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49話 実験と魔道具

 翌日の朝、朝食を食べ終えた私達は、学院長先生が予約してくださった実習室に来ていた。

 その中にはアダム先生の姿もある。昨日学院長室に戻ってから、オルカが実際にアダム先生にも私の魔法を見て貰えないかと学院長先生に伝えていた。

「では始めます。今日はキリエ君の作った複合魔法のテストをしましょう」

 研究者モードになった学院長先生が最初に口を開いた。

「はい。クラッグサンダーからやってみます」

 聞きなれない魔法名に、アダム先生は興味津々という感じでメモを取り始めていた。

 私は学院長先生の召喚したデコイに向き合い、右手に魔力を集中させる。その右手に雷のオーラが纏い始め、呪文を唱える準備が出来たことを告げた。

「クラッグサンダー!」

 私がデコイに向けて手を広げ、呪文を唱えると同時に、デコイの上空からいくつかのごつごつした岩と一緒に雷が降り注いだ。

 轟音を立てて、実習室の床に大きな穴が開く。

「あっ……」

 その穴を見て、思わず声が漏れた。

「大丈夫だよ、キリエ君。想定済みだ」

 そんな私に、学院長先生は優しく言葉をかけてくださった。

 少しして岩が消滅し、デコイのあった場所にある穴に先生方が近づいて観察する。オルカは私の斜め後ろにずっと立っていた。

 向こうで先生方は何か話し合っている。

「キリエ、アダム先生、本気で研究に協力してくれそうだ。それでなんだが……」

『次に研究室に行ったら学生が居ると思う。そいつらに意識操作をしておいて欲しい。俺が喋ってる間にでも』

『分かったわ。全員に守秘義務を徹底させれば良いのね』

『話が早くて助かる』

 オルカと私がテレパシーで会話している間に確認作業を終えたようで、先生方は私達の方へ戻ってきた。

「いや、すごいな。抑えてこれかい?想像していたより何倍もすごかった。実際に目にすると恐ろしいな」

 そう言いながらも、アダム先生は楽しそうな様子を隠すことなくメモを取っている。

 イレーネ先生は学院長先生に言われて壁のボタンを押しに行った。ボタンが押されると、実習室の床はかすかな光と共にすべて元に戻る。

「大地の魔法も扱うからね、すぐに直るようにこの実習室自体が魔道具なのさ」

 なんだか誇らしげなアダム先生。

「そうですね、アダム先生が改良を加えてくださったおかげで実習室の補修費用を考えなくて済むようになった。ありがたい事です」

 思っていたよりすごい技術をお持ちなんだなあ。この学院の発達した生活魔道具もアダム先生の考案なのかしら。

「さて、オルカ君。どうでした、クラッグサンダーは」

「通常のサンダーと同じように雷を発生させるのは変わりませんが、同時に岩を召喚していました。これも多分、クラッグの部分で岩の召喚ゲートを開いておけばいけると思います」

「なるほど。試してみましょうか」

 いつもどおりの手順で、魔法の試行が進んでいく。オルカの説明通りに、先生達もクラッグサンダーを発動することができた。

 同じように、次に試したブレイジングアイシクルも発動に成功して、燃え盛る炎を纏ったいくつもの鋭いつららがデコイを貫いた。

 アダム先生は、私の魔法とオルカや先生達の魔法の威力の違いにも鋭く目を光らせ、メモを書き続けていた。


 実験の途中でアダム先生は授業があるらしく、名残惜しそうに実習室から抜けていった。今日は午前中で授業が終わるので、午後からは多分私達もアダム先生の研究室に向かう事になるかもしれない。

 私達は昼休みのチャイムが鳴るまで、実習室で実験を続けていた。

 

 そして、学院長室に戻っての昼食時に午後の予定がオルカから伝えられる。

 思っていたとおり、午後からはアダム先生の叡智の歯車舎での話し合いと私の為の魔道具制作に協力する流れになっていた。

 昼食を取り終え、叡智の歯車舎の研究室に向かう。

 今日はオルカは手を繋がずに隣を歩いていた。

 研究室前に到着して、扉をノックして声をかけると、アダム先生が出迎えてくれて、私達は室内に入った。

 研究室内にはアダム先生の他に、二人の先生と学生が数人居た。

 オルカは昨日来ていたから知られていたけれど、改めてアダム先生から私の事が皆に紹介される。

 ものすごい威力の魔法が使えて、想像力も抜群、そして今回の依頼主だ、とか。

 複合魔法や新しい魔法の事は伝えられなかった。多分午前中の実習室で学院長先生達と秘匿の約束を交わしたのだろうと思う。

 二人の先生も、学生たちも、私達に興味津々といった感じで、色々質問されそうになる。その度にオルカが制して、また答えたりもして、アダム先生も交えて話し合いを進めていった。

 その間に私は学生と他二人の先生の意識に干渉して、私とオルカに関する情報の徹底秘匿をその意識に刷り込む。

 全員の意識の中に、私から伸びた意識の触手の断片を潜り込ませ、間違いを犯さないよう、枷として働くように切り離す。

 それぞれの目の輝きもライの意識を操作した時のように失われることはなく、全員の様子はそのまま、何事もなかったかのように話は進んでいった。

 その日は材料と設計図も見せていただいて、具体的な作業に入る工程も少し見ることができた。

 学生たちが見守る中、先生方が素材を加工し、組み立てていく。その様子を私とオルカも見守っていた。

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