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25話 『提案』

「さて」

 と、学院長先生は私達に改めて話を切り出す。

「キリエ君、オルカ君、今回のカズノ遺跡での件は、先程も言った通り学院の職員達で秘密裏に処理される。なので、君達は気負うことなく、学生として勉学に励んでくれると嬉しい。先生方にも周知してあるし、どの先生も信頼できる。決して君達の情報を外部に漏らすことはないから安心して欲しい」

 この先生が言う事なら信用できそう。と私は思う。オルカも同じ気持ちのようで、わかりました、と答えていた。

「そして、私に付き合って欲しいという話だが」


 学院長先生は、改めて私とオルカそれぞれの目をしっかりと見据える。

「キリエ君の魔法、『ヘヴンリィエクスプロージョン』の研究を始めたいと思う。イレーネ先生がいらしたら始めよう。それまでは私が君達に授業をします」

 そう言って、先生は二冊の魔導書を取り出す。どちらも、上級生が使うものだった。

「一冊ずつしかないのでお二人で見てください。今回の授業の概要だけまずお話します。キリエ君とオルカ君には、学院で教わる範囲の魔法を把握して貰いたい。それが目的です」

 先生の口調は授業モードに切り替わったようだった。

 先に、緑色の表紙の魔導書を手渡される。

 私とオルカは並んで座り、応接テーブルに置いて開いた。


 学院長先生の説明が始まる。

 一年生のうちに教わる魔法理論からもう少し発展した内容。大気中の元素がどのように作用して魔力と結びつくかの詳しい説明や、魔法発動時に魔力がどのように流れるか。

 そして、学院で教わる範囲の魔法の種類の説明。これは目次ページを参照してくださいという事だったので、目次ページでざっとリスト化されている魔法の一覧を目で追っていく。


 そうして学院長先生による授業を受けていると、入り口の扉がコンコンとノックされた。ギィ、と低い音を立てて扉が開かれ、「失礼します」とイレーネ先生が入ってきた。

「遅くなりまして申し訳ありません。もう始まってますか?」

 扉を閉め、私達の所まで歩いてくる。

「いえ、今は学院で教える範囲の魔法を把握してもらっていたところです。研究の方はこれからですよ」

 学院長先生の言葉に、イレーネ先生はほっとした様子。

「一旦授業の方は中断しよう。この魔導書はここに来ればいつでも見られるように置いておくから、活用すると良い」

 そう言って、私達から緑の表紙の魔導書を受け取ると、学院長先生は二冊の魔導書をテーブルの端に置いた。


「さてキリエ君、君の『発案』で今回の研究が始まるわけだけど、どのように発案する?」

 優しい笑顔で、学院長先生は問いかけてきた。

「ええと、図書館にある魔導書でエクスプロージョンという火属性の魔法を知りました。この魔法は広範囲に爆発を引き起こすものなので、人に危害が加わるかもしれない危険性を思い、光属性の魔法であれば、人へのダメージがないという性質を応用できないかな、と考えて、先生方に相談した、という形での発案はどうでしょうか」

 私の返答に、笑顔で頷く。

「自然で良いね。学院図書館の魔導書には危険なものも載っているから、生徒が簡単に手を出せないよう書庫に保管されている。それをキリエ君はどういう経緯で読むことになったんだい?」

 続けて問いかけられ、私は少し考える。

「うーん。私がイレーネ先生に申請した、とかは……」

 あまり良い案が思い浮かばず、漠然とした答えしかできなかった。そんな私に、イレーネ先生が助け舟を出してくれる。

「そうですね。キリエさんなら、中間試験での応用力をもっと存分に生かすための何かを得られるかもしれない、と私は許可を出しました」

「わかりました。ではこの後図書館からその魔導書を借りてくることにしましょう。帯出記録が無いと不自然ですからね」

 イレーネ先生の言葉に頷くと、学院長先生は必要な行動を示してくれた。

 そうしてやり取りを繰り返し、授業後の誰もいなくなった実習室で実践研究を始める事となった。


 お昼休み、私達は引き続き学院長室で昼食をとる事になった。

 その間にイレーネ先生は食堂で昼食をとり、その後に件の魔導書を図書館へ借りに行く。私が許可証を持って借りに行くより先生に用意してもらった方が自然だろう、という判断での事だった。

 いつもどおりにオルカは玉子料理、私はお肉料理を食べる。

「オルカ、今日ハンバーグだけどちょっと食べる?」

「食べる」

 オルカは卵は食べられるけどお魚や塊のお肉は食べられない。けれどひき肉のお料理なら食べられるという少し変わった偏食の持ち主。

 私達はおかずを少しずつ交換して食事を進めた。

「オルカ君はお肉が全て駄目というわけではないんだね」

 その様子を見ていた学院長先生が自身も食事をとりながら声をかけてくる。

「はい。ひき肉にされて加工されたものなら食べられます。ハンバーグとかソーセージとか」

「なるほどなるほど」

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