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27話 ヘヴンリィ

 数分後。

「お待たせしました。オルカ君、イレーネ先生、キリエさんの様子をよく見ていてください。キリエさん、もう一度ヘヴンリィエクスプロージョンを使用していただけますか?」

「わかりました」

 私は先程と同じように、手のひらに魔力を集中させて拳を握る。手を開くと同時に、呪文を唱えた。

「ヘヴンリィエクスプロージョン!」

 先程と同じように、私の手の平から放たれた光線が、大爆発を起こしながら壁に突き当たるまで前方へ進んでいく。

「……キリエ君、もしかして。……エクスプロージョンのエネルギーを光属性に転換して発動していますか……?」

 学院長先生は考えながら言葉を発する。

「えっと……私は光の爆発を、っていう意識で使ってるのでよくわからないのですが、先生方からはそう見えますか?」

「そうね。学院長先生の説明通りかもしれない。キリエさんの手からは光の奔流しか確認できなかったわ。となると、考えられる可能性はそれかもしれない」

 学院長先生とイレーネ先生は考え込む。魔法の属性エネルギーを転換して発動するというのはもしかしたらこの世界にはまだ無い方法だったのかもしれない。

 オルカも目を閉じて考えを巡らせているようだった。


 そして、理解したのか、目を開き、再び集中する。

 オルカの握られた拳の内側に魔力が集まる。そして、呪文と同時にその拳が開かれた。

「ヘヴンリィエクスプロージョン!」

 オルカの手から光線が放たれ、イレーネ先生が先程使用した程度の範囲で光の爆発が広がった。

「お、できた」

 笑顔になるオルカ。

「おお、やりましたね!オルカ君。どうやって発動させたか、聞かせていただけますか?」

「はい。手の平をゲートにするイメージで、そこを魔力が通過すると光属性になって発動するようにやってみました。具体的に言うと、呪文のヘヴンリィの部分でゲートを作り、そこを通すようにエクスプロージョンの魔法を放つ、って感じです」

 オルカの説明を聞きながらイレーネ先生はノートにメモを取っている。

「なるほど……。そういう発想で使用すれば我々にも発動できそうだ」

 学院長先生もノートにメモを取る。そして、イレーネ先生にも試行するように指示を出す。


 イレーネ先生は先程よりも少しゆっくりとした動作で拳の中に魔力を集中させる。

「ヘヴンリィ……エクスプロージョン!」

 イレーネ先生の開かれた手の平から放たれた光線は、広範囲に爆発を起こした。

 学院長先生はその様子を注意深く見守っている。

「魔力消費量が通常のエクスプロージョンよりほんの少し多めですが出来ましたね。イレーネ先生、どうでした?」

「はい。これなら問題なく実戦で使用できます。オルカさんの説明で具体的なイメージも出来ました」

「そうですね。私にも扱えるか、試してみましょう」

 学院長先生もゆっくりとした動作で手のひらに魔力を集中させ、拳を握る。そして、前方に向けて開きながら呪文を唱えた。

「ヘヴンリィエクスプロージョン!」

 手のひらから放たれた光線は、イレーネ先生と同じくらいの範囲で爆発となって広がった。

「おお、出来ましたね」

 学院長先生は再びノートを手に取り、イレーネ先生と話し合いながらメモをしていく。

 私は研究が一日で済んでしまったことを思いながら、その様子を見守った。


「さて、一度学院長室に戻りましょうか」

 学院長先生の一声で、私達は実習室を後にして、夕暮れの赤い日差しの中、学院長室へと戻った。

 応接テーブルのソファに先生方と向かい合って、夕食を囲みながら四人で座る。

「今回の研究、現状では未知の理論が使用されていた。大気中の元素と魔力による反応のみが今までの魔法だ。だけど、イメージングによるゲートでの属性転換。これは本当に、新しいものだね。この研究結果はしばらくは私達四人だけの秘密にしておきましょう。キリエ君達も、引き続きお勉強を進めて、『現状では存在しない魔法』を外部では使用しないよう努めてくれるかな」

「はい。わかりました」

 お肉を切り分けながら話す学院長先生に、私もパンをちぎりながら応じる。

「その為には、野外実習の残り期間はこの学院長室に寝泊まりしても構わない。魔導書を出来るだけ多く読んで、存在する魔法を把握していって欲しい」

 わりと重大任務な気がする。覚えきれるだろうか。

「それと、また何か新しい魔法を思いついたら是非私達にも共有して欲しい。君達独自の魔法理論として共に研究していけたらと思っているよ」


 私達独自の。学院発のではなく、私とオルカの発案による理論として先生達は考えてくれている。

 本当に、魔導院の彼等とは大違いだった。

 学院は生徒を第一に考えているという確信が持てて、私は自然に笑顔になる。

 オルカもそんな私の様子を見て、安心したように微笑んでいた。

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