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31話 朝食

「あったらいいなリスト……良いですね、これ」

 イレーネ先生は学院長先生にもリストのページを見せる。

「これは……キリエ君の発想があれば作れそうな魔道具だね。魔法が発動する道具としては呪文書があるがこれを応用すればキリエ君にも一般的な威力の魔法が使えそうだ。そしてこの解呪のアクセサリー。今までの魔道具では自動で発動する機構は出来ていない。状態異常への対抗手段も絶対抵抗が主だった。だがキリエ君のイメージング能力とオルカ君の分析力があればその問題も解消されそうだ。これはすごい」


 続けてイレーネ先生はオルカのノートを開いてページを確かめていく。

 魔導書に書かれている理論をオルカの言葉で分かりやすく丁寧にまとめられているようで、イレーネ先生も笑顔で読み進めていた。

「これ、オルカさんのノートをキリエさんに読んでもらうと良さそうですね。要点がまとめられていてとても分かりやすいです」

「そうだね、お互いのノートを交換して読むタイミングも作ると良さそうだ」

 そこまでは気が付かなかった。私はオルカと顔を見合わせる。そのまま私もオルカの読んでいた魔導書を読もうと思っていたから。


 今まで、オルカ――シンと、レイラとしての私は個としての意識を強く持って過ごしていた。だからこうして協力し合う形の発想がなかなか出来ないでいた。

 息の合った連携はできるけれど、戦いの場でないところでの連携までは考えたことが無かった。

『もう少し協力が必要そうだな』

『そうね……私達の意識を持ったままだと人の感覚に合わせづらいわ……』

『いっそのこと意識を共有するか?』

『そこまでは……』

 シンとやり取りしていると、入り口の扉がノックされた。ギィ、と低い音を立てて扉が開き、食堂の職員さんが朝食を運んできてくれた。


 私達は昨晩と同じように応接テーブルで朝食を囲む。

 オルカはいつも通りの玉子料理、私もお肉料理だった。朝食だからミルクとバナナのような果物がついている。

「そういえばキリエ君、中間試験ではファイアーボルトを分散させて複数の的に当てたそうだね」

 単体攻撃魔法のファイアーボルトですべての属性デコイを焼き尽くした事を、学院長先生はパンをちぎりながら切り出す。

「はい。あの時はイメージによる応用を試し始めたころで、今ほどうまくは扱えていませんでした」

 私もお肉を切り分けながら返答した。


 オルカはミルクも飲めなくはないけど苦手なので先に全て飲み干していた。気持ち悪そうにしている。

「オルカ君、無理しなくていいんだよ」

「すみません。先生方の前なので……。いつもはキリエに飲んで貰ってたんですけど」

「体質に合わないのだろう。食べられない物があったら遠慮せずに言うんだよ」

「はい……」

 オルカは続けてサラダを口に運ぶ。食べられる物を口にしているうちにオルカの顔色が良くなってきた。その様子を見て私はほっとする。


「それで、今日はこの後実習室を予約してあるのでそこで色々キリエ君に魔法を使って貰いたいと思っている」

「具体的には何をするんですか?」

 私はお肉を乗せたパンを口に運びながら聞き返す。

「色々な属性魔法をキリエ君の思った通りに発動させて、それを私とイレーネ先生、オルカ君で観測する、という事をしたい」

「思った通りにっていうのはヘヴンリィエクスプロージョンみたいな魔法って事ですよね」

 私の確認の質問に、学院長先生は笑顔で頷く。

「そうだね。それと、ファイアーボルトの分散がどのように行われているかも観測させて欲しい」

「あれは俺の見立てでは手の平に魔力を集めた段階で広範囲に広がるようになってます。あとはそれをいくつかに分けて集中させて的に向けて放つ感じでしょう」

 オルカがシミュレーションによる「見立て」を話した後に続けて、イレーネ先生が口を開く。

「オルカさんの見立てで合っていますね。中間試験の時に私もしっかり見ていました」

「なるほど。わかりました。キリエ君は、今分散ファイアーボルトを発動するとしたらどのように魔力を運用しますか?」

 私は学院長先生の質問に、頭の中でイメージをする。

「小さい魔力の球をいくつか手の平の中で持つイメージで魔力を集めて、そこからそれぞれを目標にまっすぐ向けるように的を狙っての発動かな、と思います」

「イメージの中で意識をいくつかの的に集中させる感じ?」

 私の言葉を聞いたオルカが続けて尋ねる。

「というよりもそれぞれの的に対しての経路を魔力で繋いで確実に当たるように、かな」

「なるほど……、それなら動く目標に対しても追跡して当てられそうだね」

 学院長先生は食べながら自分のノートにメモをしていく。


 やがて皆食事をとり終え、学院長室の外のワゴンにそれぞれ食べ終えた食器を乗せる。後で職員さんが回収に来てくれるのだろう。

 再び応接テーブルのソファに四人で腰かける。

「問題は、その運用方法だと我々はどのようにしたら的へ固定できるかという事になる。通常、魔法は対象を狙って当てるものだ、導線を張って動かすものではないんだ。モンスターが使用するロックオンという魔法もあるにはあるが……そうだな。キリエ君がチャームを扱えるのと同じ事かもしれないな」

 チャームもモンスターしか使えない魔法だものね。

「実際に観測してどうなっているかを検証したいですね」

 イレーネ先生の言葉に、学院長先生も頷く。

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