4話 中間試験
『……ねえ、軍から招待状が来たわ……』
私はシンに声をかけた。
『入学して早々にか。どうするんだ?お前の希望が叶うかもしれないぞ』
この世界に来る前に私、暴れたいって言ってたものね……。
『……どうしようかしら』
『俺はあの女から離れられるなら良いと思うが』
シンは随分とライを警戒しているようだ。
『でも……そうしたら貴方とも離れ離れになってしまうわ……』
『そうだな。お前が行くというのなら俺もいくらか本気を出す。……今度の試験の時にでも』
シンの言葉を聞いて、私はもう一度招待状に目を落とした。
もし招待を受けたとして、どうなるかに思いを巡らせる。
きっと私の力を兵器として利用されるか、研究対象にでもされて二度と外に出られないようになってしまうだろう。
『……やっぱりないな……貴方と離れたくないもの』
『そうか。それならそれで良い』
私は、この招待を受けないことを決めた。
「先生、ちょっとまだ私、この学院に入ったばかりだから軍なんてとても……」
私の言葉に、先生は優しく頷いた。
「そうよね。無理しないで大丈夫よ。先生、王国中央部には顔が利くから、お断りしてしっかりここでお勉強できるようにお願いしておくわね」
「ありがとうございます」
私は先生に招待状を返し、職員室から出て自分の寮の部屋に戻った。
先生が私の力をどれくらいまで認識しているかまではわからないけれど、間近で見ているから、もし私がこの誘いを受けたらどういう事になるかまで把握しているのだろうな。
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それから2ヶ月後、中間試験の日を迎えた。
筆記試験は、今まで教わった内容への理解度が試されるもので、授業を真面目に受けていた私は何も問題なく全ての問いに答えられた。
そして、実技試験。
初級の属性魔法で先生の召喚した属性デコイを攻撃していく、というものだったのだけど、その中で他の生徒の魔法が制御を失ってライを直撃し、大きく負傷させてしまった。
「ライさん!……ヒーリング!」
血まみれで倒れるライに騒然とする中、一応友達だしなあと思いながら、私は即座にライに回復魔法のヒーリングをかける。
以前デコイを粉砕したマジックアローのように少しばかり威力が強めなのは回復魔法も同じで、結構な重傷を負っていたライは一瞬ですべての傷が癒えた。
「えっ……え!?……キリエー!!ありがとう!!」
自分の身を確認したライは起き上がるなり私に強く抱き着いてくる。おかげで私の制服にまでべっとりと血がついてしまった。
その様子をオルカは複雑そうな顔で見ていた。
念のためライは保健室に連れていかれて、そして実技試験が再開する。順番にまた生徒たちが魔法を放ち、オルカの番が回ってきた。
彼の意識の集中と共に、周りの空気が一瞬で張り詰めたものに変わる。集中した彼は、寸分の狂いもなく、デコイの弱点を魔法で貫いて消滅させていった。
その姿に、周囲の生徒からもため息が漏れる程だった。
オルカは集中するととても格好良い。昔からそうだった。たしか、そんな彼に片思いをしている子が村に居た気がする。
とりあえず試験だけは真面目にやろうという彼の偏った完璧主義さが伝わってきた。
そして、私の番が回ってくる。
「……ファイアーボルト!」
私は思うところがあって、属性デコイ全てを、指定された火属性魔法の、本来単体攻撃魔法であるファイアーボルトを枝分かれさせて一気に焼き尽くした。火属性と水属性のデコイまで全て。
これはこれで回りの生徒が呆気に取られていた。
『やりたい放題暴れ回るってこっちの方向性の方でいいのか?』
私の創造の力を指してシンが言う。
『そうね……別に世界を壊したいわけではないし……せっかく貴方が用意してくれたのだし』
『……まあいい。魅せてやれば良い。お前の美しさを』
方針転換、になるのだろうか。
試行錯誤するよりも、私のやりたいようにやる。それが一番良いのかもしれない。
全員の実技試験も終わり、教室へ戻る。
休み時間になると、友人に囲まれるオルカを遠巻きに見ながらうっとりしている様子の女子生徒が現れ始めた。
それはそうなるよ、と思った。あんな格好良い姿を見たら惚れない方が稀有だ。
逆に私に対しても、畏怖の目で見る生徒が現れ始めた。
その日の午後にはもう、試験結果が出た。
筆記試験は満点、実技試験もS判定だった。オルカも同じく、いつも真面目に授業を聞いていないにも関わらず筆記試験は満点で、実技試験もS判定だった。
先生からお褒めの言葉もいただいて、私はあれでよかったのかなあと少し考えていた。
実技試験の結果は用紙にまとめられていて、私への評価は、『単一属性の魔法でありながらその内包する力をうまくコントロールし、単体攻撃魔法では通常成し得ない分散ができました。文句なくS判定です』と書かれていた。




