多分君にはわからない
今日からまたしばらく抗がん剤。もっと体調が悪くなるのかと思うと、暗澹たる気分になる。
メイバランスとプロテインゼリーをなんとか食べて、体力が持つように祈る。トイレとベッドの往復に疲れ果ててしまい、今日もシャワーは浴びられなかった。
病室でぼーっとしていたら、長田さんに話しかけられた。
「しかし、和泉さんは人望がすごいよねえ」
「え? 人望?」
「だって、いろんな人が代わる代わるお見舞いに来るじゃない。人望だろ?」
「まあ……縁のある人はそれなりにいますが……」
お見舞いに来てくれた人たちを思い返す。狭山さん、おっくん、萌木さんと久慈さん、九さんと深山さん、南さん、藤さん、高千穂先生と和束ハルさん、吸血鬼の王、鍋島さん、緑さん……あと、ついでに父親。そうだな、かなり来てくれてるな……。
千歳がいなかったら、縁がなかった人たちばかりだ。俺は、千歳に会う前みたいに1人でやっていくのは、もうとてもできない。つながった縁は大事にしていきたい。
午後に来た千歳に、「人望あるって言ってもらっちゃったよ、いろんな人がお見舞いに来てくれるから」と伝えたら、『みんな来てくれるけどさあ』と肘でつつかれた。
『おまえの好きな人は来ないのか? さすがに、見舞いくらい来てくれてもいいんじゃないか?』
いや、毎日来てくれてるんだけども……。
「……少なくとも、千歳の心当たりにはいないと思うよ」
『えええ?』
千歳は、何もわからないという顔をした。漫画なら、頭の周りにハテナがいっぱい浮かんでいると思う。
……わかってくれたらな、という気持ちと、わかられたらおしまいなんだよな、という気持ちがある。俺の気持ちが通じたらどんなにいいか……でも通じてしまったら、子孫を持つのを本当に放棄したということだから。それに、千歳には恋愛感情というものがまるでないから……。




