3話 力の片鱗
ここの食堂は、メニューが決まっている中からどれかを選んで食べられるシステムになっていた。
私とライは肉料理を、オルカは玉子料理のものを選んでそれぞれ席に着いた。
私とライが二人並んで、オルカは私の向かいに座る。
オルカは昔から塊のお肉やお魚が苦手で、動物性のものではひき肉と玉子なら食べられるのでそれで栄養を摂っていた。
私は何でも食べられる。さすがにゲテモノはちょっと……ってなるけれど。
お料理の味も量も丁度良くて、とても満足できた。
「キリエ、この後ちょっといいか?」
食べ終わった後、オルカから何やら誘いを受けた。私はちら、とライの方を見る。
「私は先に戻ってるね!ごゆっくりー!」
気を利かせてくれたのだろう。ライは食器を返却口へ戻すと女子寮の方へ帰っていった。
「あの女……お前を狙ってる」
ライの姿が完全に見えなくなると、オルカは私に耳打ちしてきた。
「……そう。一応警戒はしておくわ」
私も理解はしていた。彼女が私をそういう目で見ていると。
「お前個室だろ?大丈夫か?鍵ちゃんとかけとけよ」
『あの子と同室にならない為に個室にしたの……?』
『そうだ。……隣室か。隣室になったのは偶然だが』
何とも言えない空気の中、私とオルカも食器を返却すると解散して、それぞれの部屋へ戻った。
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翌日から授業が始まった。
担任のイレーネ先生が授業も受け持つ。
魔法学の基礎から教わり、この世界についての基礎的な知識も授かる。
大気中の元素が個々人の魔力と作用し術によって魔法が発動する、というような説明だった。
私は先生の説明と板書を丁寧にノートにまとめていく。
教室での授業の次の時間は、実習場に移動して、先程の授業で習った一番初歩の魔法であるマジックアローの練習をすることになった。
先生が召喚したデコイに当てる、というのだけれど……。
右手に魔力を集中させ、それを人差し指に集めて的を狙う。
「マジックアロー!」
私の放った魔法の矢は鈍い音と共にそのデコイを一撃で粉砕してしまった。私なりに制御したつもりだったのに。
皆呆気に取られている。
オルカは始まったか、というような顔をして私の方を見ていた。この世界と私の力にどういう調整をしたのだろう。
これを何も制御せずに放ったらどうなるんだろう、と想像してみる。多分実習場の結界さえ破壊してしまいそうだ。
先生はたまにある事だと慣れているようで、再度デコイを召喚して他の生徒達の実習を進めた。
オルカもデコイにマジックアローを放つけれど、他の生徒達と同じくらいの威力で、だけど狙いは正確だった。
オルカの優秀さに気づいたのは私の他には先生だけみたいで、狙いが正確ですね、とお褒めの言葉を貰っていた。
穏やかな数日を過ごして、気が付けばオルカの周りにも数人、生徒が集まるようになっていた。
けれど、本人はやっぱり周りの人間に興味が無いようで、表向きには仲良くしながらも、あまり真剣に取り合っていなかった。
授業も、属性についての学習と実践や、今までより少し上位の魔法についても学ぶ機会が増えていく。
回復魔法も習い、本格的に魔導師の卵としての学校生活が始まった。
そんな折、私はイレーネ先生から呼び出しを受けた。何だろうと思いながら職員室の扉を潜る。
イレーネ先生の机の前へ行くと、先生はにこやかに私を迎えてくれた。
「キリエさん、ちょっと相談なのだけど。これ、受けてみない?」
そう言って差し出されたのは王国軍の魔導師部隊への招待状だった。
「軍ですか……?」
「そう。どうしても、この学院での優秀な生徒の話は軍の人の耳にも入ってしまうものなのよ。でも、王国が貴女の魔力を買っての事よ。まだお勉強始めたばかりだからなかなか決められないでしょうけれど、覚えておいて頂戴ね」
私を軍の駒として使いたいとして、下手したら国が亡ぶけどいいのかな、と思いながら私はその招待状を読んだ。
拝啓
ヴィルトゥス魔法学院 生徒 キリエ・オランジュ殿
謹啓
時下益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。
さて、この度、貴殿が卓越した魔法の才能を秘めておられるとの情報に接し、厳正な審査の結果、我が王国軍魔導師部隊へのご招待を決定いたしましたことを、謹んでお知らせ申し上げます。
貴殿の特筆すべきは、その内包する計り知れない魔力とその奔放な発現にございます。これは、時に制御の難しさを伴うかと存じますが、我々はこの稀有な才が、王国に計り知れない貢献をもたらす可能性を秘めていると確信しております。
我が魔導師部隊は、王国の平和と秩序を守るため、日夜研鑽を重ねております。貴殿のような可能性を秘めた若き才能を迎え入れることは、部隊の強化はもとより、貴殿自身の更なる高みへの成長にも繋がると確信しております。我々の持つ高度な魔法理論、実践的な訓練、そして多様な魔導師との交流は、貴殿の魔力制御の課題克服にも大いに役立つことと存じます。
つきましては、下記日程にて面談の機会を設けたく、ご多忙の折とは存じますが、ご返信賜りますようお願い申し上げます。
王国の未来のため、貴殿の英断を心よりお待ち申し上げております。
敬具
格式ばった文体で、私の才能を高く評価していることや、近日中にご連絡くださいというような事が書かれている。




