私を抱くという事はしないだろうし。

 まあそんな事は良いわ。ヒーリングの魔法でオルカの生命エネルギーの回復が出来たのならそれで。

 寝ている時には魔法をかけないようにしよう、と思った。


 朝食を済ませると、学院長先生は改まって私達に向き合った。

「さて、カズノ遺跡の調査報告だが、君達が『片付けた』魔導師はカズ村周辺の魔力を吸収して強大な力を手にしようとしていた。そこまでは君達も知っているね?」

 学院長先生の言葉に、私とオルカは頷く。

「魔導師の所持品を調べたら、隣国の魔導師組合の期限切れの身分証が出てきた。期限が切れて久しかったが、それでも隣国の者が王国内で粗相をしたという事は王国魔導院に伝えなければならない。仮に隣国に引き渡したところで、魔導院にも話が伝わるだろう。君達の事は内密に進める。その点については安心して欲しい。だが万が一魔導師が目覚めた場合、君達の事を話す危険性がある。そのことは留意しておいて欲しい」

「わかりました。もしそうなったらその時対処します」

 オルカの言葉に、学院長先生は頷く。

 それとだね、と言いながら、学院長先生は地図を広げた。いくつかの地点に印がつけられている。その場所は、揺らぎが起きている場所だった。

「まだ確定ではないのだが、君達にはこの地図上の印の地点の問題の解決に動いてもらおうかと考えている。最近の職員会議での議題は専らこの事なんだ」

 私は地図を見ながら、もしかしての可能性を考える。一番闇の濃い部分はやっぱり、人々の諍いが発生する地点のようだった。その地点には印がつけられていない。

「ちょっと学院長先生、試したい事があるんですけど、ここでホーリーシャワー使っても良いですか?」

 私の言葉に、学院長先生は何を言い出すのかというような表情になる。

 それでも、まあ人体に害のない光属性の魔法なら、という感じで頷いてくださった。

 私は地図上全面の範囲内にかかるよう、両手のひらに魔力を集中させる。そして、小規模に、けれど強力な光の雨を降らせた。

 光の雨が止んだ地図を確認する。帯電の印がついている地域以外は揺らぎが収まっていた。

「おま……なるほどな」

 オルカが思わず何か言いそうになるが、堪えたみたいだった。

「どうなったんだい……?」

 地図の揺らぎを観測できない学院長先生は何が起こったのか分からない様子だったけれど、オルカの様子で薄々察し始めていた。

「今のキリエのホーリーシャワーでほぼ解決しましたが、帯電している地域だけは揺らぎが残ってます」

「えっ……?」

 察してはいたけれど、解決、という言葉に学院長先生は信じられないようだった。

「帯電地域は魔法が効かなかったので……そこは調査の必要がありそうです」

 続けてオルカが言う。

「そう……か。帯電していて光の魔法が効かないとなると、何か機械が関係していそうだね」

 学院長先生は予想の範囲で言葉を紡ぐ。

 でも、その地域の様子に私は無機質なものを感じなかった。

 しばらくの沈黙。

「とりあえず、明日からは野外実習に出ていた他の生徒達も帰ってくるだろう。それまで君達も元の生活に戻る準備をしておくと良い」


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