恵まれてるからやるしかない
今日の夜まで、生理食塩水と利尿剤の点滴が続く。点滴は邪魔だしトイレは近いし、本当にめんどくさいな……。
そう、ベッドとトイレの往復だけで疲れ切ってる。本当に体力が落ちた。貧血だし食べれてないから、当然ではあるが。相変わらず食事の味を感じられず、今日はメイバランス以外ほとんど食べられていない。
午後、千歳が吸血鬼の王を連れてお見舞いに来てくれた。吸血鬼の王は相変わらず、青白い顔に血のような赤い唇をしている。
『お前の病気聞いて、わざわざ和束みやび対策本部から来てくれたんだ』
「それはそれは……ありがとうございます」
俺が吸血鬼の王に頭を下げると、彼は心配そうな顔をした。
「命の恩人ががんになったって聞いたら、そりゃ顔くらい見に来るって。大丈夫? だいぶ痩せてない?」
「副作用であんまり食べれてなくて……」
「そっかあ……しかし、こればっかりはお金積んでもどうにもならないからねえ……日本って、標準医療が最先端医療なんでしょ?」
「まったくその通りで……副作用はあるけど頑張ります」
国民皆保険で、標準医療が最先端医療。諸外国の医療に比べて、日本はだいぶ恵まれている。吸血鬼の王の目には、そんな風景が見えているのだろう。
吸血鬼の王は気軽に言った。
「入院費大丈夫? また100万ユーロいる?」
「いえいえそんな、前にいただいたので十分です」
「謙虚だねえ、だけど君のいいところは多分そういうところなんだろうねえ」
千歳が吸血鬼の王に言った。
『和泉は金の扱いが真面目なんだ。こないだの100万ユーロも無駄遣いしないで、贈与税の分とっといて、残りはワシとの家に使って、後はにーさ? とかいうのに入れちゃったし』
「なるほどなるほど、堅実」
吸血鬼の王は頷き、そして俺に笑いかけた。
「でも、使うべきところでは使ってよね?」
「はい、ありがたく使わせていただきます」
金銭的に困っておらず、仕事の心配もなく、治療に専念できる。ありがたいことだ。だから、副作用はなんとか耐えなきゃいけない。




