53話 試しに。
昼食はイレーネ先生も一緒だったのだけど、私の食べる量にびっくりしていた。
昼食の後も、私とオルカはアダム先生の研究室でのブレスレット開発に参加した。
アダム先生にプロトタイプのブレスレットを返却して、その後デザイン案を詰めていく。
話し合いは夕方まで続いて、空腹を感じた私はオルカと一緒に学院長室に戻った。
学院長室に着くと、もう夕食が用意されていた。
「おかえり、今夕食が来たところだよ」
イレーネ先生と学院長先生は先に食べ始めることもなく、私達を待っていてくださった。
「ただいま戻りました」
私達も席に着いて、四人で一緒に夕食を囲む。
お肉のソテー、今日は草食獣のお肉みたい。切り分けて千切ったパンに乗せて口へ運ぶ。歯ごたえがあっておいしい。
「試作品のブレスレット完成おめでとう」
食べていると、学院長先生が笑顔で完成を祝ってくださった。
「ファイアーボルト、分散させても単体と同じ威力でしたね!」
イレーネ先生も少し興奮した様子で口を開いた。
単体魔法を分散させるのは調整で威力が落ちるのかと思っていたけれど、単体攻撃の時と同じ威力になったのは意外だった。
「ありがとうございます。今日はブレスレットのデザインを決めてきました」
「それと、次の魔力観測装置と魔力持続回復指輪の件も少し話してきました」
私の後に続いてオルカも果実を齧りながら言う。
「それは楽しみだ。これからさらに研究が捗りそうだね」
学院長先生も嬉しそうに、パンを千切りながら言った。
そうしてしばらく和やかに食事を進めていたけれど、話の流れで地図の揺らぎと地域の異変の話題に移ると、先生方は神妙な面持ちになった。
「それなんだがね。今日、カズノ遺跡での調査報告が上がってきたんだ。これからまとめて明日の朝には君達に伝えられる筈だよ」
「そうなんですか。わかりました。明朝ですね」
オルカも、少し真面目な表情になって、果実を齧りながら答えた。
何か分かったことがあったのかしら。と思いながら、私もお肉を頬張る。
オルカの生命エネルギーの様子を確認してみる。昨日よりは回復しているけれど、まだ全然、という感じだった。
翌朝、私はまた窓からの明るさで目を覚ます。今朝はオルカはまだ眠っていた。
あくびをしながら体を起こして、ベッドに座ったまま伸びをする。
「おはよう、キリエ君」
「あ、おはようございます。学院長先生」
今日は学院長先生いらっしゃったわ。
「オルカ君は起きるまで寝かせておいてあげよう」
「そうですね」
オルカ、体を維持するものも生命エネルギーを摂取するものも食べないといけないの大変そうだな……。
そこまで考えて、あれ?と思う。ヒーリングの魔法で何とかならないかしら、と。
私はオルカの前に立つと、彼に両手を向けて魔力を集中する。
「……ヒーリング」
出力を上げたヒーリングをオルカにかけてみる。
一回の食事くらいの生命エネルギーがオルカに供給されたような気がする。
「キリエ君?」
「あ、ちょっとヒーリングでオルカのエネルギー回復出来ないかなって試してました」
「そうか。どうだった?」
心配そうに学院長先生が尋ねてくる。
「何回もやらないとですけど、一回の食事分くらいのエネルギーは回復できたみたいです」
「おお!それは良かった」
これは、私の魔力直結の体力回復魔道具を作ったらオルカのエネルギー問題なんとかなるんじゃ……?
ただ、それを作るとなるとどうしたらいいんだろうな。
とりあえず、枕元に出しておいたメモ帳とペンを手に取って、メモをしておいた。
それからしばらくして、朝食が届いた頃にオルカは目を覚ました。
「おはよう、オルカ」
目を開いて私を見るオルカ。瞳の奥に、かすかに光が宿っているのが見て取れた。
「おはよう、キリエ……なんかキリエの夢見た」
そう言いながら伸びをするオルカ。そのまま起き上がり、少し寝ぐせのついた髪を手櫛で整える。
そしてベッドから降りると、
「おはようございます、学院長先生」
学院長先生に挨拶をした。
「おはよう、オルカ君。朝食の用意は出来ているよ」
「ああ。ありがとうございます」




